見出し画像

家でつくるならヒレカツが簡単、という話

家では揚げ物は嫌、という方が多いようですが、実は揚げ物は簡単です。その理由は温度変化がゆるやかで、調整しやすいから。例えるなら安全運転でゆっくりと目的地にたどり着けるイメージです。そのわりには全面から加熱されるので、効率がとてもよく料理を一気につくるのにも向いています。料理屋さん風に言うと「油は仕事が早い」のです。

今日はトンカツを揚げてみようと思います。個人的にはロースが好みですが、今日はヒレカツ。

豚のヒレ肉は内臓側に2本ついている肉なので、特有の癖が出やすい部位です。解決策は良質な豚を選ぶこと。とはいえ国産の豚は大方、三元豚。飼料も均一化されているので「結構、みんなレベルが高い」というのが正直なところ。そのなかでも餌に工夫を凝らしている生産者の方が手がける豚はやはりおいしい。そういう豚をちょっと選ぶといいかもしれません。生産者の方の努力には頭が下がります。

一本、まるごと揚げてもいいのですが、家庭で簡単にやるなら2cm〜3cm厚にカットします。いわゆる一口ヒレカツ。

片面だけに塩、胡椒を振ります。ヒレ肉はやはり臭いがある部位なので、この段階で胡椒を振っておくのがポイント。あとでソースをかけたり、塩を添えたりするので、味付けは強すぎないように片面だけです。

小麦粉をまぶします。薄力粉でも強力粉でも差はあまりありませんが、プロは玉になりにくい強力粉を使います。

右側に溶き卵、左側にパン粉を用意して流れ作業で進めます。肉に卵をつけるときは箸(あるいは竹串)を使うのがコツ。卵が指についてしまうとそこにパン粉がくっついて、えらいことになります。右手の箸で肉に卵をまぶし、移動させたら、左手でパン粉をまぶします。右手は肉に振れないように。そうしないと手を洗うときに蛇口に触るのも難儀するので。

1cm〜1.5cmの高さまで植物油を注いだフライパンを中火にかけて、肉を投入して揚げていきます。初期温度は適当でも大丈夫なのですが、唐揚げのように冷たい油から揚げると底のパン粉が潰れた状態で固まってしまい、おいしくなくなります。160℃くらいまで温めてから肉を投入した方が無難です。

肉を投入することで油の温度は下がります。それが回復するまでの間にゆっくりと火を通す感覚です。

片面に揚げ色がついたら裏返し、ここで火を弱火に落とします。揚げ色がつく、ということはパン粉から水分が抜け(代わりに油が入り)、加熱されたということ。つまり、油の温度は焦げ色がつく170℃以上ということになるので、この段階になったら弱火にして温度を維持することに努めます。

両面に揚げ色がつき、油の泡が大きくなったこともわかります。これは肉から水分が抜けている証拠。つまり、火が入ったということです。

キッチンペーパーや網にとって、油を落とします。3分ほど放置して、予熱で火を通しましょう。

断面はピンク色。このくらいで中心温度63〜65℃くらいです。70℃に達すると真っ白になるので、それは火の通しすぎ。ヒレ肉は火を通しすぎるとレバー臭が出るので注意します。カラシとソースがやっぱりあいますね。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!