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【投機の流儀 セレクション】投資の「終活」をどう進めるか?

これは日経ヴェリタス紙4月14日号の2頁を割いた記事の文言である。認知症への備え・相続への備え・高齢になった際の投資をどう整理するかという問題であるが、これは人それぞれによって違うから一概には言えない。

証券保管振替機構によると、個人株主全体に占める比率は60歳以上が43%だという。金融庁は75歳以上の高齢者に対する勧誘・販売ルールを設けている。75歳以上に対しての投資は役職者による事前承認が必要だという具合である。認知症と診断された場合には証券口座は凍結され、家族であっても取引できなくなる。家族であっても、一定の条件を整えないと取引できなくなる。高齢化とか認知症は、人によって大差がある。

筆者の周囲でも70代で昨日の話しをすっかり忘れてしまっている人もいるし、97歳で量子力学を駆使した確率計算で、相場の格言の蓋然性を検証して楽しんでいる人もいる。アナリストとしても、戦略家としても、冴えわたっている。98歳で90分の講演を立ち通しで出来る人もいる。高齢化とか認知症は、個人によって非常に差がある。証券会社や金融庁が設けるルールも完璧とは言えない。

そこで、自分で考えるしかないと思う。筆者の姪は東北大学を卒業した才媛で、学芸員の資格をとって美術館で働いており、筆者と相談しては東京電力や日本製鉄などの「This is Japan銘柄」である程度の金融資産を構築した。それがある日、突然に「ネット取引は便利で、手数料が要らなくて、極めて良いから利用していたが、一切やめて対面取引にした」と言い出した。彼女はまだ50代であるが、自分が認知症になるか、投機依存症になるか、そういう性質の人では全くない。
手堅い方法で大勢下限を買い、3割上がれば一部分を売り、5割上がれば一部分を売り、7割上がれば残り全てを売るというやり方で、売った後3倍になっても後悔しないという方針を持っていたし、東電や日本製鉄は買った後に1割下がればナンピンする。そしてまた1割下がれば、またナンピン買いするという方針を持っていた。
しかし、彼女は自分自身が変化する場合を恐れて、自らネット取引をやめて、対面取引に切り替えた。

あるいは、大手証券出身の人で、50代で投機依存症とでも言うべき行動をとり、ネットで売買を繰り返しているうちに運用資金がほとんどなくなってしまった人もいる。筆者がある程度親しくしていた野村證券の2年先輩で、現職時代は聡明な人だった。その人が退任にして、仕事をせずに暇になり、投機依存症的な行動になった。
ある時、筆者に「もう資金がなくなってしまったからやめた」と言ったので、ナンピンを繰り返しているうちにいわゆる「ナンピンスカンピン」となって、当面の運用資金が枯渇したという意味かと思って聞いていたが、そうではなくて運用資金がまったくゼロになってしまったと言う。しかし、彼はまだ理性が残っていて、金を借りてまで株式売買をする気はない。そこがまだマシな点だった。

もう一人は証券マン出身で短期売買依存症とでも言うべき状態になり、「3ヶ月で必ず2倍にする。その方法を編み出した。今、200万円しかないので思うように運用できない。よって300万円を貸してくれ。そうすると今の資金と合わせて500万円になる。3ヶ月後に1000万円にする。そこで利益を半分乗せて返済する」と言う。
「これはまた妙な話しだ。3ヶ月で2倍にするなら、今の手持ち200万円を400万円にして、400万円を800万円にすれば6ヶ月で800万円になるではないか」と言うと、そんな単純な計算が呑み込めていない。と言って、別に気がふれているわけではない。普通の話しをしていれば常識人であり、教養人でさえある。アルコール依存症や薬物依存症と同様、一種の「短期売買依存症」とでも呼ぶべきものであろう。

97歳で量子物理学に取り組んでいる人や今の依存症の人は特別な例であろうが、学芸員の資格を持った才媛が自ら進んでネット売買をやめて、証券マンが介在する方が安全だとして、対面取引に替えたという判断は参考にすべきだろう。

※その2(先週号の続き)として、来週号で筆者のケースを述べたい。

【今週号の目次】
第1部;当面の市況
(1)本稿で言っていた「値幅整理でなく、日柄整理だろう」は撤回せざるを得なくなった。結構なことである
(2)日本の株式市場は健全だ。ストックマインドは生きている。
(3)日経平均ボラティリティ・インデックス(VI)が高水準
(4)「焦るな、相場は明日もある」
(5)一方的に下がるか、一方的に上がるという無機質な相場が多くなった。
(6)調整相場はまだ続く?
(7)下値の目途を何処に置くか?
(8)日経平均では語れない相場か?
(9)グロース市場250指数は年初来安値
(10)為替投機相場の当然の生理
(11)17日(水)LIVE動画での質疑応答

第2部;中長期の見方
(1)いわゆる地政学から見た中東の混迷
(2)世界を動かす原因のそのまた原因は「資本の運動」である。
(3)原油価格と日本株の動きは逆相関になるものだが、原油のことは想定もできない。
(4)米利下げは6月から9月へ延期
(5)壮年期相場がやって来る?─その前に調整局面がある。
(6)「解散はない、総選挙もない」としておきたい。
(7)本稿では、10年先のことは判らないと最初から考えている。
(8)投資の「終活」をどう進めるか?─その1

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
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『会社員から大学教授に転身する方法』(電子書籍)
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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