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#195 映画『ゴールデンカムイ』を観て倩と…

まず世の中の実写化について少し

まずはこの件に触れずにはいられません。「セクシー田中さん」のドラマ化における一連の原作改変騒動で、原作者である漫画家の芦原妃名子先生が亡くなられたことは大変ショックであり、先生のご冥福を心よりお祈り申し上げる次第です。本当のところは分からないので、誰かを批判しようとも思いませんが、原作者+出版社+メディア+脚本家の方々それぞれが、打ち合わせを重ね、みな幸せになる良質な作品も世の中にはたくさんありますので、ただただこの作品ではそれがなされなかったことが残念です。

マンガやアニメの実写化が発表されると、SNSでは「実写化はして欲しくない」という意見がたくさん寄せられます。実際、原作を無視した駄作が過去に何作も存在している現実や、最初から原作がある方が映像化しやすそうなために安直な感じが出てしまったり、ヒットしても原作者にあまり報酬が支払われないといった話もあり、そのような懸念を抱くのは仕方のないことかもしれません。

しかしながら、キャスティングを妄想することが趣味な配役マニアとしては、「自分が知っている原作の実写化は常に楽しみ」ということを公言せねばなりません。

そこで私として今できるのは、本当に素晴らしかった実写化作品を紹介することではないかと思い至りました。そして、ちょうど最近そのような作品に出会うことができました。それが映画「ゴールデンカムイ」です。まだ上映している作品なので、急いでこの文章を書き上げました。前置きが長くてすみません、次からやっと本題です。結構な長文ですが読んで頂ければ幸いです。

山﨑賢人に土下座して謝りたい快作!!

「ゴールデンカムイ」はマンガ全巻を所持するほど大好きな作品です。もちろん、アニメも第4期まで全て視聴しています。特にアニメは漫画原作に忠実に作られており、本当の意味での超豪華声優陣の快演により、非常に面白いです。おそらく最終シーズンになるであろう第5期の制作を今かと待ちわびています。

その「ゴールデンカムイ」が実写映画化するという話が出た時、主演の杉元佐一役が山﨑賢人と知り、少し失望したのを覚えています。彼が嫌いというわけではありません。「熱海の捜査官」に出てたころから注目していた俳優さんですし、映画「キングダム」では主人公・信をアクションも含め見事に演じています。ですが配役マニアの私は日本テレビの「鉄腕DASH」で長瀬智也が料理を美味しそうに食べている様を何度も見るうちに、ヒンナヒンナする杉元役は彼しかいないとずっと思ってきたのが原因です。ですがその懸念も実際の映画を観て、杞憂に終わりました。スクリーンの中には確かに杉元佐一がいました。


※このあと、映画のネタバレとなる内容も含むのでご注意ください

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山﨑賢人が今回杉元を演じるにあたり、10kg体重を増やしたとコメントしています。そのような所謂デ・ニーロ・アプローチが功を奏しているのはもちろんなのですが、やはり彼を杉元たらしめているのは、杉元がアイヌの黄金争奪戦に参加しているバックボーンである、日露戦争のシーンをとことん正面から描き切っていることではないでしょうか。映画冒頭の日露戦争でのアクションシーンがリアルで凄まじかったことが、その後の杉元の行動や言動に説得力をもたらしています。あの死地から生還したこと、そのためにはたくさん殺さなければならなかったこと、そしてその戦場で亡くなった友との約束を守らなければならないこと…。この戦争で杉元の身に染み付いた死生観と、アイヌの古来からの教えが相まって今後の杉元を突き動かしていくのですが、アクションシーンだけでなく、そんな杉元の心の微細な変化も上手く演じていたと思います。

マンガ→アニメ→実写化順の良い効果

あとやはり特筆すべきはアシㇼパを演じた山田杏奈が素晴らしかった。彼女を知ったのは、テレビ東京のドラマ「新米姉妹のふたりごはん(2019)」の姉のサチ役からなのですが、このドラマもマンガの実写化で、料理ドラマにハズレ無しのテレビ東京系の名に恥じず、とても楽しめたのを覚えています。妹が作る料理を毎回美味しそうに食べるドラマでの演技が評価されたのか(多分違う)、アシㇼパ特有の勇ましさとひょうきんさ、そして幼さも上手く演じていたと思います。そしてさらに素晴らしかったのが「話し方」です。

マンガから直接実写化されるのではなく、一旦アニメ化を経て実写化される場合、アニメの声優さんの声質、演じ方に合わせて配役を行うと、うまくいくケースが多いと感じます。その好例として「ゆるキャン△」を取り上げてみます。この作品は、マンガからアニメへの映像化が素晴らしかったため、実写化には疑問視する声も多かったと記憶しています。しかし、テレビ東京の制作によって生まれたそのドラマは、原作好きやアニメファンを納得させるクオリティでした。

「ゆるキャン△」の実写化において、大垣千秋役の田辺桃子無しでは語れないです。アニメから飛び出したかのようなヴィジュアルは、いい意味でファンの度肝を抜きました。しかし、最もこの実写化の成功に貢献したのは、むしろ各務原なでしこ役の大原優乃であったと個人的に思います。初めて配役が発表された際、彼女がアニメのなでしこと、一番見た目が異なることに不安を抱く人も多かったでしょう(だってなでしこ髪の毛がピンク色だし)。しかし、実際にドラマの中でなでしことして動く様子を見ると、その不安は払拭されました。

声、雰囲気、そして美味しそうにご飯を食べる様子がまさになでしこそのものでした。おそらく、マンガから直接実写化されていたら、ここまでの納得感は得られなかったでしょう。特にその声と「話し方」です。アニメ化を経て声優(花守ゆみり)に命を吹き込まれたなでしこを見て、視聴者に「動くなでしこ」のイメージができていたため、声と話し方が似ている「大原優乃=なでしこ」という認識が容易になったのではないでしょうか。

話がかなり脱線してしまいましたが、「ゴールデンカムイ」も一旦アニメ化を経たことによって、「動くアシㇼパ」のイメージが視聴者に出来上がっていたため、すんなり山田杏奈=アシㇼパの解像度が上がるようになっていたのかなと思います。アニメを見て、アシㇼパはこんな話し方をするんだというイメージの固定化、そして山田杏奈がそれに準拠した演技、話し方をすることで、アシㇼパとして何の違和感もありませんでした。

その他のキャストもえぐい!

