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愛を誓う|ショートショート

彼女を初めてみたのは、学校の屋上だった。
裸足で足をぶらぶらさせて、彼女は青い空を見上げていた。

後から知ったけれど、あれは同級生にびしょ濡れにされた上履きを乾かしていたのだった。

その彼女は今僕の隣にいる。
長い睫毛、尖った唇、頭には黄色い花冠を載せて、ぽろぽろと陽の光をこぼしている。

家の裏庭で式を挙げたい、と言ったのは彼女だった。
庭といっても彼女の家は森の中。
ギャラリーには多くの動物達も集まって、昼間なのに梟もいた。

いつも不思議ではあった。
彼女を遠巻きにするクラスメイト。
通りすがりの大人達はひそひそと声を潜めた。
転校生だった僕には分かる由もなかったが、彼女の携える孤独と凛とした姿は堪らなく魅力的だった。

「汝は、彼を愛すと誓いますか?」

誓います、と答えた彼女の視線は神父にも僕にもなかった。
ザワザワザワ。
拍手するかのように森に風が吹き抜ける。



前のお話▶︎ 森と真実



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