『魚たちのH2O』弧伏澤つたゐ

おだやかに盛り上がっていくお話。

するすると読み進めて、気付いたら読み終わってた。多分彼らの生死を見届けてもひどく哀しい気持ちにならないのは、それが自然現象っぽいからなのかなぁと思った。

読み終わると少し髪の毛がサラサラになった気がする。おそらくこの本にはアミノ酸とミネラルが豊富に含まれている。シャンプーのジュレームよりきっと沢山含まれてる。あれいい匂いがするから一時期使っていたけど、ちょっと高いんだよね。結局今は節約の為にエッセンシャルを使っている。

おはなしの中には人間と人形と海が要素として出てくる。海から陸に上がり人間になった魚は、けれど環境に適応するために彼らが元々持っていた完全な球体のH2Oを失わざるを得なかった。だから彼らが海に行こうとすると、肉体のあわいは消えて融けてしまう。それが物語全体を構成する、いわば世界観とか骨とか呼ばれるものなのだろうけれど、果たしてこの解釈で合っているのかは不明である。

私がお勉強している比較文学の一連の流れを引っ張ってくると、【受容→模倣→創造】だ。ひらがなを具体例にすると分かりやすい。大陸からやってきた漢字をそのまま使っていたのが、いつしか万葉仮名として使われるようになり、やがてひらがなになった。

それを思うと、人の形になった魚(H2Oを変化させた)は以前模倣の段階にあって、伊呂波をはじめとする彼ら(海に融けてしまうひと)は、いわゆる万葉仮名のような過渡期の象徴なのかもしれない。

だからうまくいえないけど、万葉仮名がひらがなに変わって現代まで使い続けられるように、多分きっと、この世界の循環っていうのは、完璧を目指していつまでも続くのだろうなぁと思った。

多分、世の中の大体の人は、完璧で永続的になる部分を切り取っておはなしにするんだろうけど、つたゐさんは過渡期の部分を切り取って書いているから、だからこんなにお話は透き通ってせつなくて、けれど淡々とした自然現象らしさを感じさせるんだろうなぁと思った。

今つらつら書いているけど、あんまりまとまらないや。多分これは2、3回繰り返して読まないとだめなのだろうとおもう。

あと、私前作を読んでいないから、きっと理解できていない部分とかが沢山あるんだろうと思う。

でもこの『魚たちのH2O』だけでも分かるように物語は構成されているから、ありがたいなぁと思った。

おしまい。

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