中学英語を「教える」のが一番難しい
中学生に英語を教えるのと、高校生やそれ以上のレベルの人に英語を教えるのとでは、どちらが難しいでしょうか。ほとんどの人は、中学生に教えるほうが簡単と思うかもしれませんが、僕は逆だと思います。
まず第一に、中学生のほとんどが、英語を学びたて、まったく学習歴がない人たちです。まっさらな状態からスタートするサポートをするわけですから、シンプルに責任重大で、誤った認識や知識を一度植え付けてしまうと、それがずっと尾を引くことになります。
ひとつ具体例で説明します。たとえば、see, look, watch はいずれも、中学で習う英語で、その使い分け方も一応レクチャーされます。よくある説明は、
look: 意識して見る
see: ぼんやり見る、自然に見る
watch: 動いているものを注意して見る
です。この理解であれば、中学のテストで出てくる問題に対応することは可能でしょう。ただ、問題はその先で、その後の学習人生で、
look for, look over, look through, look out, look into などのlook系の句動詞
see the difference, see the truth, see that節 などの表現
watch out, watchdog などの表現
に出会ったとき、最初の付け焼き刃的な説明ではまず対応できません。たとえば、look を意識して見ると覚えた人が、どのようにしてlook intoの(問題などを)調査する、というニュアンスにたどり着けるでしょうか。
look, see, watch の本来のコアは、
look: 首の動き
see: 視野に入る
watch: (具体的または抽象的な)動体を追いかける
であり、最初の説明はこれの一部分にすぎません。つまり、最初の説明は枝葉のほんの一部分を見せているだけで、本質を見せないという悪質な教え方になっています。
で、それなりに英語を知っている人にコアを教えるのは比較的難しくないのですが、教わる側が中学生となると話が変わります。中学英語を教えるという取り組みは、教える側の言葉遣いや教える順番にかなりの制約がかかった状態で教えるということであり、どう考えても難度は上がります。
にもかかわらず、中学英語を教えるのは高校英語を教えるより簡単、みたいな考えがまかり通っているわけですから、これは非常に問題だと思います。
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