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【語学学習】よい英語発音など存在しない。発音を学ぶ上で考慮すべきことは何か

発音が良い、発音が悪いという説明は、だれもが当たり前のように行います。ただ、よい発音、悪い発音の定義(要件)が何かとか、そもそも発音によい、悪いがあるのかというのは、ほとんどの人が考えていないと思います。

前提:よい発音などない

発音によい悪いがあるとしたら、発音を比較して優劣をつけることができるようになるはずです。つまり、さまざまな発音を持つ人を100人集めたら、「発音よい人ランキング」の100位から1位を、客観的に定義できるようになります。

ただ、もちろん、そんなことはできません。発音の良し悪しをたった一つのものさしで並べてランキングすることは、不可能です。

発音の違いは、単なる個性です。上限の優劣ではなく、横方向に立体的に広がる幅のことで、単なる多様性にすぎません。また、多様であることはもちろんよいことで、それぞれのスピーカーの個性につながります。

ひどい訛りの発音について

とはいえど、ひどい母語訛りが意味の伝達に大きく影響する場合もおおいにあります。これについてはどう解釈すればよいでしょうか。

まず、なまりが理解にマイナスの影響を及ぼす際のメカニズムを詳細に理解する必要があります。発音が原因で意味伝達が阻害される理由は:

「ある音を介して意味を伝える際、聞き手が想定する音素、声調、アクセントなどが、話し手が想定するそれと異なり、認識のずれが生じるから」

です。ポイントは、ネイティブ発音なら伝わる、伝わらないという話ではなく、話し手と聞き手で想定するものが違うから、ということです。

キーワードはプロトコルの統一

プロトコルとは決めごとのことで、この言語でコミュニケーションをとりますよ、という暗示的な取り決めのことです。たとえば、日本で日本人に話しかけるときには、日本語プロトコルが暗示的に採用されます。「わたしはあなたにこれから日本語で話しかけます、OKですか、では始めます」とはいちいち言いません。

異なるバックグラウンドを持つ人同士のやり取りにおける、発音を原因とする意思疎通のずれを回避するためには、プロトコルを何に統一するかを意識する必要があります。これは個人的な意見ですが:

  • 相手の母語は何か

  • ホームかアウェイか

  • (意図的にせよ無意識にせよ)相手はどのアクセントに寄せているか

あたりを踏まえて、自分がどのアクセントを採用して話しかけるかを決めます。

たとえば、母語訛りが抜けない日本人に、米式のアクセントを採用して話しかけるメリットはありません。この場合、話者がサムライアクセントを習得しているのであれば、相手側に合わせてサムライアクセントを採用して話しかけるべきです。

また、スピーキングの逆再生がリスニングですから、アクセントを習得することで、そのなまりを組み込んだ発音に対するリスニング能力向上にもつながります。サムライアクセントを取得すれば、同時にサムライイングリッシュのリスニング能力向上にもつながり、アクセント持ちの日本人スピーカーの英語を理解しやすくなります。

よい発音ではなく、機能する発音

以上のことからもわかるように、複数のアクセントを使いわける技能を習得することには意味があります。たとえば、発音系YouTuberのだいじろーさんのように、複数のアクセントを使い分ける技能は、パフォーマーとしての側面だけではなく、実用面でもメリットがあります。サムライアクセントは決して悪いものではなく、日本人に聞き取らせるために有効な手段の一つとして解釈すべきです。

また、会話のキャッチボールごとに採用アクセントがコロコロ変わると、プロトコルが混線しますから、普通に疲れます。なまりを研究し、相手のアクセントに合わせて会話することは、アクセントを馬鹿にすることでも何でもなく、普通によいことです。

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