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「本と大学と図書館と」-48- 公共施設の再整備 (Fmics Big Egg 2023年5月号掲載)

 老朽化した公共施設の再整備が,全国の自治体で盛んに行われています。単独での建て替えではなく,他の公共施設との機能集約と複合化,長寿命化と維持管理コストの縮減による枠組みで進行しています。地元の藤沢市でも,生活・文化拠点再整備事業に4市民図書館のひとつが含まれ,進行状況と計画内容を注視しています。図書館の社会的な価値が拡大することが期待できます。
 複数回参加したアイデア出しのワークショップでは,市の事業に深い関心を示す,意識の高い住民の多いことに気づく機会になりました。市民対応の一方で,公民連携の定番であるサウンディング型市場調査も,複数部署の総合調整のため企画政策課によって実施されています。施設整備や運営方法に関して,市場の動向や活用アイデアを把握し,民間事業者が参入しやすい公募条件を整理し,課題解決に向けて優れた事業提案を受けることが目的です。「地方公共団体のサウンディング型市場調査の手引き」(平成30年6月 国土交通省総合政策局)には,実施と結果公開のテンプレートまで用意されています。市Webサイトで,事業の進行状況と事業内容が,市民にも公開されています。構造も複雑で,読み切れない分量です。
 さて,民間の活用も良いのですが,自治体職員の高度な能力の有効活用こそ,「最小の経費で最大の効果」という地方自治法の趣旨に合致すると愚考します。また,今回の整備事業のその先の見通しも必要です。図書館協議会委員であり,図書館全体に関わる以下の3点を協議会の席で強調しました。調査研究は必須機能と考えます。
1)40万都市として地域に貢献する調査研究型の図書館をめざす(50万冊以上の蔵書,修士号取得の専門司書の配置)
2)図書館運営のDX化により将来の財政状況を反映した業務の効率化と高度化をめざす
3)地域住民の笑顔と人間同士の心の触れ合いを引き出すハイタッチな図書館経営をめざす(図書館の公設民営と地域住民のモチベーションの搾取は地域振興の趣旨に反する)
 参考にしたのは,愛知県の安城市中心市街地拠点施設(愛称「アンフォーレ」)を紹介した,岡部晋典編『アンフォーレのつくりかた:図書館を核としたにぎわいの複合施設』(樹村房 2023)です。以下の点などが斬新な内容でした。「図書館の伝統の尊重」(貸出)と「革新的な試み」(交流)を高次元で調和(p.ⅰ-ⅱ)。市長がニューヨーク公共図書館を視察して図書館の人を育てる効果に気付く(p.6)。民間委託での館員と利用者のやりとりでの深いコミュニケーションのなさの印象などから,図書館は直営で(p.7-8)。
 再整備を市政参加の好機ととらえ,一市民の地域改革の声が,市長や企画政策部門まで届くように頑張ります。皆さんも,再整備事業を,特に図書館を重点的にウォッチされるようお願いします。

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