【ショート・ショート】偶然と必然
金曜日の夜。風呂からあがった私は、テレビを見ながらビールを飲んでいた。
とても疲れた一週間だったが、がんばったおかげで、仕事でかなりの利益が出た。満足だ。儲けさせてもらった顧客のことを考えると笑いが止まらない。
ぼんやりと儲かった金額を考えていた時、スマフォのバイブが振動した。
見慣れない電話番号からの着電だ。私はスマフォを取り画面をタップした。
「もしもし?」
私は警戒しながら電話に出た。
「えっと・・・」
かけてきた相手が躊躇しているのがわかる。
「もしかして郁美?」
相手の返答を待つことなく、私は、そう叫んでしまった。
「え、あ、うん・・・。これ、知美の電話なんだ・・・」
郁美は私の電話にかけたということを今わかったらしい。郁美と私とは高校以来の仲だ。就職した今でも仲がよく、親友と言ってもいいかもしれない。
「そうよ。何言ってるの。今日はどうしたの?」
私は、いつもと違う雰囲気の郁美に探りをいれた。
「聞いてよ。私の彼が、迷惑メールに書かれていることを信用してしまって、送り主に送金したりしたんだ」
「へ、へぇ・・・。で、書かれている内容って?」
「女の文体で書かれていて、要旨、病気で働けないので助けてほしいという内容なの」
「そんな典型的な内容を信じたんだ・・・」
「知美もそう思うでしょ?でも、信じてしまうらしいのよ」
「そうなんだ・・・。で、郁美の彼氏はお金払ったと・・・?」
「そうなのよ。30万円くらい送金したんだって。でも、お金だけならいいんだけど、迷惑メールの相手と何回か会ったみたいなの」
「そうなんだ。魅力的な女性だったのかしら」
「さあ。しらないわ」
冷たい郁美の声が響く。
「私もプライドがあるから、黙っておくわけにもいかないのね。だから、彼のスマフォを調べたりしたのね」
「そ、そうなんだ・・・」
「で、二人のやり取りとかを調べたら電話番号やメアドがあったのね」
「ふーん」
「で、その電話番号にかけてみたの」
「うん。うん」
「そしたら、知美、あなたの携帯だったの」
(終わり)
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