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#83 オクシモロン

1997年にThe Verveというバンドが発表した、『Bitter Sweet Symphony』という曲をご存知でしょうか。この曲が世に出てからすでに20年以上経ちますが、いまだにTV番組に流れるのを耳にすることがあるほどの名曲です。動画サイトへのリンクを張っておきますが、誰でも一度は聴いたことがあるのではないでしょうか。

この曲が入った3rdアルバム『Urban Hymns』は学生時代に買って以来、自宅にずっとあります。それくらいお気に入りな名盤なのですが、実はこの曲がどれほど素晴らしいのかを語るために今回のnoteを書いているわけではありません。この曲名『Bitter Sweet Symphony』の中にオクシモロンが隠れているのです。

オクシモロンとは?

日本語で「撞着語法」いう修辞技法のひとつ。「賢明な愚者」「明るい闇」など、通常は互いに矛盾していると考えられる複数の表現を含む表現のことを指す。形容詞や連体修飾語、句、節などが、修飾される名詞と矛盾することとしては、形容矛盾とも言う。  wikipedia より

つまり『Bitter Sweet Symphony』の曲名の中に、Bitter(苦い)とSweet(甘い)という相反する言葉が入っているのです。「オクシモロン」とはとても面白い響きですが、ギリシア語のoxys(鋭い)とmōros(愚かな)を合成してできた言葉であり、その成り立ちも相反した言葉をつなげたものです。

「普通にすごい」、「小さな巨人」、「残酷なやさしさ」、「欠点のないのが欠点」、「ゆっくり急げ」、「負けるが勝ち」、「ありがた迷惑」、「公然の秘密」、「生きた化石」などなど、普段の会話で特に意識せず口にしている表現にもこのオクシモロンが使われています。

相反する言葉を結びつけるということは、今までそのように使われたことがない、新しい言葉の使い方をするということです。従来とは違う新しい考え方や理論を表明することにもなります。つまり言葉の使い方に違和感が出るため相手に与える印象も変わるので、コピーなどに効果的に使えば、より相手に伝えることができます。

つまりオクシモロンを用いれば、言及している内容への興味を引くことができます。「それってどういうことだろう?」という違和感が、ユーザーに考えさせる効果を出すわけです。しかし使い方を間違うと、 対象への皮肉としての効果をもつ場合があるので注意が必要です。

オクシモロンをうまく使った秀逸なコピーといえば、缶コーヒー「BOSS」シリーズの【このろくでもない素晴らしき世界】が思い浮かびます。トミー・リー・ジョーンズがずっと出演しているこのCM。日本人の憎めない奥ゆかしさを伝えつつ、本当はそれじゃダメなんじゃないかとも思わせる内容にピッタリのコピーだと思います。

曲名にも『Bitter Sweet Symphony』以外だとサイモン&ガーファンクルの『The Sound of Silence』が有名ですね。静寂の音。漫画王国の住人である日本人であれば、手塚治虫先生が発明した静寂の音「シーーーン…」を思い浮かべるかもしれませんが…。

音楽だけじゃなく、映画のタイトル『Back to the Future』。これも始めて聞いたときは驚きと共に、「なんてかっこいいタイトルだ!」と思った記憶があります。

それからオクシモロンについて色々調べているときに、とあるサイトでテレビ番組名『全力!脱力タイムズ』もオクシモロンだと書いている人がいて「なるほど!」と思ってしまいました。全力なのに脱力。この番組は、見る側も色々と察しなければならない裏表がある構造になっているので、オクシモロンとも相性がいいです。

色々と書いてみましたが、これから仕事でコピーなどを考えるときに、「オクシモロン」についても頭の片隅に置いておきたいと思います。


PS.今回描いたイラストは「living dead(生ける屍)」。これまたオクシモロン。ゾンビが描きたかったんだよ!


さらに追記です。ACCの今年の受賞作品を見ていたら、三井住友カードのCMのコピー「Have a good Cashless」もオクシモロンじゃないですか!小栗旬が出てるやつ。


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