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ローカルで仕事と暮らしをつなげる。とよなか地域創生塾第7期「DAY3(Bコース) 越境してみよう!」開催レポート

キックオフ、そしてまちあるきを終えて迎える、とよなか地域創生塾第7期 DAY3。今回より、「A:イベント・メディアコース」と「B:空間活用コース」の2つのコースにわかれて講座が進んでいきます!(DAY1やDAY2の様子を知りたい方は、とよなか地域創生塾のnoteをチェックしてみてくださいね。)

11/6(月)は、「B:空間活用コース」の「DAY3 越境してみよう!」を豊中は蛍池、みつか坊主で実施しました。

平日の夜にも関わらず、集まったのはおよそ30名!運営メンバーも含めると、40名以上が集まる賑やかな会となりました。

今回の講師は、阪急電鉄株式会社で働く永田賢司(ながた・けんじ)さん。

「仕事が活動につながることもあるし、プライベートでやっていたことが仕事につながることもある」

そう語る永田さんは、稀有な存在のように感じますが、実際にお会いするといたって自然体。どのように仕事と暮らしを「越境」しているのか、ますます気になります、、!

本レポートではポイントをギュギュっと絞ってお伝えするので、ぜひ永田さんの地域における仕事(活動?)術を盗んでいってくださいね。

文:鈴木芽生(すずき・めい)

今回の会場はお洒落なラーメン屋さん?

永田さんからのレクチャーをお届けする前に、ちょっとだけ会場の紹介をさせてください、、!

今回のとよなか地域創生塾(以下、創生塾)では、庄内コラボセンター「ショコラ」をメイン会場にしつつ、回によっては場所を変えて実施。豊中の新しい活動拠点にも出会うきっかけになれば、という想いから、豊中市内のお店や活動拠点にお邪魔する今回の形を取り入れています。

出張授業1回目となる今回の会場は「みつか坊主」さん。普段は発酵をキーワードにしたラーメン屋さんで、こだわりの味噌ラーメンを味わうことができます。

会場に着くと、店頭にはすでにとよなか地域創生塾のパンフレットと「本日貸切」の掲示が。イベント後には打ち上げ会場としても使用させていただきました。

蛍池駅東口を出て徒歩2分の距離にあるビルの2階に位置するみつか坊主。店内にはあらゆるところにこだわりが詰め込まれ、“ええ感じ”の雰囲気が漂います。

みつか坊主店主の斉藤さんが「名札取って行ってくださいね〜」と、会場に来た塾生のみなさんをお出迎え。カウンター越しに副日直の役割を果たしてくれていました。
イベント中もずっと厨房からあたたかく見守ってくれる斉藤さん。

豊中の蛍池で生まれ育った店主の斉藤さんは、「蛍池を楽しくしたい」という想いから、地元の蛍池でラーメン屋をはじめて16年になるそうです。蛍池でお店をはじめて5年ほど経ったタイミングで大阪市内にも出店。コロナ禍になったタイミングで原点に戻るということで、蛍池にある現在の場所にお店を構えられたのだとか。

みつか坊主から徒歩5分の場所には斉藤さんがオーナーを務める、完全セルフうどんで24時間ほぼ年中無休(月1休み)の「惑星のウドンド」もあります。

イベント開始前に斉藤さんとお話しさせてもらっていたのですが、講師としてお話を聞きたいほどおもしろい話ばかり。塾生のみなさんにも斉藤さんとつながってほしいという想いもあり、この場所をイベント会場として使わせていただきました。

音楽ライブを開催することもあるなど、さまざまな使い方ができるようなので、気になる方はぜひ、一度みつか坊主へあそびに行ってみてくださいね(その時はぜひラーメンもご賞味ください)。

コロナ禍で時間があったから、一から生ハムを作ってみたそう。店内にぶら下げて「頭上注意」という注意書きを掲示するという、あそび心がたまらないのです。

近況報告から伝わってくる熱量の高さ

斉藤さんに、場所(みつか坊主)の紹介をしていただいた後は、塾生のみなさん同士でチェックインをかねて近況報告。

「主催イベントを先週末に終えました!」や「イベントにボランティアスタッフとして参加してきました」など、前のめりな感じがひしひしと伝わってくる近況報告で、レクチャーを受ける準備万端です。

今回はslidoというライブアンケートサービスを使用して、塾生のみなさんからリアルタイムで質問を書き込んでもらう形式で進行します。

今回の進行を務めるのは、とよなか地域創生塾第7期の企画運営を担う株式会社ここにある代表の藤本遼(ふじもと・りょう)さん。もうそろそろお馴染みになってきたでしょうか?

