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煙草と我慢と罪悪感


登場人物
・上野真智子(当時27歳)
高校の生物教師。颯太のクラスの副担任。愛想がない。颯太いわく、「エロくないのが逆にエロい」らしい。

・塚田颯太(当時18歳)
工業高校の三年生。タバコを吸い、バイクが好きなマイルドヤンキー。尖って見せたいお年頃。

・ギン…颯太の幼馴染

二人の他の物語はこちらのサイトから


夜遅くにインターホンが鳴って
誰かと思ったら塚田くんだった。


「ちーす。」

「…なにしにきたの?」


不審がる私に
塚田くんは少し笑った。


「来たらダメだった?」

「…べつに。」


よかった。


そう呟いて塚田くんは
玄関で靴を脱ぐ。

学ランを椅子にかけて
ソファに座り
ポケットから煙草を取り出して
吸おうとし始める。


火がつく前に取り上げると

おかしそうに笑った。


「なにしにきたの?なにかあったの?」

「だから、会いたかったの。
それじゃだめ?」

「そんな理由、だめ。」


断言した私を見て

再び面白そうにする。


そして私の腕を引いて
ぎゅっと、抱きしめた。


「…幼馴染のコと喧嘩でもしたの?」

「…あー、ギン?
あいつとは喧嘩はしねーよ。」

「また職質でもされた?」

「またってなんだよ。」


耳元に塚田くんの
鼻で笑う声がする。


わたし、なんで
楽しもうとしてるんだろ。


「…真智子ちゃんにはないの?
会いたくて会いたくて仕方ないって
そういう夜とか、朝とか。」


あるよ。

だけど、
行動に移さないだけ。


耐えられるから。


「…ないか。」


私が答える前に
少し寂しそうにそう言って
ゆっくり私を押し倒した。


「…ちょっと待って。
なんで真智子ちゃんが泣きそうなの。」

「…あいたかった。」


そう呟いた自分に

自分で驚いてしまった。


「…は?」

「あいたかったよ、私も。
でも、言えないし、
私は、我慢できるし。」


冷静に答えた私に
うーわー、と言いながら
塚田くんは髪をかきあげる。


「かわいくないなー。」

「うん、知ってる、」


「我慢するとか、

体に悪いよ、真智子ちゃん。」


ほらね、そうやって
分かりやすく喜ぶでしょう。


「煙草よりはマシよ。」


その顔にいつも、
もう引き返せないって、

罪悪感を感じてしまうの。



煙草と我慢と罪悪感







**


笑った真智子ちゃんを見て
俺は心の中で笑う。


どうせまた、
罪悪感とか俺の若さとか
考えてるんだろ。


知ってる。

でも俺、意地悪だから、


気づかないフリしとくね。






2012.04.30
hakuseiさま 

twitter
@touka_lalala

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