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方法よりも大事なこと

結婚式のとき、当日のカメラマンを指名できるオプションがあった。カメラマンによって、料金も写真の雰囲気も全く違う。カメラマンの腕一つでここまで違うのかと驚いた。その中でもプランナーさん一押しのカメラマンがいた。
ポートフォリオを一目見ただけで、そのカメラマンを指名したいと思った。友達と向かい合って笑いあう花嫁と友人。自然な表情。当時の雰囲気までも写真に込めたようだった。写真に詳しくない私でさえ、魅力は十分すぎるほど感じられた。
結局そのカメラマンは日程が合わず指名できなかったのだが、そのときに見た写真の魅力は今でも記憶に残っている。

去年一眼カメラを買った。ZINEに写真が入ったらカッコいいとか、写真も撮れるライターになったらすごいとか、曖昧な勢いに任せて会社員最後のボーナスを使い切った。まだ大してうまくはないが、日頃から写真に興味を持つようになった。
本屋イトマイで「うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真」を買った。魅力的な写真を撮る方法を知りたかった。本には撮影の技術というより、ものの見方を書いていた。

映画を観ましょう、音楽を聴きましょう。漫画を読みましょう。小説もいいです。ゲームもいいです。それから美味しい料理を食べましょう。写真以外の趣味を持ちましょう。電車に乗ってあてもなく海に行って波の音を聞くのもいいです。スポーツでもいいです。美術館に行くのもいいです。

うまくてダメな写真と、ヘタだけどいい写真(幡野広志/ポプラ社)

写真の話なのに写真以外から学ぶ方法を書いているので、面白いなと思った。いい写真には技術だけでなく感性が必要なのだと思う。結婚式の打ち合わせで一目ぼれしたカメラマンには、技術もさることながら、人の心が動く瞬間をとらえる感性を持っていたのだろう。

写真だけでなく文章にも通じることだ。文章術の本を読んでも講座を受けても、いい文章が書けるとは限らない。もっといい文章が書きたいと思ったら、あせらずに感性を磨く機会をつくりたい。
もっといい作品を出したい、と思うたび、ついつい文章の書き方に手を加えたくなる。映画や旅、読書によって文章が目に見えて変わるとは考えにくいはずだ。しかし本当にいい作品を出すために必要なものは、文章術ではなく感性を磨く機会かもしれない。
すぐに効果を感じるものに目がいきがちだが、心を耕すつもりで写真や文章以外のことにも積極的に触れたい。

最近は料理の勉強をしており、この間はアジをさばいた。アジは不格好になってしまったが、それでもなんとか形になった。
その日食べたアジは、いつもより美味しく感じた。

中骨もちょっと焼けば食べられると思っていた


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