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3月読んだ本たち

久しぶりに、Noteに投稿しているような気がする。
仕事が忙しいというのはある種の言い訳で、自分の努力不足だと思っていた。努力していない自分を否定するためにも続けていた中国語の勉強も、毎朝早く起きて勉強や本を読む時間を確保することもできなくて、日々自分に対しての罪悪感もつのっていった。

今いる職場でできない自分が嫌で、どうしようかと思ってしまうことも多かった。自分が「仕事ができない人」と評価が下されることが怖くてしょうがなく、そればかりを意識していたら今度は人を「仕事ができる人」か「そうでないか」でしか見れないようになっていることに気がついた。
年度末が近づき少し仕事が一段落した状態で、ここ2ヶ月の自分はかなり追い込まれていたことをようやく自覚した。
少しずつ活動的になり、仕事に対しても冷静に対処することができるようになってきた。仕事に追い込まれていると自分の性格がすごく悪くなったように思えるし、全てが足りないと思えてしまう悪循環があるように思える。けれども少し落ち着いた今、あの2ヶ月は異常だったし少しずつできないことができるようになってくると「自分の意思」の問題ではなく環境の問題だということに気がつくことができた。

今月も多くの本を読んだ。
「本を読む自分」に対しての周りの視線を内包化している私にとって、本を読むこと、書店に行くことはあくまでも「怠けていない」と自分に認識させる行為だったかもしれない。
それでも動機はどうであれ、その行動の先には救いにつながってきたからこそ貪るように、少し病的と言えるほど本を購入した。
きちんと読んだと言われるとよくわからない。
また来月から仕事は増えて、また生きづらさは私を襲い、ベットの上で何もせずにぼーっとする日はやってくると思う。けれどそんな時、今日書いた文章は、そんなベッドの上で何もできないでいる私を救ってくれる時がくると信じている。そんな思いを胸に不定期ながらも本に対する文章を書いている。

<3月買った本たち>

①台湾漫遊鉄道のふたり



1938年、台湾。親戚からの結婚攻撃から逃げてきた青山千鶴子は台湾に講演旅行に招かれ、台湾人通訳王千鶴子と出会う。青山千鶴子は王千鶴子の案内で台湾の風景、文化、食に魅了されていき鉄道で台湾を縦貫する。その中で2人の千鶴子は関係を深めていき……。

昨年、社会人になる最後の春休みに台湾に3週間滞在したことがあった。台湾の土地に降り立ち、さまざまな風景を見ると日本植民地時代に残された痕跡があった。ただそれをただ「観光」として消費して良いのだろうか、日本の国籍とルーツを持つ人間として台湾をどのように見つめどのような姿勢でいるべきなのか深く考えたが、その問題が小説で投げかけられている。気軽に行ける台湾だが、台湾旅行の前に読んで欲しい一冊だ。

②「能力」の生きづらさをほぐす



「仕事ができる」ということはどういうことか?仕事を始めて丁度1年になって、ずっと「仕事ができない人」と思われたらどうしようと考え、おそれ、そして仕事にいく日々がひどく苦しく辛い時間を過ごしていたような気がする。ネット上では「仕事ができない人の特徴」とかを読み、自分もそう思われているのではないかと吸収してしまいがんじがらめになってしまう。そもそも「仕事ができるとは何か?」ひどく、曖昧な概念でありながら、その場その場で変わるものだけれど世の中には不変で、かつその人の評価が決定づけてしまうような雰囲気がある。それに対して言語化し考えるきっかけを与えてくれる本だ。

③HEART STOPPER



Netflixシリーズ「HEART STOPPER」の原作。
久しぶりに一気見したドラマ。特にニック役のキットコナーがまとう雰囲気が好きになりその熱で一気に本屋まで駆け込みこの本を購入した。同じ学園もの、かつ性的マイノリティーを主題にしたドラマである「S EX EDUCATION」があるが流れている世界、価値観は異なる。
「SEX EDUCATION」の世界ではゲイであること、レズビアンでいること、そしてそれをカミングアウトすることに対しての視線に対して自由だとしたら、この作品は少し保守的かつ、偏見が強く残る価値観の世界線だからだ。
そんな重たい雰囲気を吹き飛ばすように彼らの恋愛模様は甘く、切なく、この言葉を乱用したくはないが青春のハッピーオーラを惜しみなく放出している。同性同士の恋愛、性的マイノリティーの恋愛は必ず壁にぶつかるような重いテーマとして扱わなければならないような、そんな流れなどまるでなかったかのように。けれど今現実として起こっている現実、問題には真摯に向き合って作っている。その2つが共存している作品だった。

④言の葉さやげ/茨木のり子


名古屋のOn Readingという本屋で見つけた一冊。茨木のり子が詩に対してのエッセイをまとめた一冊だ。茨木のり子の言葉には、力があり、大して詩に詳しくないの彼女の声を追っかけたくなり、見つけたら買っている。
少し、難しいけれどきっとまたふとしたきっかけで読みたくなる本だと思う。

⑤深く、しっかり息をして


川上未映子がHanakoでのエッセイの連載をまとめた1冊。川上未映子に関して私の中で信頼している人だ。けれど、小説はあまり読めない私にとって、小説はハードルが高いけれどエッセイが出て彼女の言葉をたっぷり浴びることができて嬉しかった。

⑥食べる私/平松洋子


本のすみかさん(@honno_sumika)の読書会で、いただいた一冊。自分が読みたいと思って接した本ではなく、どなたかからのおすすめで私の本棚にやってきたのは初めての体験だった。食べ物にまつわるエピソードに関する30名の著名人のインタビュー集。毎日生きるためにめんどくさくても、何かしらお金を払い、また労力をかけて作る一食にその人の人生が反映されるのは当然と言えば当然なのだが、それを紐解いているとよく知っているあの人の違う一面が見えてくる。
特に映画監督のヤン・ヨンヒさんのインタビューは衝撃で頭を打たれたような感覚になった。


⑦女王の肖像


岐阜の古本屋「徒然舎」で装丁に一目惚れした一冊。切手蒐集家の筆者が彼の人生を一緒にしてきた切手について記述した一冊だ。切手は郵便制度が出来て以降、国家の存在を証明する一つとして考えられてきた物質だからこそ、多くの歴史と物語が内包されている。
手紙を日常的にまだ書く人間として、切手はただの「道具」にすぎないがけれど著者は切手を見るとその切手に込められた時間と歴史を読み解くことができる。その筆者が見ている世界を、筆者の言葉を通して覗き見することができる。
何より赤い表紙に、ヴィクトリア女王の横顔が押された装丁は持つだけで心をときめかせてくれる紙の本の良さが詰まっている。

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