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博士後期学生の実態に迫る!密着インタビュー

学部大学院一貫教育を掲げ、大学院への進学率が7割を超えるギカダイでも、「博士後期課程」まで進学する学生はほんの一握り。博士号取得を目指すDr学生とはどんな学生なのか、彼らの知られざる日常を取材しました!

博士後期課程とは?

6年間の学部大学院一貫教育のさらに先にあるのが博士後期課程

『博士号』の取得を目指し、日夜研究に励む......!?

大学院は博士前期課程と博士後期課程に分かれており、博士号を目指す人は博士後期課程まで5年間通う必要があります。
博士後期課程では、国際的に活躍できる高度な技術者・研究者を養成するため、より高いレベルで研究を行います。博士前期課程を終えてさらに3年間、論文を執筆するためにほとんどの時間を研究活動に充てる日々になるそう。
そんな博士後期課程に所属し、研究に励む博士後期課程学生(以下:博士学生)がどんな一日を送っているのか、現役の博士学生の声を聞いてみましょう。


博士学生インタビュー①

電気・電子情報工学専攻 博士後期課程3年 川原泰正さん

電気・電子情報工学専攻 博士後期課程3年の川原泰正さんに、博士後期に進んだ理由や博士の研究生活についてインタビューしました。

博士後期課程に進んだ理由ときっかけは?

博士前期課程修了後、3年間社会人として働いていましたが、自身の研究において疑問点を解消したいと考え、博士後期課程に進みました。また、世界的に博士号の需要は高まってきているため、取っておいて損はないと思います。海外の方とスムーズにコミュニケーションを取って情報交換ができ、アカデミックの3年間は何ものにも代えがたい価値があります。

「就職したが、研究に対する疑問を解消したい」という理由で博士後期課程に進まれたということで、研究に対する姿勢に熱さと凄みを感じました。

インタビュアー:広報サポーター 天伯編集部メンバー

いつ頃から博士後期課程への進学を考えていましたか?

社会人2年目が始まったころです。同期に2人程博士後期課程を修了した人物がいて、思考の凄みを感じ、憧れを抱きました。また、自身の専門について学術的に突き詰めたいというのもあり、博士後期課程の進学を決意しました。

今どんな研究をしていますか?

電磁波工学研究室に所属し、水中におけるワイヤレス給電の研究をしています。

ワイヤレス給電は無線で電力を伝送する技術で、産業や医療など様々な場面で活用されています。元々企業で働いていた際には、医療関係で無線電力伝送の開発に携わっていました。

私の研究の特色は、ワイヤレス給電を「水中」で行うことにあります。水中のインフラ設備の老朽化を早期発見するための点検は、現在バッテリーを用いて行っていますが、水中の充電ステーションに行き、ワイヤレス給電により充電を行えたら手間が減るという嬉しさがあるんです。

水中での無線電力伝送が実現すれば、海中での探索・活動がよりしやすくなりますね!楽しみです。

気になる一日のタイムスケジュールは?

妻も働いており、朝食準備や家事などは自分が担当しています。大学での研究活動はだいたい企業の勤務時間と同じくらいまで行っていますが、メリハリのある生活を心がけています。

健康のため自転車で通学されているそうです。私も見習いたいです。 自由時間にはYouTubeを見たり、奥様とお話しされているそうです!

生活費はどのようにやりくりしていますか?

JSPS特別研究員、共同研究などにより個人事業主としてやりくりしています。この5~6年で研究に関わりがある分野であれば個人事業主を兼ねても問題なくなってきており、支援も手厚くなってきているため、生活費の心配はあまりしなくてよいと思います。

博士後期課程修了後の進路を教えてください。

社会実装を目標に掲げ、民間企業で研究員として働く予定です。新しい技術を開発することに関わりたいと思っています。

後輩に向けてメッセージを一言!

研究レベルや生活費等でハードルが高いと思われがちですが、博士後期課程に進む事で得られる経験や、身につく物事は多いです。

博士前期課程ではあまり論文を書かないと思いますが、博士後期課程では論文を出版することを第一目的に計画、行動することが大切です。そのためのマイルストーンを設定するといいと思います。

博士後期課程での経験は他に代えがたい特別なものです。息抜きすることを忘れないように、研究や論文出版を意識して過ごしてください。

ありがとうございました。目指した理由や日々のスケジュールまで、博士後期課程進学を考えるにあたり、非常に参考になりました。論文を出版することは必須であるということなので、論文を書くための文章作成能力を高めておくと良いように感じました。


博士学生インタビュー②

情報・知能工学専攻 博士後期課程2年 中村純也さん

情報・知能工学専攻 博士後期課程2年の中村純也さんに、博士後期に進んだ理由や博士の研究生活についてインタビューしました。

博士後期課程に進んだ理由ときっかけは?

