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お義母さん、僕の子供を産んでください21.受胎告知

私たちは、晴れて娘の公認をもらって夫婦となった。
少なくとも、そう思い込もうとした。
そう思うことによって、多少なりとも娘への罪悪感が薄まり、心なしか気が楽になったような気がする。
流石に娘の前では遠慮してしまうが、二人になった時、私は彼に甘えられるようになったのだ。

最初は気恥ずかしかったものの、彼の執拗な「可愛い」の連発に、私はどんどんその気になってしまった。
彼と二人きりになった時は、私は無意識のうちに可愛い女になってしまうのだ。
死別した夫にさえも見せなかった私に、私自身も驚いているぐらいだ。
それだけ私は愛に飢えていたのだろう。

朝、目覚めた時に隣に彼がいる・・・それだけで幸せを感じる。
私はスースーと気持ちよさそうな寝息を立てる彼に、腕を回して抱きつく。
ああ、彼を心から愛しているんだわ・・・自分の思いに改めて気づく。

娘の子を産む・・・その背徳的な計画のお陰で、私は思いも寄らぬ幸せを得たのだ。
神様に感謝したい。
娘に心から感謝する。

目覚めて起き上がろうとする彼に私は言った。
「お願い。もう少しこのままでいさせて」
彼は何も言わず、私の髪を優しく撫でる。
ああ、この幸せがずっと続けばいいのに・・・
私は彼の胸に頬を摺り寄せながら願った。

彼はまた眠ってしまった。
今日は日曜日だ。ゆっくり寝かせて上げよう。
私はそっと起き出してガウンを羽織り居間に向かった。


「お早う、佳代子」
「お母さん、お早う」
キッチンでサンドイッチを作っていた娘は上機嫌だ。
「あら、今日は機嫌がいいわね」
「だって、もう焼きもちを妬かなくていいもの」
私はドキッとした。
「正直言うとね、今までちょっと辛かったんだ。ちょっとだけね。でも、お母さんとタカシが夫婦になったと思ったら、平気になっちゃったの」
「そうなの・・・!?」
私は複雑な気持ちになった。
これで良かったのだろうか!? それとも矢張り、いけないことなのだろうか?!

「タカシは? どうせまだ眠っているんでしょ!? だったらこれ持って行って。お母さんの部屋で食べるといいわ。私はこれを食べたら、ちょっと出かけて来る」
「あら、どこに行くの?」
「貴子たちに会いにね。長いこと会ってなかったから」
「ああ、高校の友だちね!?」
「お母さんに会いたがってたけど、今は新婚だからそっとして置いてあげる。みんな、お母さんが大好きだからね」
「新婚ってそんな・・・」
「うふふ・・・赤くなった、可愛い」
「もう、からかわないでよ。あなたまで」

確かに、私は二度目の新婚気分かも知れない。
愛する彼の隣で目覚められるんだもの、新婚のようなものだわ。

「タカシさん、起きた? サンドイッチ、食べるでしょ!?」
「ここで食べるの? 佳代子は?」
「お友達と会うみたいよ」
「そう、だったら真由美と二人きりだね」
「ええ、そうね・・・・」
最近、彼は私の名を呼び捨てにする。
本当の彼の奥さんになれたようで、ついにやけてしまう。

「じゃあ、子作り、頑張らなきゃいけないね!?」
「そ、そうね・・・」
もう、どうしてそんなこと言うのよ!?
恥ずかしくて顔が見れないじゃない。

「ううっ」
彼が胸を押さえ、ベッドに倒れ込んだ。
「どうしたの? 大丈夫?」
驚いて駆け寄る私。
「ああ、真由美が可愛すぎて苦しい」
「もう!」
彼は私の腕をつかみ、私を抱き寄せた。

ああ、私にもこんな甘い時間を過ごす日が来るなんて。
幸せ過ぎて涙が出そうだ。

翌日、朝の会議を終え、私は会社のトイレに駆け込んだ。
吐きそうになったのだ。
「ああ、気持ち悪い・・・」
一人そう呟き、私はハッとした。
まさか・・・・・!?!

途中、薬局に寄り、検査薬を買って帰った。
家に帰り、早速トイレに駆け込む。

・・・・・そう、そうなの・・・・。
明日は病院に行かなくっちゃ。
確定するまでは誰にも言わないでおこう・・・・。


翌朝、私は整備された河沿いの遊歩道を歩いていた。
まだ時間は10時半だ。
綺麗になった河に子鴨を連れた鴨が浮いている。
私は立ち止まり、柵に手を着いて独り呟いた。
「私もまたお母さんになるのよ」

愛する彼の子供が出来たのだ。
嬉しくない訳がない。
なのに・・・私は泣きたいような気持になっていた。
まるで太陽と雨が同時に降る狐の嫁入りのようだ。

こんな気持ちのまま、会社には行けない。
私は社に電話して、体調不良で休むことを告げだ。

悩むことは何もない。
ただ、覚悟が出来ていないだけなのだ。
本当のところ、まさかこう早く出来るとは思いもしなかった。
出来ないなら出来ないでいい・・・そう思っていたぐらいだ。

どんなに誤魔化そうとしても、自分は騙すことが出来ない。
私は・・・彼と別れたくないのだ。
その為の言い訳を、山ほど考えている自分に気付いた。

子供が出来ると、彼の役目は終わりを告げる。
義母である私と夫婦である必要などない。
あとは、産みさえすれば、私の役目も終わる。
祖母としての役目を残して・・・・。

川面を眺めながら、いつしか私は泣いていた。
大声で泣き喚きたい気持ちを抑えて、私は静かに泣いた。
彼と別れたくない。
ずっと一緒にいたい。
彼に「可愛い」と言われ続けたい。
やっとつかんだ女の幸せは、こんなにも簡単に消えてなくなるのか・・・。

