日本は既に「移民大国」?

外国人労働者受け入れ拡大に向けた議論が立ち上がっています。ひとくちで言えば、人手不足解消のために、規制を緩和しよう、ということになります。

日本は、移民には極めて消極的な国だといわれています。数字で見ても、総人口に占める比率は2%未満であり、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなど10%を超えている国とは、その姿勢に大きな開きがあります。

しかし、実は、外国人労働者の年間流入者の総人口に占める比率は、すでにドイツ、フランスに比肩するレベルに達し、アメリカを上回っています。就労ビザの上限は6年前に三年から五年へと改訂されているなど、条件緩和も進んでいます。

移民という言葉の定義はどのようなものでしょうか。日本国内には、条文化された明確な定義はありませんが、自民党内では「帰国を前提としない長期の労働者や、日本人の配偶者を持つ永住者ら」を前提に議論しているようです。しかし、この定義は、国際社会に照らすと極めて限定的なものです。国連では「(長期の)移民とは、通常の居住地以外の国に移動し、少なくとも12か月間当該国に居住する人のこと」となっています。EUでは「3か月以上EU圏内に留まるEU市民権を持たない人」です。

これらの定義を当てはめるならば、実は既に日本は、移民受け入れ緩和政策をとっている国であり、移民も増えている国になります。

こうした状況にありながらも、「移民」に関しては慎重な姿勢を崩していないようにふるまいつつ、外国人労働者は積極的に受け入れていく、という日本。何を考えているのでしょうか?

欧米では、移民に関して大きな反動が起きています。こうした動向を考慮し、慎重な姿勢を示しているのならば、わかります。良し悪しは別として、鎖国に近い考え方をとるというのならば、理解はできます。隣国の韓国はそうした姿勢をとっていて、今も外国人労働者を限定的にしか受け入れていません。

しかし、我が国は、人手不足が叫ばれる以前から、グローバルな見解にならえば、移民受け入れ緩和政策を進め、外国人労働者を増やしています。その一方で、「移民」は増やさないという二枚舌を使っています。

そのような姿勢は、日本国籍を持たない多くの人が、日本国に居住することになる、という「すぐそこにある未来」を隠そうとしているようにも見えます。欧米諸国で起きた問題とは一線を画している、というようなポーズをとっているようにも見えます。

「すぐそこにある未来」という言葉は、不適切かもしれません。すでに、私たちの周りには、たくさんの外国人が暮らし、働いています。この問題を議論するうえでは、足元の現実・実態をしっかりと見つめなおしたいものです。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33346830U8A720C1EA2000/

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