本と大学と図書館と-29- スモールワールドなBOOK PARTY (Fmics Big Egg 2021年3月号)

 スモールワールド・ネットワークという用語に出会ったのは,ダンカン・ワッツ『スモールワールド・ネットワーク:世界を知るための新科学的思考法』(2004年 阪急コミュニケーションズ)においてです。理論的には,世界の人々が,それぞれ100人の友人を持っていれば,六次のつながり(100*100*100*100*100=100億)のうちに,地球全体の人口と自分を簡単につながります(p.40)。“人間関係のネットワークで,知り合いを数人程度たどれば,世界の誰とでもつながりがあるという,心理学者ミルグラムの1967年の実験による仮設で,知り合いの知り合いを繰り返し辿って行くと,6人目でほぼ世界中の誰とでもつながる「六次の隔たり」というスモールワールド現象です。この現象を解明した著者による本です。本の紹介はここまでです。
 さて,読者は,本を読んでいる最中に,気になったフレーズで立ち止まって考え,咀嚼し,妄想をも広げることができます。活字やWebサイトの情報も含め,文字全般では,自分主導で情報摂取を進行できます。メディアとしての特徴を考えると,映画やアニメなどの動画と異なる特徴です。ただし,動画も一時停止できますし,ライトノベルなどは一気呵成に読破したほうが爽快です。村山由香さんの「おいしいコーヒーの入れ方」全19巻を7巻で中断して書いていますが,どこまで読んだということが,紙の本では簡単にわかりますが,電子書籍ではわかりにくくなります。本の場合は,出版社Webサイトでの本の紹介,新聞や雑誌などの書評があるので,本の内容の概略や主張が把握でき,その本が読むに値するかどうか簡単に判別できます。メディア関連はここまで。
 さてさて,2月に初めて参加したFMICS BOOK PARTY は,一種の読書会といえますが,参加者の職業は高等教育サービスを大きく超えるものでした。年代が高校生から退職者まで幅広い点が刺激的でした。ネットワークとリテラシーについて大いに考え方をブラッシュアップできました。一冊の本を起点としたスモールワールド・ネットワークでした。
 最後,「届ける」から「得る」へ転換です。常に我々は,求める物事や情報を,環境や社会生活の中から得ています。情報探索行動では,寒いから厚手のコートを着て出かけるのは,環境モニタリングです。電車の吊るし広告やWebから,興味対象の本や情報を偶然に得るのは,情報との遭遇です。BOOK PARTY という興味対象を一冊の本として,問題意識を一つにしたグループ内での意見交換・議論は,スモールワールド・ネットワークによる問題解決となります。

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