見出し画像

ふろふき大根の作り方

シンプルなふろふき大根で、冬の甘い大根を堪能します。

ふろふき大根は炊いた大根を味噌をつけて食べる料理。一般的には大根を下茹でしたあと、出汁で炊いていきます。下茹ですることで大根のアクが抜け、ふっくらと炊ける、と言います。本当でしょうか? 早速、実験です。

下茹でには『米の研ぎ汁』『水+米』などを使うのが一般的。一体、下茹でに意味があるのか〈A 水〉〈B 米(10g)+水〉〈C 米の研ぎ汁〉の三種類で比較してみます。

まずは水だけ。大根の大きさは揃え、部位はバラバラに入れています。水量は1Lです。

水+米です。調理科学の世界では米を入れることによって米に含まれるデンプン質を大根に含まれるジアスターゼが分解し、糖に変えるので甘味が増す、という風に説明されます。またデンプン質がアクを吸着するという風にも。しかし、ジアスターゼは50℃で失活してしまうため、本当に効果があるのか、というと疑問符も。

もっとも定番、と思われる米の研ぎ汁でも試してみます。こちらも米と同様の効果を期待していると思われますが、違いは出るのでしょうか。

すべて沸騰したら弱火に落として、30分間加熱しました。この後、よく水にとる人がいますが省略しています。

三種類、比較してみます。以前『里芋の炊き方』では米の研ぎ汁よりも水で煮た方が仕上がりが良かったのですが、どうでしょうか? 

重量を量ると茹でる前の大根よりも茹でた後の大根の方が重いことから、どうやら大根は下茹での過程でも液体を吸い込むようです。一番、甘いのは「米+水」でした。この甘さはお米の甘さですね。ジアスターゼの効果というよりも、おかゆを食べた時のような味もします。香りもお米の甘い香りです。

研ぎ汁はあまり効果がないばかりか、糠臭さのような嫌な臭いが残り、一番、ダメでした。水も悪くはありませんが「米+水」と比べると味が抜けたような印象があります。

次に下茹でした大根を昆布出汁で炊いてみます。

昆布出汁で10分間。

味見をしたところ、味の差はほとんどなくなってしました。どうやら昆布出汁を吸い込んだようです。

比較のため、直炊きはどうでしょうか。昆布出汁で40分煮てみます。

おや、大根自体は全然悪くない味です。

違うのは煮た出汁の味。こちらに直炊きではこちらに大根の風味が溶け出して、やや大根臭い汁になります。

まとめるとおでんのように他の食材と一緒に煮る場合は下茹でをしたほうがいいでしょう。出汁に大根の香りが出すぎないので、他の食材の邪魔になりません。また、その際はお米でも研ぎ汁でも水でもさほど味の差は(それほど)ないようです。ふろふき大根のように大根そのものを味わう料理の場合は直炊きでも良いのでは。

下茹であり、なしに関わらず、大根は昆布出汁と好相性。大根と被るくらいの水、そこに昆布を一欠片入れて、大根がやわらかくなるまで煮るわけですが……。

どうやらお米に由来する甘さと香りが大根をおいしくするようなので、大根を炊く時は日本酒を大さじ1入れた方がいいようです。これで直炊きの問題点である大根臭さも解消できます。沸騰したら弱火に落として、40分〜50分間煮ます。

煮ているあいだにふろふき大根に欠かせない味噌だれをつくります。

田楽みそ
 西京味噌 100g
 酒    30g
 砂糖   20g
卵黄   1個(お好みで)

卵黄を入れるとコクが出て「玉みそ」という名前に変わります。卵黄を入れると保存期間が短くなるので、ケースバイケースで。玉味噌の配合は「10:3:2」です。

計りにおいてどんどん計量していきます。

多少、ずれても誤差の範囲。

火にかけて練り上げます。『白味噌のお雑煮』の時に説明しましたが、白味噌は麹の匂いを飛ばすため多少、火にかけたほうがおいしくなります。

卵黄は火をとめて加えます。

予熱で火が入ります。

40分〜45分で炊きあがり。炊きあがりの時間は大根によって異なり、鮮度がいいほど早く煮えます。(水分が多いと熱伝導率がそれだけ上がるため、鮮度が良く水分含有量が高いほど早く煮えるため)必ず竹串を刺すなどして確認しましょう。ふろふき大根は箸で切れないとダメなので、煮る時間は結構かかりますね。

大根に白味噌をかけて出来上がり。

この大根の味と昆布出汁が混じった汁がおいしいので忘れずに少しかけてください。

最後、汁で味噌を溶いて飲むのが美味しいのです。

保存は汁につけて冷蔵庫で。五日間ほどは大丈夫。大根は下茹でしておけば小さく切って麻婆豆腐の豆腐の代わりに使ったり(つまり麻婆大根という感じ)クリーム煮にしたり、と様々な料理に使えます。時間がかかるのでまとめて煮ておきましょう。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!