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ビル人間

肌色の影が写ったかと思うと、ビルの窓ガラスが割れだした。建物の中で何が風船のようなものが膨らんでいるようだ。割れた窓から、もちもちした肌色が張り出た。屋上からは茶色の植物が、まるでタイムラプスで撮影したかのような速度で生えだした。一定のリズムで地面を叩く音も聞こえる。やがてビルが空中に上がった。ビルの下からは肌色の足が生えていた。この足がビルを持ち上げたのだ。30階建ての高層ビル、24階の東西の窓からそれぞれ腕が出てきた。最後に屋上から赤ちゃんが顔をのぞかせた。植物は、実は髪の毛であった。巨大でありながら赤ちゃんであることは一目瞭然だった。
胴体をビルで覆いながら、赤ちゃんは街を歩く。
まだ歩き慣れていないようで、しばしば尻もちをつく。その度に建物が倒壊する。立体駐車場やらコンビニやらがそこらじゅうでぺちゃんこになって煙をあげる。
赤ちゃんを遠くから見上げる男が2人いる。
「おうおうおうなんだありゃ」
「デカすぎるな」
「俺らも早く逃げないと」
「でもさ、子供のやることだよ、多めに見ないと大人の面目立たんよ」
ビル人間は街を破壊する。どうすれば大人になれるのか悩みながら。

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