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アゲダの少女

ポルトガルでのひとり旅のお話。

アヴェイロから二両のローカル列車に乗り、アゲダにひとりで向かっていた。その列車の中で、車掌さんとトラブルにあった。

そのときにポルトガル語で車掌さんと話を付けてくれたのが、ハタチのその子だった。そして彼女は私に、地元であるアゲダを案内すると言った。

アゲダに到着してから帰りの電車まで小一時間を、英語の殆ど話せない彼女と過ごした。彼女は一生懸命に英語で、彼女にとって私は初めての日本人で、アゲダに来てくれて嬉しいと伝えてくれた。

私の手を引き、色鮮やかな傘のアートで飾られたアーケードをぐんぐん進んでいく彼女の姿は今でも鮮明に残っている。

今思えば、誰かが私に彼女を送ってくれたのだと思う。
6月まで都心で怒涛の就活をしていた私は、しばらく色づいた景色も人の温かさも忘れていた。
ポルトガルの田舎、アゲダで彼女は私にたくさん与えてくれたのだけど、一体私は彼女に何を与えることができただろうか。

いつかは私が、彼女のために。
今はその日を待っている。


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