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自由とは何かを知る旅、与論島

自由とは何か、と考えたことはありませんか。気の向かない仕事をするとき。好きでもない人とごはんを食べるとき。自由とは何かを考えるとき、私はいつも不自由であるような気がします。

そんな不自由な大人が漠然と憧れる自由を少しだけ味わえる場所を、鹿児島県最南端の小さな島に見つけました。

私が与論島のことを初めて知ったのは、小林聡美さん主演の映画「めがね」でした。鮮やかな海と豊かな自然の中でゆったり過ごす登場人物に憧れて、いつか行きたいと思っていた島でした。映画「めがね」のキャッチコピーは、「何が自由か、知っている。」美しい小さな島で自由を知るとはどういうことか、まったく分からないまま、与論島へ向かいました。

与論島には以前から憧れていたものの、「めがね」の映画監督荻上直子さんは有名な映画「かもめ食堂」も手がけていて、オシャレな女性ファンがぞくぞくと訪れているのではないかと思って、少しためらってしまう気持ちもありました。オシャレ過ぎる人は時に、窮屈にも思えてしまうからです。オーガニック食品ばかり買っていますとかテレビなんて見ずに夜は静かに過ごしていますとか言われると、ジャンクフード片手にテレビを見てゴロゴロする休日を見下されているような気になったりします。

少し不安を抱えながら与論島に向かうプロペラ機の中、親戚が与論島に住んでいるという人が「与論島って何もないから親戚が住んでなければ行かないよねー」と話しているのを聞いて、ああやっぱり、こんな俗っぽい人が行って、楽しめるようなところじゃないのかも、とさらに思ってしまいました。

与論島に降り立ったとき、目が覚めるほどの空の青と植物の緑に驚きました。また、与論空港の小ささと言ったら、私の住んでいる地域の公民館より小さいのではと思うほどでした。

宿泊先で一息ついたら、百合が浜に向かいます。百合が浜はおそらく与論島で一番有名な「幻の浜」です。春から夏の干潮時にしか現れず、船で向かいます。

当日に電話で予約して、宿泊先まで迎えに来てもらえる百合が浜ツアーに申し込みました。日に焼けたオッチャンが来てくれたときには、五人くらいの観光客が車に乗っていて、ギュウギュウの車で向かいました。

百合が浜に到着しました。
美しすぎて頭がクラクラしそうです。

海が綺麗なだけでこんなに楽しかったことは今までありません。

帰りの車でツアー主催のオッチャンとしゃべっていると南の島の観光客事情の話になりました。

「マニアックな人に好かれるとか、分かる人には分かるとか、それじゃやっていけないよ。やっぱり大衆的じゃないと、人が来なくなる。」

「与論島のウミガメは人なつっこい。与論島の人と一緒」

私は昔とある沖縄あたりの島を訪れたとき、よそ者ということをはっきりと感じて悲しい思いをしたことがあります。それは自分の身に置き換えても当然のことで、自分が昔から愛するふるさとが観光客でいっぱいになることは必ずしも喜ばしいことではないだろうと思います。

それでも与論島の人たちは観光客を受け入れ、媚びることなくいつもの生活を続ける。その姿勢は自然でありながら、確固たる意志を持って自然体でいるような気がしました。

映画「めがね」で語られた自由とは何か、それは自分が心地いいと思える選択肢を、強い意志を持って選び取れること。ほんの少し与論島でゆったりした時間をすごして感じたことでした。

自分がやりたいと思うことは、世間や周りの人の声に流されていないか?本当に過ごしたい人生とはどんなものか?

そんな自分の声に真剣に、静かに耳を傾けるために、誰もいない与論島の海岸に腰を下ろし、ただただ夕日が沈むのを眺めてはいかがでしょうか。