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【旅行記6-4】サイコロきっぷで行く隠岐の旅〜島後編〜

【前回のあらすじ】
隠岐諸島・知夫里(ちぶり)島から内航船で西ノ島に渡った私は,港の付近を散策したり,名物のサザエ丼を食べたり,レンタカーで景色の良い国賀海岸をドライブして楽しんだ.夕方,次の島へ渡るためフェリーに乗る.

10. 西郷で過ごす夜

17:27 西ノ島・別府港を離れる

2つ目の島・西ノ島の別府港を離れた私は,隠岐汽船のフェリーしらしまに揺られて,島前を後にする.別府港からは意外にも多くの乗客が乗ってきており,フェリーの中は横になるスペースが見つからないほどに混雑していた.意外にも,島前と島後を移動する需要は大きいのだろう.

この日は波も穏やかで,初日とは違って航行中にデッキに出ることができた.沈む夕日を眺めながら,1時間ばかりの船旅を楽しんだ.

19:04 西郷港近くの炉端焼きのお店にて

船は隠岐諸島で人口・面積ともに最大の島・島後島に到着した.島後島の玄関口である西郷港は,今まで見てきた島前の港と比べると大規模だった.フェリーターミナルは新しく,照明も明るかった.

島後島についたのは18時半ごろ.そろそろお腹が空いてきたので港の近くでご飯にすることにした.近くの炉端焼きのお店に行くと,定食のメニューがあったので,私は鯛の煮付けを定食にしてもらうことにした.鯛が想像以上に大きく,大満足の定食だった.

19:11 イカ焼きが到着

さらにイカ焼きを追加で注文.イカ一匹を丸々炙った豪快な料理で,墨ごとまるかじりして楽しんだ.弾力があってとてもおいしかった.

隠岐に来てからというもの,知夫里島の魚や西ノ島のサザエといった海の幸を味わい尽くしており,改めて離島の魚介の美味しさを噛み締めていた.

ご飯を食べた後はホテルにチェックインする.今夜の宿はホテルの「別館」扱いとなっており,一度本館でチェックインを済ませる必要があった.本館に立ち寄ってチェックインを済まし,本館の大浴場で入浴を済ませた.ホテルの中に人気がなく,私たち以外に泊まってる人がいるのだろうかという微かな疑問を抱きながらも,別館へと歩いて向かうことにした.

20:57 宿に向かう通りにて

島後島には雪が多く残っていた.島前三島の平地にはあまり雪は積もっていなかったが,島後では平地でも雪が多く,ところどころ圧雪で歩きにくくなっていた.いわゆる「ブラックアイスバーン」に足を取られて,転倒しそうになりながら,恐る恐る今夜の宿へと向かう.

21:01 この日の宿

港町の風情漂う通りを進み,一際新しい建物が見えた.ここが今夜宿泊する別館のゲストハウスであった.

21:15 ゲストハウスの共用スペース

ゲストハウスは共用スペースと4つの寝室からなる建物だったが,この日は私たち以外の宿泊者はおらず,実質一棟貸し状態だった.共用スペースにはキッチンとテーブル,大型のテレビが備えられており,開放的で過ごしやすい空間だった.(めちゃくちゃ寒いので長くはいられなかったが)

7:01 ゲストハウスから外を眺める

翌朝,目が覚めるとすぐ目の前には港町らしい光景が広がっていた.横一列に並んだ家々と船の情景が美しい.

7:29 朝食

別館を後にして,ホテルの本館で朝食をいただく.ホテルはやはり人気がなく,朝食会場も個室で,豪勢な朝食をいただいた.旅行支援でめちゃくちゃ安くなったのが申し訳なく感じるクオリティーだった.

私たち以外に宿泊者はいたのだろうか…?
なおホテルの名誉のために断っておくと,この日は平日である.


11. 隠岐の島一周ドライブ

島後島でのドライブルート(Googleマップ タイムラインより引用)

島後島はこれまで旅してきた島前三島と比べると圧倒的に広い.隠岐諸島の合計の面積が345.93平方キロメートル.島後島が属する隠岐の島町の面積が242.82平方キロメートル.実に隠岐諸島の70%を占める広大な島である.

面積の情報は,島根県HP「★隠岐島の現況」より引用,
https://www.pref.shimane.lg.jp/tourism/tourist/kankou/oki_shoukai/syoukai.html,2023年5月22日閲覧

そんな島後島を巡るのに欠かせないのがレンタカーである.一応隠岐一畑交通のバスも走っているのだが,本数が少なく観光にはかなり不向きである.そこで今回はレンタカーを使って島を一周することにした.

8:25 玉若酢命神社の鳥居

まず最初に訪れたのは,西郷の街からも近い玉若酢命(たまわかすみこと)神社.隠岐三大神社の1つに数えられる由緒正しき神社で,流鏑馬の神事でも有名である.

