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アスパラガス、茹でるべきか、焼くべきか

アスパラガスのお話の続き。前回、茹で湯を味見すると、かなりの量の香りと旨味が液体に流出していることがわかりました。

アスパラガスの風味化合物は水溶性のため、茹でるという選択肢は合理的ではない、と主張するのはイギリスのシェフ、ヘストン・ブルメンタールさん。ヘストンさんは分子料理に精通したシェフです。分子料理の見地から導き出されたアスパラガスに最適な調理法はバターで焼くこと。

同じく分子料理に詳しいフードライターのハロルド・マギーさんは少し鮮度が落ちたアス パラガスは200ccの水に対して10gの砂糖を溶かした水溶液に、20分ほどつけることで失ったショ糖を補うことができる、と言います。鮮度のいい野菜を使うことは大事ですが、このようなテクニックも知っておくと役に立つでしょう。

蓋ができる鍋に中火でバターを溶かします。今回は有塩バターをつかいます。加熱し ながら塩味をつけられるからです。今回はアスパラガスが短かったので小さい鍋を使っていますが、蓋ができるフライパンで大丈夫。

アスパラガスを加えます。オリーブオイルも少量足します。参考資料ではヘストンさんはここで黒トリュフのすりおろしをいれていましたが、ないので省略です。

蓋をして弱火に落とします。このまま1分待ちます。はじめはバターに含まれる水分で蒸し焼きの状態にします。

1分経ったので蓋を開けました。次に蓋を開けた状態で1分から1分30秒加熱していきます。焦げ目をあまりつけないように、水分が減りすぎないように加熱していきます。

マッシュルームのスライスを入れましょう。さきほどトリュフの話が出ましたが、アスパラガスときのこ類は非常に相性がよく、お互いに引き立て合う関係性です。フランス人はモリーユ(編笠茸)とグリーン アスパラガスの組み合わせが最高と言います。

これはオプションですが黒トリュフオイルを少しだけかけました。トリュフオイル はオリーブオイルに人工的な香料を添加したものなので、眉をひそめる方もいますが、手軽な値段でトリュフ(風)の香りを楽しめる材料です。

有塩バターを使っているため塩味は適度についていますが、足りなければ塩を補いま しょう。チャービル(セルフィーユ)という繊細な香りのハーブを添えます。薄く焦 げ色がついたアスパラガスは茹でた場合と違って風味が流出していないため、より濃 い風味を味わうことができます。

同じイギリスの有名シェフ、クロード・ボシ(ミシュラン2ツ星の『Claude Bosi at Bibendum クロード・ボシ・アット・ビベンダム』のシェフで、野菜料理で有名なパリ、アルページュにも在籍経験のある人です)はバターで茹でるという調理法を薦めています。バターで茹でるというのは絶妙なアイディアです。試してみる価値はあるでしょう。

とこんな風にレシピをご紹介すると「じゃあ、野菜はみんな焼いたほうが旨いじゃない?」と思われるかもしれません。しかし、それは早計というものでなんでも焼けばいいというものではありません。風味化合物が脂溶性の野菜もあるからです。


水溶性の野菜 アスパラガス、ニンジンなど
脂溶性の野菜 サヤインゲン、ブロッコリーなど

というわけで、サヤインゲンやブロッコリーなどは茹でたほうが風味良く味わえま す。(参考『ブロッコリーは茹でるのがベター』)それぞれの食材に適した調理法の選択が重要ということ。野菜は肉などに比べると調理法の掘り下げがまだまだなので、研究する余地はありますね。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!