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君以上はいないと思う気持ち

美波は校庭を見ながら

ため息をついている。


「どーした。」

「…べつに。」


その視線の先には

案の定、野上がいた。


俺がニヤリと美波を見ると
バシバシ腕を叩かれる。


「なによーっ!!」

「いってぇなー。
なんも言ってねぇだろ。」

「目が言ってるもんっ」


こいつのこういうとこ、
確かに可愛いなぁとは思う。

女には沢山会ってきたが
あんまり見たことないタイプ。


「好き??」

「…関係ないでしょ。」

「野上のどこが好き??」

「うっさい!!
さっさと一迎会のこと考えてよっ!!」


そう言って俺を突き飛ばし

俺は椅子に座って
『はじめての作曲』
とかいう、よく分かんねぇ本を開く。


美波が買ってきたやつ。


「あ、みなみー、
これどうやって、」


話し掛けたら

なんか、すげー寂しそうな目で


校庭を見ていた。


「…みなみー??」


俺の声なんか

全然、届いてなくて。


今にも泣きそう、っつーか。


どうしたんだろうと心配になって

美波の少し後ろから
俺も窓の外を見ると、


なるほどそこには

野上がそこそこ仲の良い
女の先輩マネージャーが

野上と楽しそうにしていた。


「…なに見てんだよっ」


なにも気付いてないフリをして

後ろから、目隠しする。



そんな落ち込むなら

見なきゃ良いんだ、あんなの。



「うわっ!!やめてよっ!!」

「なになに??
あぁー、野上かぁー。

うーわ。
女と話してるの珍しいなぁー。」

「…あの先輩、
ナデシコ2位で、」



「美波の方が

ぜんっぜん、可愛い。」



野上がそう思ってるの、

俺、知ってるし。


つーか客観的に見て

美波より可愛い女なんて

この学校にいねーだろ。


「…なに言ってるの。」

「つーかよぉ。

野上、スゲー迷惑そうだぞ。
ほら、みろみろ!!
女から逃げるように立ち去ってる。」


俺が指差して適当にこじつけたら

美波は校庭を見たまま
小さく首を振る。


「野上はそんなの
迷惑とか考えるほど、

心狭くないもん。」


そして俺には

少し、微笑んだ。


「でもありがとう。

励まそうとしてくれて。」


…励ます??なにを??
それはちょっと違う。


俺はただ美波が

悲しそうだったり寂しそうなのが

見てて辛いだけ。


「…なぁ、美波。」

「なんですかー。」



「お前が辛かったら

俺がいつでも

励ましてやるぞ。」



そしたら美波は相変わらず

泣きゃ良いのに、
泣かないように堪えて、


涙をこらえる女も
会ったのは初めてで、


美波は俺があった中で一番、

可愛くて、イイ女で、



誰より野上に相応しい。



君以上はいないと
思う気持ち 






**


野上も美波も俺からしたら

同じくらい、大切で。

一番幸せになってほしくて。


二人が好き同士で

本当に良かった。






2012.01.20
hakuseiサマ
いない

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