8:27 重要文化財に指定された随神門

平地でも雪が積もっていた島後島.境内も雪化粧されている.

8:28 境内にある八百杉

一際目を引く大きな杉の木は,樹齢千年をこえる八百杉という杉である.

8:29 隠岐造りの本殿

奥の本殿は,大きなしめ縄が美しい隠岐造りと呼ばれる様式で建てられたもの.こちらも国の重要文化財に指定されている.

玉若酢命神社にお参りした後は,隠岐諸島唯一の空港へ向かうことにした.

8:49 隠岐空港にて

隠岐諸島の空の玄関口・隠岐空港は,玉若酢命神社からも近く,こぢんまりとした空港だった.ここから同じ島根県内の出雲空港や,伊丹空港へ飛ぶことができる.隠岐から伊丹便が出ていることには驚いたが,また次に行く機会があれば利用してみたい.

8:52 隠岐空港の滑走路の様子

残念ながら時間帯的に飛行機の姿はなかった.

9:18 屋那の松原の舟小屋群

空港から少し先へ車を走らせると,舟小屋が立ち並ぶ素晴らしい景観を見ることができる.ここは屋那の松原の舟小屋群で,隠岐でも有数の観光スポットである.

10:05 那久岬にて

さらに車を走らせて,細い道を登っていくと那久岬に辿り着く.岬に出るとものすごい風で,車のドアが勢いよく閉まってしまうほどだった.岬の展望台から先端までは遊歩道を進んでいく.強風で髪がオールバックになりながらも先へ進む.

10:10 那久埼灯台にて

岬の先端の灯台に到着した.

10:12 日本海の波飛沫が美しい

灯台の先には荒れた日本海が広がっていた.奥に見えるのは島前の島々.この日は強風に加えて高波の予報も出ており,帰りのフェリーが予定通り出てくれるかどうか少し気がかりであった.

10:49 メインの道路から少し奥に入ったところにある深浦の滝

那久岬にて強風に煽られた後に,さらに車で北上していると,通りの奥に2本の滝が見えた.1本目の滝は白糸の滝といい,かなり遠くの方にあったが,2本目の滝には車でもアクセスできた.こちらは深浦の滝といい,白糸の滝と比べると小規模ながらも,美しい滝だった.

10:59 廃道を見つけたので散策

そんな2本の滝の近くには廃道がある.手前に車を停めて奥に進もうとすると,早速立ち入り禁止になっていた.手彫りのトンネルがそのまま残されており,すっかり道は荒れていた.

11:21 こちらは旧々道のトンネル

先ほどの廃道には立ち入りできなかったが,裏手に回ってさらに探索を進めることにした.現道のトンネルをくぐり,奥に進むと廃道への入り口があり,そこから少し進むとこのような場所にたどり着く.右手に見える穴は旧道の旧道のトンネルである.断面が小さいので,おそらく人用のトンネルだろう.波に侵食されて,道路の跡はもう残っていない.

11:23 奥には立派な覆道が見える

そんな旧々道の奥には,車が通っていた旧道の覆道が見える.

11:32 旧道・福浦トンネルの入り口

駐車場側に戻ってきて,こちらが旧道の福浦トンネルの入り口である.トンネル内に立ち入ることはできなかったが,トンネルの途中に光が差しているのがわかる.今ではなかなか見られない手掘りのトンネルが美しい.

11:49 水若酢神社

先ほどの旧道を離れて,少し内陸側に車を走らせると,隠岐国一宮である水若酢神社に到着する.こちらも隠岐造りの本殿がある国の重要文化財である.先ほどの玉若酢命神社でもそうだったが,隠岐の神社には謎の「若酢」の文字が入る.おそらく同じルーツをもつ神社なのだろうか.

11:31 境内に設けられた土俵

境内には土俵がある.水若酢神社では20年に1度,遷宮相撲が行われており,隠岐古典相撲を現代に伝えている神聖な土俵だとか.

11:53 右奥に見えるのが本殿

重要文化財の本殿は,少し奥に見える.横から見るとその荘厳な造りが見られるだろう.

11:54 明治時代の洋館が美しい隠岐郷土館

水若酢神社の隣には,かつての役場庁舎を移設して作られた隠岐郷土館がある.時間の都合で中に入ることはできなかったが,また機会があれば訪れてみたい.

12:17 白島崎展望台の近くにて

神社からしばらく車を走らせて,島後島の最北端に位置する白島崎展望台に向かった.白島崎展望台の近くには,日本が抱える領土問題を詰め合わせたような看板が建てられていた.(対馬って別に何もないよね…?)

12:34 白島崎にて

白島崎の灯台の近くには鳥居があり,鳥居越しに白島海岸の美しい光景が見られる.「白島」の名の通り,白っぽい岩が特徴的だ.岬の東西で岩石の色が変わっており,地層の違いが鮮明に見られる.行きに乗った「フェリーしらしま」の名前は,ここから取られたのだろう.隠岐を代表する素晴らしい景観だった.

