YELLOW MAGIC ORCHESTRA「RYDEEN」をあらためて聴きなおして

YMOの代表曲といえば、問答無用に「RYDEEN」ということになるのでしょうし、YMOというバンドや曲のタイトルを知らなくても、音楽好きならば誰もが一度は聴いたことのあるメロディだとも思います。もはや『TECHNO POP』に限らない、スタンダード曲とも言えます。

私自身、ご多分に漏れず小学5年の頃だったか、この曲でYMOを知り、夢中なって、一番最初に自分自身で買ったシングルレコードということになりました。アルバム『SOLID STATE SURVIVOR』を購入したのはその後だったように記憶しています。『SOLID・・・』の発売は1979年9月で、シングルカットされたのが1980年6月なので、半年以上の間隔が空いています。当時、FUJIカセットテープのCM曲に使用されましたが、どうやってこの曲を知ったのか、夢中になったのか記憶にないのですが、とにかく世の中で耳にすることが多かったのではと思います。音楽にあまり興味のなかった私が夢中になったのですから。

さて「RYDEEN」はYMOというバンドのエッセンスが全て詰まった作品、と言えるような曲だと思っています。作曲者は高橋幸宏さん(当時はユキヒロさん表記)で、編曲はYELLOW MAGIC ORCHESTRA表記ですが、その多くの部分は坂本龍一さんの手によるものでしょう。そして、全体をまとめるプロデューサーとして細野晴臣さん、3人の個性も十分に反映された作品だと思っています。

当時は毎日のように聴いていましたが、YMOをきっかけにいろいろな音楽を聴くようになると、むしろ聴き飽きた気持ちにもなり、一時期は全く聞かないことも多くなりました。それだけスタンダードになった曲、と言えるのかもしれません。

「RYDEEN」という曲の本質は何だろう、と思ったのが2001年1月にNHKで放送(収録は前年)された細野さんの特番『YELLOW MAGIC SHOW』でした。1993年の再生以降、3人で揃って「RYDEEN」を、細野さんのベース、坂本さんのキーボード、幸宏さんのドラムのみで演奏したものです。幸宏さんのNHK追悼番組でもフルで放送されていました。3人の格好はそれまでのコントの流れで「どてら姿」という少しおふざけの姿でしたが、演奏そのものはシンプルながら「RYDEEN」の根幹はしっかりわかるものでした。それはやはり幸宏さんの作った馴染みやすいメロディだったからだと思います。YMOというと、コンピューターを使った音楽だとか、『TECHNO POP』というピコピコした音に焦点が当たりがちでしたが、「RYDEEN」は音楽の本質の1つでもあるメロディを感じさせる曲だったのではないでしょうか。
これ以降3人はまた急接近し、SKETCH SHOW~HUMAN AUDIO SPONGE~HASYMO、そしてYELLOW MAGIC ORCHESTRA/YMOとして回帰していきます。

それにしても「RYDEEN」のメロディはテンポや音色によってずいぶんと異なる印象を受けます。オリジナルのように勇ましく、2007年のリメイク・ヴァージョンはトイピアノにより少し寂しげで。やはり「RYDEEN」はそのメロディが本質だったような気がしています。

坂本さんの自書「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」には亡くなる前までにつけていた日記の一部が掲載されています。幸宏さんのNHKでの追悼特番をご覧になった坂本さんの「RYDEENが悲しい曲に聴こえてしまう」との記載があります。作曲は幸宏さんですが、YMOで「RYDEEN」のメロディをずっと弾き続けてきた坂本さんならではの気持ちだったのではないか、と思います。

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