事前に塾生のみなさんから、講師である永田さんに聞いてみたいことや今の気持ちを投稿してもらうと、「1番楽しみにしている回です!」「入社当時に描いていたキャリアと現在は違うんですか?」というコメントや質問が。

永田さんからの回答が気になる質問が出てきたところで、本題のレクチャーへと入っていきました。

入社当初はまちづくりから少し遠いところからのスタート

永田賢司(ながた・けんじ)
阪急電鉄株式会社 沿線まちづくり推進部 課長 1984年兵庫県加西市生まれ、大阪府枚方市在住。2009年阪急電鉄入社。宝塚歌劇、駅ナカ店舗開発・営業、駅ナカリニューアル企画などを経験。その後8年間、京都方面での高架下プロジェクト『TauT(トート)阪急洛西口』を担当し、2021年度「関西まちづくり賞」受賞。現在は、2023年4月に発足した「沿線まちづくり推進部」にて阪急沿線全体の活性化・まちづくり事業を担当。沿線の中心市街地活性化協議会などにも参加。関西まちづくり賞委員。その他「枚方モルックの会」代表、コワーキングスペース「ビィーゴ」アンバサダーなど。

まちづくり関連の講師として登壇することも多いという永田さん。普段は、事例紹介を中心に講義をされるとのこと。ですが、今回は「越境してみよう!」というテーマに合わせ、仕事や暮らしにおいてどのように動いているのか、パーソナルな部分も取り入れた内容をレクチャーしてくださりました。(贅沢、、!)

開催の数日前、永田さんの方から塾生のみなさんに、代表事例の「TauT阪急洛西口」に関する記事を共有いただいていました。永田さんからの「見ていただいた方、いらっしゃいますか?」という質問に対して、藤本さんからは「じゃあ、逆に見ていただいていない方、、?笑」というドキッとする投げかけが。
どっと笑いが起こり、一気に場が和みました。

永田さんが課長を務める、阪急電鉄株式会社(以下、阪急電鉄)の沿線まちづくり推進部は、2023年4月に新しくできたばかり。会社として、まちづくりに力を入れていく動きがあるようです。出身は兵庫県。神戸大学で土木分野の勉強をし、「関西のまちづくりに関わりたい」という想いから阪急電鉄に入社しました。

沿線まちづくり推進部課長となった現在は、阪急沿線でのまちづくりプロジェクトを進めたり、各地で行われているまちづくり系の協議会や委員会へ参加したりすることもあるそうです。プライベート(個人)の活動としては、住んでいる枚方市で「枚方モルックの会」の代表をされていて、「コワーキングスペース ビィーゴ枚方本店」のアンバサダーもしている永田さん。

「入社当初は、宝塚歌劇関連の部署へ配属になったり、流通部門で駅ナカ店舗を担当したりとまちづくりからは少し遠いところからのスタートでした」

2012年に流通部門に配属となり、駅ナカの広報や店舗誘致を行いながら、10年ほどかけて少しずつ新しいことにチャレンジしてきて、現在のように仕事としてもまちに関わるようになったのだそう。

「ここからは仕事とプライベートが混ざって、コトが起こってきた紹介をできたらと思ってます」と、「越境」というテーマを掘り下げてお話しいただきました。

高架下でモルックをやりたい!

プライベートの活動としてやっている「枚方モルックの会」。はじまりのきっかけは仕事で洛西口の高架下の企画担当になったことだったのだとか。

「まちづくりと言っているけど、人のタッチポイント(人と人とがつながる接点)がいるなあと。スポーツが1番ハードルが低いと思い、老若男女ができてかつ、高架下でできるスポーツを探していたらモルックに行き着いた」

仕事ではモルックをすぐにできなかったものの、やってみたい気持ちは心の中にまだ残り続けていました。モルックをしたいと思ってから1~2年経ったある日、知人に仕事の相談をしている合間での雑談で「最近なにやってるの?」という話題に。

すると、その知り合いからは「モルックやってんねん」との話が。その後すぐ参加したモルックの会で枚方在住の方に出会い、その日のうちに「枚方で一緒にやろうか」という話へ発展。1・2週間後には「枚方モルックの会」を立ち上げ、それから3年続いているのだそうです。スピード感におどろきですね、、!

