ソフトクリームを売ったら学祭みたいになったinあきあじ祭り

大量のソフトクリームの素が余った。

はじまりは、トド夫が、ソフトクリームの機械を譲り受けたことに始まった。
ソフトクリームの素みたいのをセットして、ボタンを押すとムニューとソフトクリームがでてくる。
いつか、使えるかもね、ということで保持していた。

トド夫の娘さんはキッチンカーをやっていて、ふだんはピタパンを売っているのだが、地元のお祭りにでてくれないかという話がでた。
「ピタパンでは高いので、もうちょっと安めのものを売ってくれ」ということになった。

トド夫と娘さんは、ぱちんと膝を打ったかどうかは知らないが「よし、ここでソフトクリームだ!」という話にまとまった。

トド夫たちは、売れると見込んで、ソフトクリームの素を500個買った。かなり奮発した。イベントである。売れるに違いない!とトド夫たちは思ったらしい。

だがしかし、物事は予測どおりにいかないことが多々ある。
当日はどしゃぶりの雨になり、お祭りは昼で中止となり、大量のソフトクリームの素だけが残された。

悲しいかな、トド夫の家の冷凍庫は、ソフトクリームの素で圧迫される事態となってしまった。

トド夫は「これは私が責任をもってなんとかしなければ!」と決意したかどうかは知らないが、中川の「あきあじまつり&丸太押しまつり」にキッチンカーを出店するついでに、ソフトクリームを一緒に売ろうということになった。

売り子はなぜか私。
「とよ子ちゃんしかいない!」というトド夫のノリに巻き込まれる私。
なんでだ?という質問は空に消えた。

当日、トド夫の娘さんに、ソフトクリームの作り方を指南してもらい、小さなテーブルに板をのせただけの即席レジカウンターと、ソフトクリーム作り機のうしろにちょこんと座って、開店した。

ひとはまばらだが、ちょこちょこやってきた。子供が以外と気にしてくれる。親子連れを狙って声をかける作戦で行こうときめた。

トド夫は、ソフトクリームの素をセッティングしたり、なんやかやと世話をやいてくれていたのだが、お客さんがとぎれたので「他の店舗を偵察にいってくるわ」と出かけて行った。
しばらくすると、私の方にやたらにこにこしながら戻ってきた。
最近まれにみるにこやかさである。
「なににこにこしてんの」
「だってさあ。ほかはテントだったりキッチンカーだったりで高さがそろってるのに、ここだけ急に小さいんだもん。おまけ感がすごい」
ぷぷぷ、とトド夫は背中を丸めて笑う。

確かに、ここだけ昔の学生の文化祭の受付のように小さい。
しかも、テーブルに紙で手書きでソフトクリームと書いてあるだけだ。
はっきりいえば、貧乏くさい。

「ひどい。やれっていったのはトド夫なのに」と、しょんぼりする私の肩をたたき「いや、これがいいんだよ」とトド夫は言ってきた。
ちくしょーと毒づいているところへ「ソフトクリームください」と小さな声がやってきた。

急に愛想よくなり、声のトーンを変える私。自分でも変わり身の早さにびっくりだ。普段なんて子供に声がけなんてほとんどしないのに、ここぞとばかりにやさしそうなおばさんを演じてしまう。

ていうか、客商売のやさしさなんて半分以上嘘だから。
やさしくしてくれるのは、お金を払うからであって、お金で買ったやさしさだから。

と私が心の中で思っているとはつゆしらず、子供は純真な目でソフトクリームを買っていってくれたのであった。ありがとう子供。

非道な私ではあるが、子供はなんていうか無条件にかわいいなあ、と思うのも本心であったりする。
産みたかったなあと今更思うのも、たぶん、育てる苦労を知らないからで、ないものねだりをしたいだけなのだろうな、と自己分析したりしなかったり。

結局のところ、ソフトクリームは46個ほど売れた。
文化祭出店より悲しい感じだったのに、これだけ売れれば上出来だと、トド夫と二人で褒めあった。どっと疲れたが、やり切った感で満足した。

ただし、ソフトクリームの素はまだ大量に余っている。
北海道内で出店してほしい方がいましたら、ご連絡ください。
行けたら、行きます。もう冬がくるけどね。



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