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不登校先生 (14)

それでも時間は流れる。

何にもしなくても、時間は流れる。

こんな状況になって、何にもしない時間。

それでもそんな時間も、止まってはくれない。

朝になるとカーテン越しでも真っ暗な部屋は薄暗がりになり、

昼を過ぎると、紺のカーテンを突き抜けて日差しは入り込んでくる。

夕方になると部屋はオレンジ色に染まり。

夜になれば真っ暗な闇が、部屋中を占拠する。

そんな一日を、ただ、何もせず、眺める。

座り込んだ、畳の上に引いたマットタイルの、

小さなもこもこに目を落として。

何をするでもなく、抜け殻の様に

ただただ時間が過ぎていく中で、置いて行かれたように。

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心が完全に折れてしまうと。

体はそれにきちんと調整していくようで、

お腹もならない。

トイレにもいく気配もない。

同じ姿勢で座り込んでいても、

体中の筋肉は力が抜けきって、

わずかな動きも起こらない。

無気力は、強制的に、無感覚、無反応も連れ立って、

何も感じない考えない心に、体は寄り添うように

何も動かなくなる。

今の自分がまるで、

ラピュタの浮遊城にいた、

壊れて苔むして動かなくなったロボット兵の様で

でも、何だろう、何にもない空っぽなのに、

涙が時折流れる。

感情は湧いてこないのに。

どうにか空っぽにすることで保っている心だけど、

砕けた心がどこかに零れ落ちるかのように、

涙だけが流れてくる。

あと何日、こんな状況は続くのだろう。

辛うじて、僕をつなぎとめてくれた僕は、

次の診察は一週間後だから。

来週の月曜日に体が動けばいいから。

遠くから聞こえてくる町内アナウンスの様に、

小さな声でそっとつぶやき続けてくれている。

一日が、

何もしない一日が、

何もする気のおきない一日が、

すごく長く、すごく早く

流れていく。

今日が、何曜日なのかも、どうでもいいくらいに。

↓次話





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