白島崎を出てからは,島の東海岸をノンストップでひたすら進み,レンタカーを返却したのちに送迎で西郷港までたどり着いた.


12. 帰路

13:45 西郷港に設置されたゲゲゲの鬼太郎のオブジェ

西郷港にはゲゲゲの鬼太郎のオブジェが設置されていた.一応作者の水木しげるさんは鳥取の出身なのだが,隠岐は鳥取と島根の間くらいにあるので細かいことはあまり気にしないでおこう.

14:00 昼食の大盛りのカツ丼

西郷港近くのお店で少し遅めの昼食.ここでご飯を食べておかないと神戸に帰るまで食事のタイミングがないので,大盛りのカツ丼を注文してみると,店員さんから「結構多いですよ」と釘を刺される.それでも大丈夫だろうと到着を待っていると,パンパンのご飯が盛られたカツ丼が着丼した.食べ切ることはできたのだが,帰りの船で戻さないか心配になるほど満腹になった.

14:25 フェリーターミナルに併設された隠岐自然館

帰りの船の時間まで少し余裕があったので,フェリーターミナルの隣にあった隠岐自然館に立ち寄る.館内には隠岐の自然地形に関する展示から,隠岐に住む動植物の展示,隠岐に残る独特な文化の展示があった.展示の内容的には隠岐を巡る前に最初に見ておきたかったものが多かったが,隠岐で巡った観光地の復習には最適だった.

15:05 西郷港に着岸したフェリーくにが

隠岐自然館を出ると帰りの船が着岸していた.高波が心配されていたが,この日は通常通り運航されていた.初日と2日目に乗ったフェリーしらしまとは違い,こちらはフェリーくにが.2日目に巡った国賀海岸からその名が取られたのだろう.

フェリーターミナルで帰りの乗船券を発券するのだが,ここで初日に手に入れておいた「おき得乗船券」が役に立つ時が来た.おき得乗船券では,宿泊を1回,体験を1回すると帰りの乗船券が無料になる.そこで,帰りの乗船券は無料で引き換えることができた.

15:25 いよいよ船に乗り込む

西郷港からいよいよ本土へ向かう船に乗り込む.「おきをつけて」というユーモア溢れる幕に見送られ,3日間旅した隠岐を後にする.

15:41 西郷港を出港

そして船は西郷港を出港.船はゆっくりと旋回して,本土に向けて航行する.

15:48 西郷の街並みが遠のく

西郷の街並みがどんどん離れていく.昨晩は真っ暗だったので分からなかったが,西郷の港は奥まった入江に位置しており,天然の良港だった.

17:24 サイコロきっぷと帰りの乗船券

隠岐の島からサイコロきっぷで帰る乗客はおそらく他にはいないだろう

楽しかった隠岐の旅もこれで終わり.牛とタヌキの知夫里島も,絶景の国賀海岸と馬の西ノ島も,文化と自然が調和した島後島も,本当に満喫することができた.後はこの船に乗って無事に神戸に帰るだけ…

行きのフェリーで2等室のカーペットに横たわった結果,三半規管が狂わされて壮絶な船酔いをしたので,帰りは椅子に座り,スマホに保存してあった動画を見ることにした.動画を見ていると船の揺れもあまり気にならない.

行きの時と同様で,隠岐から本土までは2時間半もの時間がかかる.しかし,動画を見て気分が紛らわされたからか,意外にすぐ本土に戻ってくることができた.

17:57 七類港が見える

船の揺れが少し治ると,奥には七類港が見える.行きの船では鳥取県の境港から出港したのだが,帰りの船では本土側のもう1つの港・七類港に着岸する.七類港は島根半島の日本海側に位置しており,境港からは少し北に位置する.一応所在地は島根県松江市である.

七類港にて船を降りると,フェリーターミナルの前には松江行きと米子行きのバスが停車していた.私は神戸へ帰るべく,米子行きのバスに乗り込んだ.

19:23 岡山行き最終のやくも30号

米子駅では最終のやくも号に21分の好接続である.旧駅舎が解体されてこぢんまりとした仮駅舎の改札口を抜けて,最終のやくも30号に乗り込んだ.サイコロきっぷの特需は平日にも波及しており,車内は満員だった.

21:41 のぞみ78号に乗り換え

そして岡山では所定8分の接続.しかしこの日はやくもが3分ほど遅れており,急いで乗り換えた.のぞみ78号は名古屋行き最終ののぞみ.名古屋のぞみに乗るのは地味に初めてだった.

こうして隠岐から無事に帰ってくることができた.

全4回にわたってお届けした隠岐旅行記.あまり旅行先として名前の上がらない日本海の離島は,まだあまり知られていない自然と文化と海の幸に溢れていた.
次に行くときには,今回巡れなかった中ノ島や,隠岐の伝統行事・牛突きを見に行きたい

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