博士前期課程の時に、研究を続けてみるのもいいなぁと思ったのがきっかけです。研究室の環境も良かったですし、経済的な支援もいっぱいありましたし、1回外に出て、また大学に戻ってくるよりかはそのまま行ったほうがいいかなと判断しました。

特定の領域でより深い知識を獲得し、それを表現するまでのプロセスを経験することは、博士号を得た後のキャリアで分野が変わってしまっても、有用で価値ある財産になると思いました。

学部の時点では修士卒を考えられていたそうですが、研究が楽しくて博士に進むことを決めたとのことです。取材の最中も、自身の研究について熱く語っていただき、研究がとても好きなことがよく伝わってきました。

インタビュアー:広報サポーター 天伯編集部メンバー

いつ頃から博士後期課程への進学を考えていましたか?

博士前期課程1年の時から博士後期課程に行こうと思いましたが、博士号取れたらベストだなぁと、高専の頃から思っていました。博士後期課程のパスは大変魅力的でした。取り組んでいて面白い研究活動も続けられるし、博士号に挑戦できる。

金銭面に不安がありましたが、TUT-DCフェローシップが創設されそうでしたので、なんとかなりそうだと思い、決めてしまいました。

実際進んでみて良かったと思います。博士前期課程では経験できないことがいろいろあります。共同研究先に行ったり、国際会議、論文投稿、自分の研究費での装置製作や環境構築など、大変でしんどい時期もありますが、大変楽しい時期もあります。

今どんな研究をしていますか?

視覚心理物理学研究室に所属しています。
研究内容としては、具体的にはバーチャルな歩行体験の生成をベースに、メタバース環境や実写の高精細360度映像による環境を使用したり、視覚や触覚を効果的に出す方法を考えて、歩行感や臨場感を高めるようなことをしています。

研究活動では、人を対象とした実験を行い、データを収集・分析を行います。Unityを使ってメタバース環境の設計などを行ったり、映像を使用する場合は360度カメラを持って撮影もしたりします。世の中には、ハードとソフトを問わず、道具としていろいろ使えるものがあるので、上手く使って効率よく研究ができるよう心がけています。

もちろん、実験のデータは解析して評価したら、学会発表や論文にするための作業も必要です。ここの作業はとても大変ですが、いざ学会の会場に行くといろいろな発表や展示が見れるのでとてもいいです。大学の外では、学術的な知見を深めながら、実社会への応用可能性を考えることもでき、違った活動のおもしろさがあると思います。

海外で撮影された映像を見てバーチャル旅行体験をすることができるようになるかもしれないとのこと。とても夢が膨らむ研究をされています!

気になる1日のタイムスケジュールは?

土曜日は吹奏楽サークルでの練習、日曜はお出かけパターンが多いです。バイクでのツーリングや外出先での写真撮影をよくします。

最近だとバイクで茶臼山までツーリングに行ったとのこと。とてもきれいな芝桜を写真に収めることができたそうです!

生活費はどのようにやりくりしていますか?

奨学金や助成金の利用です。私は日本学術振興会の特別研究員DC1に採用されており、生活費として月額20万円の研究奨励金と研究費として科学研究費助成事業(特別研究員奨励費)による助成を受けています。技科大にはこれに採用されなくても、TUT-DCフェローシップがあり、生活費を自分で賄うことができると思います。また、本学の博士後期課程の学生は、上述のどちらかに該当することになるため、大学からの追加支援で授業料が免除になります。

ギカダイに編入して以来、学生宿舎のG棟に住んでいるそうで、それのおかげもあって固定費はかなり安く抑えられているとのことです。

博士後期課程修了後の進路を教えてください。

具体的には定まっていませんが、企業の研究開発職を念頭に検討しています。

後輩に向けてメッセージを一言!

博士後期課程は将来のキャリアに大きな影響があるので、進学には覚悟が必要ですが、研究活動が好きで続けたいと思うのであれば、進んでいただいて大丈夫かと思います。少なくとも経済的な面は心配する必要ないと思います。

博士後期課程への進学は、経済的な面を心配する人もいると思いますが、実際に博士学生の方からの心配ないという言葉はとても心強いと思いました。
今回の取材では、博士学生の方からなかなか直接聞くことのできない貴重なお話をいただくことができました!


企画・制作:天伯編集部
取材:宮嶋 太陽、佐藤 徹大
ライター:大根田 みらの、葛西 彪斗
カメラマン:柄澤 幸太郎