【ショート・ショート】貴宅部員の日常ー顔合わせー
「みんな。彼女が新入部員の三上さん。自己紹介をよろしく」
大貫が物理室に集まった部員に向かって春香の紹介を始めた。
「あ、私は1年3組の三上春香といいます。昨日、大貫先生と話していたら知らない間に部員になっていました」
「先生、今年もそんなやり方で新入生を入れたんですか・・・。あ、私は、部長の荒井詠美。3年よ」
春香は荒井が普通の先輩だったことに安心した。
「しょうがないよ。『貴宅部』なんて怪しすぎて誰も入らないだろ」
大貫が涼しい顔をして言った。
「三上さん。心配しないで、ここにいる6名はみんな、この先生に無理やり部員にされたのよ」
「それでも、入ってよかったろ?みんな辞めずにいるじゃないか」
「まあ、そうですけどね」
「あの・・・」
「何だ?」
春香に大貫が答えた。
「部員は今ここにいる方々だけなんですか?」
「ここにいる6名は、部の活動を主に担っている生徒だな。まあ、この部室によくいる6名と言ってもいいかな。実は、名簿上は30名くらいいるんだよ」
「幽霊部員なんですね」
「いや、幽霊部員じゃない部員も結構いるんだな。これが」
「?」
「先生、この部活の濃い話はこれからということで。部長の私が少しずつ話していきますから」
「そうだな」
「三上さん。この部活は、大貫先生が作ったのよ」
「そうなんですか」
「何か部活動の顧問をしろと教頭に言われてな。遅くまで残ったりするのは嫌だったから、この部活を作ったんだ。お家好きなら早く帰るだろうから。思ったとおりだった。ハハハハ」
春香以外の部員が固まっていた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?