いまさらなのかいまどきなのかコロナ

「うわ、38度か」
ぐったりする私と、ぐったり横たわるトド夫。
「ぜったいコロナだよ」
「でも、ほとんど接触してないのに、どこでもらうのさ」
眼に見えないものを探すのだから、おばけでも探すような話だ。

ううう、とうめきながらトド夫は寝返りをうった。
トド夫は一級建築士で事務所を構えている。取引先とはメールや電話のやりとりがほとんどで、打ち合わせが少しある程度だ。
今週も、他者と会ったのは整骨院だけだという。
「やっぱり、整骨院でもらったんでないの!」
怒る私をよそに、うんうんとうなるトド夫。

そうこうしてるうちに、二人ともの熱が38度を超えていく。
そのうち、トド夫が寝ているのに飽きたのか(疲れたのか)
youtubeですべらない話の特集を流し始めた。

だりいなあと開けた視界の真ん中で、ぷ、ぷぷ、と笑うトド夫の巨体が揺れる。
いやー笑うところが違うじゃん。そこじゃないんだけど、ってとこでトド夫は笑っている。
二人でコロナになってる場合じゃないんだけどね。
真夏のまっぴるまに大汗かいてる場合じゃないんだけどね。

ひとりで病気になると、もの悲しくなるというか、もの寂しくなると言うかそんな気分に包まれるものなのだが。

私は決してセレクトしないyoutubeの「すべらない話」が流れ、ぷぷ、と笑い声が漏れる。

そうすると、後ろから襲ってくるような暗闇の気配を忘れる。

こういうのもいいよなあと、しみじみする。
安穏というか、まあ、要するに平和なのだ。
38度の熱があろうとも、誰かが側にいるというのは、幸せというものなのだろう。

その後、発熱しているなか、せっかく作ったごはんを「食欲がない」とトド夫がぷいとそっぽを向いたときに、包丁で刺してやろうかと思ったのは、
ここだけのひみつ。





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