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#3【腰椎分離症】少しでも疑ったら整形外科の受診を勧めるべき理由

私が勤めている整骨院には、部活をがんばっている学生もよく来院します。いろんな症状の子がいますが、こと腰痛に関しては、私は整形の受診をしていない場合は、まずは整形外科に行ってくださいと言うことが多いです。

今回は、腰椎分離症を疑った際に整形受診を勧めるべき理由をお伝えします。


1.痛みが出ている頃にはすでに折れている可能性が高い

一番の理由はこちらです。
スポーツを頑張っている子が、腰が痛いと言って整骨院などに来院したときには、すでに腰椎分離症が進行している可能性が高いです。

腰椎の周りの組織は脊髄神経後枝の支配を受けています。椎間関節や関節包、多裂筋、棘間筋、棘間靭帯などには脊髄神経後枝由来の自由神経終末が多く分布しています。
一方で、腰椎分離症の骨折部である椎間関節突起間部には自由神経終末があまり分布していないと言われています。

自由神経終末というのは神経のAδ線維やC線維の先に存在しており、温度覚や痛覚を受け取る受容器が存在します。自由神経終末が多く分布しているということは、痛みに敏感な組織であるということです。

腰椎分離症の進行としては、まず関節突起間部にヒビが入る亀裂骨折が起こります。しかしこの時はまだ痛みが出ていない可能性があります。

その後亀裂が大きくなり骨折部の安定性が無くなってくると、骨折部や周りの椎間関節への応力が高まり、繰り返し応力を受けた組織に炎症反応が起こってきます。ここで初めて腰痛が出始めるのです。

2.完全に分離すると長期安静を余儀なくされる

整形外科的には腰椎分離症に対する特別な治療はありません。たいていが安静を支持されます。

腰椎分離症は患部の安静を保つのが最も重要です。骨折しても安静にしておけば骨は元通りくっつくからです。安静状態をつくるために、コルセットを巻く場合もあります。

しかしその安静期間の目安は、比較的初期の病状でも、2〜3ヶ月、進行期では4〜6ヶ月とかなり長期なものになっています。
スポーツを頑張っている子にとって、この安静期間はかなり辛いものがあります。

私たちが、ただの腰痛だと思って治療をしている間に病状が悪化してしまうとその子にとって大事な数ヶ月が奪われてしまう可能性があります。ですので、私は腰椎分離症を疑った際は迷いなく整形外科の受診を勧めます。

ただし、私たちにもできることはあります。腰部の筋をゆるめることはもちろん、胸椎や股関節の可動域を高めてあげることで、腰椎にかかる負荷を軽減させることができます。これは腰椎分離症の進行を抑えて治癒を促進できる可能性があります。

3.慢性的な腰痛になったり、将来的にすべり症に移行する。

分離症は初期であれば骨折部の癒合が期待できます。しかし、発見が遅れたりすると完全に癒合できない可能性もあります。これもなるべく早く整形外科の受診を勧める理由です。
一生、骨が折れたままになってしまうということです。

当然骨折部は不安定になりますので、腰椎周囲の筋や関節には必要以上の負荷がかかり、腰痛が慢性化してしまう可能性があります。

また加齢とともに、すべり症に移行する可能性も高まります。すべり症というのは積み木のように重なっている背骨の椎骨がズレてしまう現象です。
椎骨の中には脊髄や脊髄神経が通っているので、腰痛はもちろん下肢への神経症状も出てくることがあります。

分離症の既往があるすべり症を分離すべり症とも呼びます。
すべり症は骨の変形に近い現象ですので、それを元に戻すというのは手術でもしない限り難しいと思います。分離症を早期発見することは、将来的な問題を防ぐ意味でも重要だと私は考えています。

運動をしている中高生で腰痛を訴えている場合は、積極的に整形外科への受診を勧めましょう。私も昔は自分の力で何とかしてあげたいと思っていましたが、結果的に発見が遅れて症状が悪化してしまっては元も子もありません。
腰痛の治療をするのは、分離症のある無しを診断してもらってからでも遅くはありません。

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