高槻高架下での仕事のきっかけはプライベートでの勉強会

聞き手の藤本さんは、永田さんと一緒にお仕事もする間柄。社内有志メンバーが実施する勉強会にプライベートな活動として参加した際、永田さんから藤本さんへ「予算を使って高槻の高架下でなにかしてほしい」と声をかけたところからはじまりました。

高架下の企画を藤本さんに手伝ってもらって最初に実施したのが「コーカシタカイギ」。その企画で、(11/23に創生塾に登壇いただく)屋台づくりをされている今村さんと出会います。そのご縁で、共通の知人を含む4名で「前かごマルシェ」という活動を始めることになったのだとか。

その後、企画した高槻高架下でのマルシェイベントに出店してくれていた医学部生から「総合診療という分野がまちづくりにつながりそう」という情報を得た永田さん。なんと、その数ヶ月後には、勉強会で愛知を拠点に活動する総合診療科の先生と出会い、そのつながりで高槻の総合診療科の先生を紹介してもらうことができました。

医療をキーワードに高槻で新たなプロジェクトが生まれそうな予感がします。

偶然が積み重なって起きた出来事ではありますが、実はプライベートな場で「医療分野でなにかしたい」といろんな人に言い続けていたそうです。自分の中だけに留めておくのではなく、周りの人に「やってみたい」という想いを言い続けてみるのは大事なポイントかもしれませんね。

業務時間外での出会いはパーソナルな信頼関係を築くことができる

仕事でもプライベートでも関わりのある永田さんと藤本さん。2018年に初めて出会い、最初は藤本さんのイベントへ永田さんがプライベートで参加するなど永田さんからアプローチしていたそう。そこから徐々に一緒に仕事をする関係になり、今ではプライベートで飲み会をするなど友達のような関係になっているのだとか。

ビジネスライクにやってしまうと相手が何を考えているのかわからず、時間がかかってしまう。その一方で、パーソナルな信頼関係を築くことができれば、一緒に仕事を進める上でやりとりがスムーズにできるようになる。

「体感なんですけど、業務時間内で名刺交換をして話をするよりは、プライベートでラフに出会って話をする方が、個人的な想いをわかってもらえて、相手の想いもわかってパーソナルな関係を築けるんですよね」と、永田さん。

会社と地域を「越境する」永田さんの仕事術が垣間見えたシーンでした。

その後もたくさんの事例をご紹介いただき、この記事には書ききれないほど。

一見、はじめから順調に進んできたように見えるかもしれませんが、なにをすれば良いのかわからない期間が永田さんにもあったようです。

「とりあえずひたすらいろんなところに行って、自分の感度を高めたり、情報収集をしたりした。その時にいろんな人と出会って、自分の感覚が育っていきましたね。イベントに行くだけじゃなくて、自分でも小さな実験を繰り返して、多様な人との関係性を築いて企画・実践ができた」

イベントに参加したり、おもしろい人と出会ったりする中で、「これおもしろそう」とワクワクすることをストックしておくのもポイントなのだとか。参加者としてだけでなく、つくる側としても企画に関わることで、様々なプレイヤーの方とつながり、その中でストックしてきた「やってみたい」を小さく形にしていく。

小さな積み重ねが、現在の永田さんの「越境する」動きにつながっていることを実感できるお話でした。

仕事の関係ではなく、まずは友達になるところから

一通り、永田さんからの話題提供が終わり、塾生からの質問タイムへ。slidoに書き込んでもらったコメントや質問を拾いながら、一問一答形式で回答いただきました。

藤本さん「入社当時にやりたかったまちづくりのイメージって何かあるんですかね。そこからイメージって変わったり広がったりしたんですか?」

永田さん「土木の都市計画分野を勉強して入ったので、入社当時は新線とか新駅を阪急でつくって人が移動していくことと関西が盛り上がることに携わりたいと思って入った」

藤本さん「鉄道会社に入って、『新しい駅つくるぞ!』みたいなハード面でデカいことをしたいと思ってたんですね」

永田さん「今は、『オーダーメイドのまちづくり』って言葉が好きなんですけど、地域の特徴とかヒト中心のコーディネートをして、その場所その場所で考えていくようなことをやっているところで言うと、最初と全然違いますね」

藤本さん「それはなんで変わっていったんですか?」

永田さん「はじめは、まちづくりがよくわからないまま入社してましたね。そこから『まちづくりってなんだろう?』って考えるようになって、『まちでおもしろいことをしている人がいるからまちがおもしろいんだ!』って気づいていったんですよね」

まちづくりに対するイメージが大きく変わったのは、京都洛西口での企画がきっかけだそう。

人口が減少していく中で「関係性や思い入れがあるから関わる」というような「関係人口」と呼ばれる関わりを生み出すということが、本当の意味でのまちづくりにつながっているのでは、という考えに行き着いた永田さん。「まちづくりとは」という問いに向き合い続けてきたからこそ、その言葉に重みを感じました。

