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出版の世界から見た#cakesnotefesレポート(後半)

皆さん、こんばんは。

所属している会社が、noteのパブリシングパートナーとなったのを機に、その公式発表の場でもある#cakesnotefesに参加したので、レポートをします。今回は、レポートの後半をお届けします。

前半に引き続き、プログラムを通して気になった点を、いくつかピックアップします。

③自己昇華としてのnote

悩みによりそい、書き続けること/スイスイさん、人をひきつける文章をかくには/はあちゅうさんが、これについて言及していました。

リアルな人生における、失敗や恥ずかしい経験は、コンテンツ化してみせてしまえば、ネタとして昇華することができるとのこと。前半の①にて少し触れましたが、今はネットで拾うことのできない情報にこそ、価値のある時代だとされています。

失敗や間違いも、誰かには十分価値がある。有益な情報だけでは、他の情報には勝てない。

こういった人生の失敗を、ひとつ俯瞰的な目線で見て再構成し、世に出すのって、まさに過去の文豪がやってきたことですね。具体名を挙げると、枚挙に暇がありませんが、自分の人生の痛みを作品として昇華してきた人は多いでしょう。

本人にとっても、ただの恥として自分のうちに秘めたまま、押し隠して生きるよりも、外に吐き出して客観視できる状態にし、うまく自分の中に再認識できるまでになった方が、ずっといいと思います。

noteというプラットフォームを通じて、気軽にこうした試みができるようになったのは、本当に良いことです。一見、マイナスに取られやすいメンタルの不調を抱えていたことを、公表して誰かの手助けにもなっているサクちゃんさん、スイスイさんは尊敬に値します。

誰かの生きてきた軌跡が、評価される社会になってきていることは、出版界の人間うんぬんを超えて、個人として嬉しく思います。はあちゅうさんは、「自分を見せることが、最大のコンテンツ」と最後に言っていました。

前半の①で述べたとおり、肩書きが物言う世界の中で、本当は自分が経験してきた人こそが語るべきものも多いはず。まだ誰にも語ることのできなかった話を、語る誰かを待っているのです。自分も。

一時期はコミックエッセイなどで、そういった世界を公表することがブームでありましたが、コミックエッセイ以外でももっと出てきてほしい限りです。

④「場」としてのインターネット

前半の②にも関係していますが、個人発信の場から、同じ価値観を有する人たちの集まりが形成されているのが、特徴的でした。

最所あさみさんは、もとは読者と会いたいがゆえコミュニティを始めたそう。チャーリーさんは、出版化の際に量をこなさなくてはならないため、人を必要としたことがきっかけだった。

どちらも、同じ価値観を共有する人たちで構成された、コミュニティのようです。仕事でも家庭でも、リアルの場では得られないつながりを求めて、共同体が形成されていると推測しています。

ハヤカワ五味さんなどはそれを踏まえたうえで、いろんなコミュニティに属していないと、情報が偏りすぎたり価値観が凝り固まる、とまで言及していました。

(ちなみに、ハヤカワ五味さんはダイヤモンドで出版が決まったそう。)

こうした価値観を同じくした人が集まる動きは、インターネットが広まってきた当初から、動きとしてはあったと思いますが、何らかの作業を実際に共有して、リアルでの変化に結び付けていることが、当時との大きな違いでしょうか。

ネットの場での交流から、何かを共に作る「共創」まで行っているのが、特徴的です。それは、デジタルツールの進化で、共同作業がネット上でしやすくなったのも一員でしょうか。

個人的に、この「場」を醸成するというところに、非常に着目しています。

かつて、出版の世界はこの巨大な発表の場でした。ここに乗せられれば、たくさんの人に着目してもらえて、人気者になる可能性がある場でした。

しかし、皆さんのご存知のとおり、この場の価値は年々下がっています。皆が他のコンテンツに夢中になり、ここで発表しても大きな評判は取れないようになってしまいました。

人気者にするために、用意された場でもあったのに、もうすでに人気であるものを出して、そのもともとあった力で売りしのぐ世界になってしまいました。本当は魅力あるものたちを、手助けする場でもあったのに。

インターネット世代のマンガ家のあり方/うめさん、かっぴーさんも、既存の出版社には頼らず、デジタルの世界での収入がほとんどだとか。皆さんがご承知のとおり、出版社離れはかなり進んでいるわけです。

そういった事情もあって、出版という場以前に、うまく人気ものにできる場はないだろうか?個人的にそういったことを考えています。過去には、「場」をうまく活用して、そこからヒットコンテンツが生まれた事例があるからです。

たとえば、フィフティ・シェイズ・オブ・グレイなどは、最初はトワイライトのファンコミュニティで、二次創作としてひっそり投稿された作品でした。作品のクオリティが高かったことに加え、同じ価値観や作品を好む人が集まっているところですから、コミュニティの中で爆発的に人気がでました。

そこから、出版されてからはコミュニティの支援もあって、ヒットを飛ばし、映画化によりさらに大ヒットになりました。

最初から、強力な足場があって成功を勝ち取れた作品です。本人は、そこまで計算してやったわけではないとは思いますが、非常にうまいモデルケースです。

多様な価値観とチャンネル、メディアを行き来している今の世界では、なかなかヒットコンテンツは生まれにくいのが現状です。しかし、こういった何かの共同帯発の動き(創作以外も含む)から、上手に跳ねられる何かが出てくると思っています。

なかなか壮大で、着地までの設計と仕掛けが難しいところではありますが、こういったことを仕掛けていかないと、コンテンツをジャンプアップさせられないな、と改めて思いました。また、出版社が手を出しにくい細かいことだからこそ、できることがあると考えています。これは、今後の自分の課題でもあります。

さて、長くなりましたが今回のレポートは以上です。

プログラムの情報について、今回のレポートに含められなかったものがたくさんあります。それは、他の方がまとめていただけていると思いますので、そちらにて確認してみてください。

今回のフェスに登壇された方、運営主幹であるnote・cakesの皆様方、noteのシステムを支えている方々、フェスに参加していた皆様、日ごろnoteを盛り上げている皆様に、御礼申し上げます。お疲れ様でした。






記事は基本的に無料公開ですが、もし何か支援したいと思っていただけましたら、頂戴したお金は書籍購入か、進めている企画作業に当てさせて頂きます。