杉元とアシㇼパ以外の配役も素晴らしかったです。彼らと行動をともにする白石由竹役の矢本悠馬。杉元役の山﨑賢人同様、原作よりも少し年齢若めな配役ということもあり、よくよく考えると一番原作からはイメージが離れているようなのですが、これはこれで白石以外の何者でもなく、実写ならもう他は考えらないくらいのはまり役だったのではないでしょうか。特に杉元と一緒に極寒の川に落ちるシーンは、この映画の中でも名シーンの一つ言って過言ではありません。

あとやっぱり土方歳三役の舘ひろし!!イラストにも描いた通り激渋で素晴らしかったです。特に和泉守兼定を取り戻し、馬を2本脚立ちさせての勝ち名乗りシーンは神々しさすら感じました。上映前に「帰ってきたあぶない刑事」の予告が流れ、相変わらずバイクの上でライフルを撃つ映像が出てきたこともあり、その姿が重なって見えました(そこかよ)。牛山もヤバかったですね。土方とがっぷり四つに向き合うシーンは両者迫力がありました。

第七師団のメンツも素晴らしかった。鶴見中尉役の玉木宏は乗っていた馬をやられるも、すぐにT1000の如く走る様は胸熱でした。そして二階堂兄弟を演じた柳俊太郎ですよ。尾形や谷垣がまだ出番が少ないこともあり、第七師団で一番目立ってました。一人二役でしかも奇怪な声でのセリフが多い二階堂をしなやかに演じてました。

あとそれは勿体ないと思ったキャスティングが山内圭哉。ヒグマに爪で顔面を剥がされる第七師団の玉井芳蔵役でした。山内氏はこれから登場する一癖も二癖もあるキャラクターを怪演できる方なので、ここで使われちゃったのはもったいないなーと思いました。

そしてここから最重要ネタバレ注意なのですが、エンディング曲が流れた後、次回作を臭わせる映像がフラッシュバックで流れます。そこには新キャラがたくさん登場。あまりにも突発的なことだったので、目に焼き付けるのが難しかったのですが、その後調べたところ、判明した新キャラのキャスティングは以下の通り。


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・二瓶鉄造=小澤征悦
・辺見和雄=萩原聖人
・家永カノ=桜井ユキ
・インカラマッ=高橋メアリージュン
・キロランケ=池内博之

皆さんはまり役ですね。家永カノの桜井ユキは期待。翠ジンソーダのCMの「まだ流行ってない」のお姉さんやないか。これは次回作も楽しみです。

2.5次元映画という概念が日本には必要だ

結局配役の話ばかりになってしまい申し訳ありません。もちろん映像も良かったです。先ほども述べた日露戦争の描写だけでなく、北海道の大自然の描き方、そこに住むアイヌの生活、そしてヒグマやオオカミといった野生動物。違和感なく見ることができました。実映像なのかCGなのかわかりませんが、ダイヤモンドダスト綺麗でしたね。

ですが見る前の不安要素として、「キャラクターの服装が新品に見え過ぎる問題」がありました。予告で見た限りでは、映画「るろうに剣心」のような衣装にシャビーシック(使用感を出すために少し経年変化感を出す)を施しているように見えなかったので作中で浮いてしまうのではないかという不安です。でもこれもあまり気になりませんでした。シャビーシックを施した方がより良かったかもしれませんが、キャラクターのアイコンとしての衣装を尊重したのかもしれません。アシㇼパの衣装はもちろん、杉元のマフラーとか。

私は日頃思うことがあります。マンガアニメ実写化に難色を示す人たちにも納得してもらうための新たな概念が必要なのではないかと。それが「2.5次元映画」という概念です。2.5次元舞台はすでに皆さんの知るところだと思います。マンガやアニメのキャラクターを演じる、2次元と3次元のちょうど間にあたる舞台です。5年前にnoteを書いてました。

一見コスプレ大会みたいな漫画アニメの実写化作品も、リアル追求よりも2.5次元映画として一分野確立させてもいいのでは無いでしょうか。「銀魂」、「暗殺教室」、「鋼の錬金術師」、「進撃の巨人」、「約束のネバーランド」などの実写映画は実写化とは言わず、「2.5次元映画化」とラベリングして楽しむのもありだと思います。

最後に

あまりに「ゴールデンカムイ」を激賞し過ぎた感があるので、最後にこの映画の不満点を無理やりに上げてみます。それは月島(工藤阿須賀)の背が高すぎたことと、杉元の持ち歩いていた味噌があまり発酵した色をしておらず、それほど一目でオソマと間違うような色じゃなかったことくらいです。今後出てくるであろう鯉登少尉よりも月島軍曹の方が背が高いという事態が起こった場合、賛否両論が起こるでしょう。個人的に鯉登少尉には柳楽優弥がピッタリだと思うので。

さてこれほどの長文にお付き合いいただき誠にありがとうございました。素人の戯言ですが、映画「ゴールデンカムイ」は本当に見て損のない素晴らしい作品だったので、一度鑑賞されることをオススメいたします。それでは続編を楽しみに今回はここらへんで失礼します。



追記:私が配役マニアであることを書いたnoteです。


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