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愛情胃下垂:『天才はあきらめた』

昔、母ちゃんが学校に呼び出されて、先生から「亮太君はすぐ嘘をつくんです」と言われたことに対して、「どんな嘘ですか?」と聞き返し、詳細を聞いての母親の第一声が「先生、それ傑作ですね。亮太、聞かれてすぐに何か言えるって、しかも作って言えるってすごいねぇ」というやり取りで先生を呆れさせていた。


山里亮太著『天才はあきらめた』、もう読みしたか?私、面白すぎて、かっこむように読みましたわ。それでも、うまいから!咀嚼しなくてもうまい!まじ天才だぜ!
(山ちゃんに叩かれる若者をイメージして書きました)

読了した人に、「この本のキーワードはなんだと思いますか」って聞いたら、「怨念」って答える人は結構多いんじゃないでしょうか。

いや、だって地獄ノートすごかったですもんね。

■地獄ノートとは?:
山ちゃんが、受けたひどい仕打ちとそれへの復讐(予定含む)を書き綴っているノート。ここに書いたことをガソリンにし、エネルギーを燃やして、日々の活動に邁進しているとのこと。


【例】
・バイト先で「お前は売れない」と言ってサインを破り捨てたジジイ
売れた後絶対にサインは断る

・養成所で「関東人おもんな」と言ってきた奴全員許さない。
売れて、すり寄ってきたときに名前忘れてる感全力で出す。

・カップルで彼女が僕に気づいてる横で「誰こいつ知らねえんだけど」を連呼していたバカそうな彼氏、写真を撮るとき全部目をつぶって下向いて撮ってやった。


ちいせぇ…ちいせぇよ山ちゃん…!

でも、こういう怒りで眠気をふっとばしてネタを書くとかさ…もう世界観としてはほぼ蛍の光じゃん、なんていうか…!

大好きだよ…!

(「売れる 売れたら本気でつぶす!!絶対に一生許さない」ってとこは、怖すぎです。ちょっと引いた。うふふ、ちょっとね。)

で、ですよ。
「怨念」の二文字を頭に浮かべちゃうよね~、って思うのは、もちろん盟友・オードリー若林氏の名解説の影響なわけですね。

あんなに素敵なご両親に愛されて育ったというのに、あの世の中への怨念はどこから来るのだ。
無法地帯のスラムで育っていないと辻褄があわない。


って紹介しておいてあれですけど、私は、若林氏とは違う意見を持ってます。

私は、人を恨みやすい人って二種類いるんじゃないかと思うんです。

「人に優しくされてこなかった 」人と、
「『利己って文字、あーたの辞書にある?』な聖人たちから、わんこそばよろしく愛情を盛られまくってきて、彼ら以外の人が出してくる一杯のそばじゃ、無理、少なすぎる、って思っちゃう愛情胃下垂」、の人。

私は後者なのですよ。そして、勝手に山ちゃんも後者だと思っている。

親子だって他人でしょう。
法律やら社会やら親類やらがぎゅうぎゅうに圧力をかけてくるから無理やりくっつけさせられている、ってだけで。

互いに選んだ訳じゃない、年齢だって離れてる、理想のスペックを備えていないことがざら、なのに。

それでも、無理やりじゃなくってくっついていられる例が、ほんの少しだけあるでしょう?本当にたまたま親だったり子だったりした人が、滝のような愛情を注いでくれる、なんてことがまかり通るなら、自分の選択として友人知人でいてくれる人が全然愛情注いでくれないわけないじゃん、そんなのおかしいじゃんって、思っちゃうじゃないですか?

だから、期待しちゃうじゃないですか。

してほしいこととか、たくさん言うじゃないですか。
返してくれるのが、普通だと思うから。

山ちゃんが相方に鬼のようなダメ出しをするのも、だからじゃないかな?って思うんです。
山ちゃんは、しずちゃんと南海キャンディーズをやる前に二回コンビを組んでたんですね。でも、どっちも解散してしまった。山ちゃんの才能を信じた優しい相方が、山ちゃんから出されるどんな難題にも立ち向かい、スパルタネタ合わせに身を削って、耐えて耐えて限界を迎えて、ぼろぼろになって解散するのです。読み進めるのが辛かった…。

でも、去る人のあとには必ずまたやってきてくれる人がいて。
例えば、それはしずちゃん。

山ちゃんはまた情熱を注いで、ダメ出しして、しずちゃんが引っ込んでしまって、山ちゃんは反省して「一人でもやれる」って違う方を見始めて、その頃しずちゃんがボクシングで全力の意味を知って、二人が少しずつ歩み寄ってきて。

そうして歯車がはまるときがやってくる。


めちゃめちゃ、気持ちいい瞬間でした。


本なのに音楽みたいだった。
スポットライトの熱さみたいなのが伝わってきた。

うーん、申し訳ないけど。これ読んじゃったらさ。

やっぱり人に期待し続けようって、思っちゃいますよ、そりゃ。



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