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ここは、とある学校|ショートショート

ピンク色の髪の毛を、サラリとなびかせて、水色のランドセルを背負って、今日も遥斗は学校へ行く。
「おはようー。」
遥斗の髪を触りながら追い越して行ったのは、夕奈で、そんな彼女の髪色は生まれたままの黒色だ。
「今日は、夕奈は、何するの?」
「んー。昨日の続きー。」
「今、何してるんだっけ。」
「葉っぱ集め。もうすぐ終わる。」
「へえ。」
下駄箱を開けて、上履きに履き替える。
「遥斗、教室行かんのー?」
「俺、視聴覚室、篭る。」
ふうん、と夕奈は少し残念そうな顔をしたが、すぐにぴょんぴょんと跳ねながら居なくなった。

視聴覚室に行くと、既に、彰が来ていた。
遥斗に見向きもせずに、一心不乱にゲームに熱中している。なお彰の髪色も黒。
「どこまで行った?」
「あー、うん。」
集中すると、彰は他のことが考えられなくなる。
今日はまだ声が届いているから良い方だ。集中が過ぎると、他の音も聞こえなくなるらしく、話しかけても返事もしない。
遥斗もそのまま少し離れた席に座ると、ゲーム機をランドセルから取り出して、早速ゲームに取り掛かった。


キーンコーンカーンコーン。
チャイムが鳴った。
お昼ご飯の合図だ。給食だ。
時間はあっという間に過ぎる。
教室へ行くと、ガタガタと机を動かしている最中で、遥斗と彰も急いで手伝う。
机の移動が終わったら、お盆を持って並び、順に給食を皿によそってもらう。
よそう当番の中には、夕奈もいた。
「多め?」
「イエス。」
そう言ったのに、夕奈はきっかり平均的な量を皿に盛ってきた。
ちきしょう。


「いただきまーす。」
食べていると、目の前に一枚の紙が差し出された。
仏頂面の太一君である。髪は茶色。
「これ、食べ終わったら、書いて。」
「何これ?」
「アンケート。」
「太一君は今、究極の給食を作ろうとしてるんだよねー。」
横から夕奈が口出ししてきた。
太一君は仏頂面のまま頷く。
「究極のって、どうなったら究極になんの。」
すると、彰の声が飛んできた。
「遥斗ー。現状把握からの課題抽出は~?」
遥斗は大きな声で返事をした。
「研究の第一歩~!」
吉岡先生の真似である。
クラスが笑いに包まれる。
太一君も笑って言った。
「それを知るために、まずはアンケートを取ってるんだ。」
遥斗は、なるほどね、と頷いた。

食べ終わったそばから、夕奈はノートに葉っぱを貼り付けて、図鑑を見ながら横にメモを書いている。
そばには大きな手作りの学校周辺の地図があり、多数の数字と記号が書き込まれていた。
「片付けてからにしなよ。」
「もうすぐ終わるんだもんー。」
遥斗も自分のノートを開いた。
今日のゲームバトルの成績と、考察が書いてある。最強パーティまでは、まだまだだけれど、大分成績は上がってきた。
彰の分も書いてあって、遥斗と彰は共同研究だった。

夕奈がノートを覗き込んでくる。
「私もこれが終わったら、そっちの分野もやってみようかなー。」
「コントローラーも握ったことないくせに。」
「馬鹿にすんな。あるわー。」
軽口を叩いたが、ふと真顔になって夕奈は言う。
「なんて本当は、次は動物関係でなんかやりたいと思ってるんだよねー。世莉の見ていると、楽しそうだし。」
世莉、というのは夕奈の親友(金髪)で、トカゲの生体研究をしている。学校には来ず、もっぱら家でやっている。
「あれは確かに、楽しそう。」
「でしょー。」
キーンコーンカーンコーン。
お昼休み、終了の合図がする。

子供たちは一斉に、机をガタガタと戻し始めた。

さあ、続きを始めよう。ほら、そこの君も。






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