藤本さん「人間関係づくりの話なんですけど、出会った人とその後も継続的に関われるようなつながりづくりをするために意識しているポイントって何かあるんですか?」

永田さん「聞いたイベントはスケジュールにメモしておいて、聞いた施設はGoogleマップにピン留めしておくみたいなことはしてますね。聞いたことって忘れるので、そうやって思い出せるようにしてます」

藤本さん「確かに、永田さんよくイベント行ってるイメージある」

永田さん「あとは、呼ばれた場所には予定が入って行けなくなる前に、なるべく早く行くようにしてます」

藤本さん「すごい大事なことかもしれませんね。「行きます」って言って、本当に来てくれた人はめちゃくちゃ印象に残りますからね」

そして、塾生からは「永田さんはいい感じの人との縁が多いなと感じました」というコメントも。

藤本さん「仕事の話につなげる時に意識していることはありますか?という質問がきてます」

永田さん「多分、『仕事しましょう』ってなかなか言わないサラリーマンかもしれない(笑)結構じっくり、自分の軸の中で『一緒にやったらうまくいきそう』という関係を築いてから一緒に仕事をしてる。それまではフラットなお友達関係の方が多いですね」

藤本さん「プライベートでおもしろい人と出会っても、なかなか仕事につなげられない。どうしたらいいですか?って質問もありますね」

永田さん「プライベートから仕事につながっている事例はほんとに一握りなので、ストックを増やすしかない部分もありますね。あとは、仕事につなげるだけの意識はあんまりなくて、自分の中で『こういう世界観をつくりたい』っていうイメージを持った上でつながることを大事にしてます」

自分自身の「こんなことがしたい」という想いがあるからこそ、具体的な活動や仕事につながりやすくなる。人との出会いを広げていく中で、忘れずに意識しておきたいポイントばかりでした。

永田さんからの問いかけ「あなたは運命的にどんな使命が与えられていると思いますか?」

最後に、永田さんから塾生に向けて問いを用意していただきました。

「あなたは運命的にどんな使命が与えられていると思いますか?」

あなたは何がやりたいの?と聞かれることが多い中で、それに対する答えを見つける一つのきっかけとして、あえて視点を変えて考えられるような問いを設定してくれたのだとか。

先祖や家族の歴史、自分の人生の過去などいろんな角度から「自分が何に呼ばれているのか」ということを俯瞰して考えてみる。

永田さん自身、就活時に「(運命的に)関西がおもしろくなることをやらないといけない」と使命を決めたことが、物事をより広い視野で捉えてポジティブに生きることにつながっているのだそうです。

この問いかけを受けて塾生のみなさんからは、

・周りから「何かしている方が自分らしい」と言ってもらえるので常に何かに挑戦し続ける
・転勤族で地元がないからこその目線でまちづくり(地域)に関わる
・結婚から30年以上経ち、苦労もかけてきた中で何ができるかわからないけれど、大切にしていきたい
・閉じた家族関係に関わることで、新しい家族のスタイルをつくっていきたい など

パーソナルな部分にも触れながら、それぞれの想いをシェアしてもらいました。

自らの経験や過去から今を眺めてみることで、さまざまな「やりたい」を聞くことができました。

時には視点を変えたり、視野を広くしたりすることで、今まで気づいていなかった想いに出会えるんですね。ぜひ、みなさんも時間をとって考えてみてください。

自分の心地よい形でまちに、そしてヒトに関わる

最後は永田さんから、

「今回話したことは一つのやり方なので、参考にしてもらってもいいけれど、同じようなことをしなくてもいいと思ってる。それぞれの心地よいところを見つけてもらうのが大事だと思ってます」

という言葉で締め括っていただきました。

阪急沿線の高架下など遊休地の活用プロジェクトに関わる永田さん。豊中市内には阪急電鉄の駅が6箇所あります。このつながりをきっかけに、阪急やその周辺の空間を活用していくような動きができると、とてもおもしろそうです、、!

今回、会場として使用させていただいた「みつか坊主」さんもほんとに素敵な場所なので、どんどんコラボなどが生まれていくとうれしいですね。

次回はイベント・メディアコースのDAY3。今回聞き手役を務めてくださった藤本遼さんに、次回は講師となって「地域を編集してみよう!」というテーマでお話しいただきます。地域で数々のおもしろい企画をしてきた藤本さんは、どのように「地域を編集」しているのでしょうか。

ぜひ、続報をお待ちくださいね、、!

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