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『American Factory』マネジメントの米中摩擦

概要

『American Factory』Netflix Original
ドキュメンタリー 110分

中国の巨大企業がアメリカで工場を経営したら‥‥というドキュメンタリー。

オハイオ州でゼネラル・モーターズの巨大工場が閉鎖。その跡地に中国のガラスメーカー、福輝(フーヤオ)が工場を建設。失業者を雇い入れる福輝は救世主に見えたが・・・

中国とアメリカの文化の違いが浮き彫りになり、マネジメントは一筋縄ではいかない様が見事に描写される。

このドキュメンタリーの製作会社はアメリカ企業。そのため、アメリカに同情的な内容ではないか?という意見もあるものの、多文化マネジメントを学ぶ教材としては非常にわかりやすい。フィクションではなく、実際の取材に基づくドキュメンタリーという点も評価したい。

ちょうど異文化の違いを測るためのツールとして『The Culture Map』を勉強したばかりなので、この内容も踏まえて中国とアメリカの違いを考えることにする。

マネジメント体制の違い

本ドキュメンタリーで最も目立つのは、マネジメントの手法のギャップについて。福輝は曹会長による極めてトップダウンの会社で、従業員は彼に忠実に従う。

これは階層的で上意下達なマネジメント体制を好む傾向にある中国文化も大いに影響しているだろう。工場内には歴代共産党主席の肖像画が並んでいる描写もあり、マネジメント手法が中国の政治に影響されていることもわかる。

それとは反対に、どちらかといえば平等主義なマネジメントを好む傾向にあるアメリカ。ドキュメンタリーの中でアメリカ人労働者たちが労働組合の設立を目指して活動を行うが、マネジメント手法の違いによるフラストレーションもあったに違いない。

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出典
Erin Meyer著, 『The Culture Map』より Figure 4.1.

文化ごとに異なるマネジメント手法の違いについては以前こちらの記事にまとめたので参考にしてほしい。

ドキュメンタリー後半では、中国経営層とアメリカ人労働者の溝は深まり、労働組合結成をめぐって対立することになる。文化の違いに対して、互いに歩み寄ることができなかったことが根底にあるだろう。

どうすればよかったのか?

中国経営者層には二つ誤算があったと思う。

①アメリカ人労働者のコントロール手法の誤り
②アメリカ人労働者に効率性を求めすぎたこと 

この2点について『The Culture Map』の著者であり、多文化マネジメントコンサルタントのErin Meyerのアドバイスからどうすればよかったのかを考えてみた。

①の解決策:異なる文化圏からそれぞれ代表者を立てること
マネージャーは代表者間の調整に努め、代表者たちに自身の文化圏メンバーを説得してもらう。代表者は国際感覚に優れた人を選ぶのが吉。

中国経営層はアメリカ人労働者を直接的にコントロールすることにこだわった。しかし、アメリカ人の代表者による間接的なコントロールを目指したほうがスムーズなコミュニケーションが可能だったかもしれない。アメリカ人の文化を一番理解しているのはアメリカ人だからだ。

当初は福輝にもそうした思惑はあったのだろう。しかし、中国流やり方に固執し、結果的にアメリカ人マネージャーを解雇してしまった。これは悪手だったと思う。中国文化に理解のあるアメリカ人を新たにマネージャーとして雇用するという選択肢もあったのではないだろうか。

②の解決策:本当に多様性が必要だったのかを事前に慎重に検討すること
業務を効率的にこなすことが求められているのであれば、多様性よりも単一性の高い集団のほうが望ましい。目的と手段をよくよく考えよ。

アメリカ人労働者たちを単なる労働力として雇ってしまったことが根本の誤りがあったのだろう。異なる文化が交われば効率は落ちるもの。新たなアイデアを求めるときには多様性は重要だが、単純作業をこなすときには逆に足枷になることを理解しておくべきだったのだろう。雇った労働者に中国流のやり方を強制するのも正しいやり方とは思えなかった。

まとめ

Netflixオリジナルのドラマには英語学習の教材としてお世話になってきたけど、ドキュメンタリーについては観たことがなかったので興味深く見させてもらった。

せっかく定額でNetflixを契約しているのだからほかにも様々な国のマネジメントも覗いてみたいなと思った。

余談:ナイジェリアのマネジメント

DMM英会話のナイジェリア人講師が紹介してくれたNetflix Originalムービー、『Lionheart』。ナイジェリア企業の奮闘が描かれる。こうしたビジネスシーン中心の映画をもっと見てみたいと思う。

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