犬を散歩中の老婦人が、ベンチで泣いている私に気付き、隣に座った。
そして何も言わず、私の背中を撫でさすってくれた。
人の優しさに触れ、私は我慢できず声に出して泣いてしまった。

よしよし・・・・
老婦人はまるで自分の娘をなだめるように、何も言わず、ただ背中をさすってくれていた。

日が暮れてから、私は気持ちを整理し、覚悟を決めて家に戻った。
もう私は妻ではなく、義母に戻るのだ。
そう、ただ戻るだけだ。
最初からそうであったように。

「タカシさん、話しがあるの」
「ああ、真由美、お帰り」
キッチンで料理を作っている彼の声を聴いた途端、私は泣きそうになった。
ああ、もう私を呼び捨てで呼んでくれることはなくなるのね・・・。

「料理はいいから、こっちへ来て」
気持ちを押し殺して彼をソファーに呼んだ。
私が何か覚悟を持っていることに気付いたのか、彼は何も言わずに冷たいお茶を入れたグラスをテーブルに置いた。
私はそれを持ち、一気に喉に流し込んだ。

「タカシさん、私・・・」
「出来たんだね、おめでとう、真由美」
「もう真由美って呼ばないで。あなたの奥さんじゃなくなるんだから」
胸を悲しみが込み上げた。
泣いたらダメよ、真由美! 泣いたらダメなの!

「真由美・・・・」
「だから、もう・・・・」
彼は私を抱き寄せた。
そして息が止まるほど強く抱き締めてくれた。
「ダメよ、私はもう・・・」
彼の唇が私の唇を塞いだ。

バカ・・・せっかく覚悟して帰って来たのに・・・
わーん、私は声に出して泣いた。
「真由美・・・・」
彼は私の涙が枯れるまで、じっと抱き締めていてくれた。


「落ち着いた?」
私は彼の胸に顔を押し付けたまま頷いた。
「まだ終わらないよ。僕たちはずっと夫婦のままだよ」
「ダメよ、そんなことは出来ないわ」
「佳代子と話したんだ。もし真由美に子供が出来たらって」
「え!?」
「佳代子は言ってくれたよ。もし子供が出来ても、二人はそのまま夫婦でいてねって」
「うそ!? そんなことをあの子が・・・!?!」
とても信じられない。

「うん、確かに言ったよ。お母さんのあんなに幸せそうな顔を初めて見たって」
「・・・・」
「お母さんなら、僕が愛しても許せるって」
「そんなことを!?!」
私たちに、本当の夫婦になって、と言った時は、確かに娘はそのようなことを言ってはいた。
しかしそれは、子作りをし易くするための方便だと思っていた。
まさか本気で言っていたなんて・・・!?

「でもね、私と同じじゃイヤ。51%は私のものよって」
「うふふふ・・・まるで株ね」
「やっと笑ってくれた」
彼の笑顔が眩しい。

「それと、こうも言ってたよ。二人目も欲しいって」
「ええっ!? それは無理でしょう!? 何歳だと思ってるの? もう42よ。二人目はさすがに」
「うん、それは分からないけど。これからもずっと夫婦でいて欲しいんだって」
私は思わず大粒の涙をこぼした。

娘はいつの間に、こんなに大きく成長したのだろう?
心の広さにおいては、既に母を上回っている。
私の幸せのことまで考えてくれていたなんて・・・!
感動して、涙が止まらない。


そこへ娘が帰って来た。
そして二人の様子を見て、ハッとして立ちつくした。
「えっ!? なに? もしかして・・・!?!」
「おめでとう、佳代子。念願の・・・」
と、彼が言うよりも早く娘は駆け出し、私に抱きついた。

「お母さん! ありがとう! 本当にありがとう!」
娘も泣いていた。
「佳代子、私・・・」
「ああ、いいのよ、お母さん、ずっとタカシと夫婦でいて。ずっと幸せでいて欲しいの。私だけが幸せなんてイヤなの。二人で幸せになりたいの!」

私たちは泣いた。
泣いて泣いて、泣きとおした。


一しきり泣いた後、キッチンに立っていた彼が料理を運んできてくれた。
「さあ、お腹がすいたろ!? 二人とも」
「そう言えば、お昼も食べてないんだった」
「私もペコペコよ」
「これで良かったかな?」
と、二つの大皿に山のように盛ったチキンサラダとツナサラダをテーブルに置いた。
「うわ、大量ね!」
そう言いながら二人は黙々と食べ始めた。
「これなら真由美・・・お義母さんも食べられると思って」
「タカシ・・・今日だけは許すわ。名前を呼んでもいいわよ」
「呼べないよ、怖くて」
私たちは笑った。

私は笑いながら泣いていた。
そして娘もまた笑いながら泣いていた。
嬉しくて、嬉しくて・・・・・。





あとがき
エロを期待していた皆さま、ごめんなさい。
どうしても三人の心情を思うと書かずにはいられなくて。
お義母さんの心の動きが最も官能的で、これをうやむやにしたまま前に進むことは出来なかったんです。

ここで長い間、ひっかかっていました。
ここから先が何も見えなくて。
ただ、これを書くことによって、先がまた見えてきました。
まあ、開き直ったんですけどw

最近、AVなどを見て思うんですけど、色んなシチュエーションがあるけど、最も色っぽいなと思うのが、女優の目の動きなんです。
目の自然な動きも演技も、目の動きひとつで見る者を惹きつけるんだなと思うんです。

これからはその辺をメインに描いて行こうかなと思います。
取り敢えず、酷評覚悟で一歩を踏み出そうと思います(´ー`)





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