見出し画像

【投機の流儀 セレクション】日経平均が史上最高値を付けた2月末の投資部門別売買動向における奇妙な風景

日経平均が史上最高値を付けた2月末における投資部門別売買動向には奇妙な風景が見られた。証券会社が自社の資金で自社に帰する損益で売買することを「自己売買」略称「ジコバイ」と言われているが、これは2月第3週で自己売買は5077億円の買い越しとなった。

一方、海外投資家は786億円の売り越し、個人投資家も918億円の売り越しとなった。これは東証の投資部門別売買動向の発表の数値であるが、証券会社が自らリスクをとって最高値近辺の日本株を大幅に買い越したという見方はしない方がいいと思う。

証券会社は顧客(主として海外投資家)の取引相手として、売買がスムーズに行われるように持ち高を動かすことが多いからだ。ジコバイのように見えて、実際は海外投資家の買いを映しているというのが実態であろう。しかし、東証の統計上はジコバイとなる。

海外勢が半導体関連等のような日経平均への影響度が大きい銘柄を買い上げ、その他の銘柄を同じ金額だけ売れば、差し引きで買い越さなくても日経平均を大きく押し上げることができる。 
89年年末の史上最高値当時には、品川白煉瓦や帝国繊維(通称「帝麻(ていま)」と言った)などのような日経平均採用銘柄で品薄株を買い煽って、日経平均を上げたという事実がある。89年年末の史上最高値は38915円だが、36000円以上はその分だという見方が当時から出ていた。

個人投資家は全体では売り越しだったが、信用取引では売り越した金額と同金額ぐらいは買い越していた。高値更新で利食い売りが出る一方、テーマ銘柄には順張りの買いが入っていると見られる。市場指数にはプラス効果を現した。

【今週号の目次】
第1部;当面の市況
(1)今の株価を海外投資家から見ると、どう見えるのか?「今の株価が高すぎると思わないのは、1990年代以降に日本が構造問題に色々と取り組んできたためだ」
(2)「今」はどの位置に居るのか?
(3)長い移動平均から見る現状の位置
(4)月末特有のリバランス、この機会を利用する手もある
(5)損保4社が政策保有株(持ち合い株)の6.5兆円分を全部売却すると、2月29日(木)に表明した。市場はこれを好材料と採った
(6)日経平均が史上最高値を付けた2月末の投資部門別売買動向における奇妙な風景
(7)今の世情はバブルではない
(8)34年前の38915円と今回の39000円との違い
(9)新NISAが外国株投資信託へ多額に流れた
(10)新NISAについて─「貯蓄から投資へ」はNISAを通して間違いなく進んでいる

第2部;中長期の見方
(1)日銀が「人類史上最大の金融緩和」を脱出する糸口を開くことは「2%インフレ目標が定着した『普通の国』」になった」ことを宣言し、つまり「デフレ脱却宣言」をしたに等しい=本当は喜ぶべきことなのだ
(2)日本の変化に注目している海外投資家
(3)IMFは、根底では本稿の言うメガトレンドの変化を認め出した
(4)「製造業、日本復活牽引」
(5)世界経済ソフトランディングの暗黙の合意は、実は恐ろしい─軟着陸シナリオ、あるいはノーランディング・シナリオには一応の警戒感を持っておきたい
(6)岸田政権支持率を、経営者や市場プレイヤーはあまり気にしていない
(7)半導体に復活気運─株価はすでに先取りしている
(8)もはや「バブル後」ではない。昨年の秋から言い出した「5年内に6万円」を筆者は撤回も修正もしないでおこうと思う─ただし、中間反落はどんな大相場にもあり得る
(9)市場の関心事は24年度(25年3月期)に向かう
(10)新NISAと米401k法

第3部;筆者がかねてから卓見の人として見て来た二人の意見
(1)ジム・ロジャース氏のメルマガの一部を掲載(現状株価への警戒説)
(2)これに対する長期強気は、武者ストラテンブレティン310号より抜粋(原文通り抜粋、2月26日)

第4部;読者との交信蘭
(1)古くからの読者で、論客のH様との交信(2月27日)
(2)大学時代のゼミ友且つ読者との岸田政権についての交信 M氏より(2月25日)

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
https://amzn.to/2AebYBH
『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
https://amzn.to/2vd0oB4
『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
https://amzn.to/2AeQ7tP
『会社員から大学教授に転身する方法』(電子書籍)
https://amzn.to/2vbXpZm
その他、著書多数。以下よりご覧ください。
https://amzn.to/2va3A0d

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?