見出し画像

旅先でかんがえこと-新潟②

本屋1:イタリアン3:カマキリ2


二日目、長岡駅と駅前のとおりを歩いて、午後のバスで帰る予定だった。

いつもは帰省すると、母親を運転手に車であちこち、駅やバスのりばへの移動も車をたよってばかりで、なんだかもうそろそろそういうのはやめて自立・・・自分で決めて移動しよう、というのも今回の旅のテーマのひとつにあったのだけれど、次の電車は一時間後、悩んだ末結局親に甘えるでもなく、助手席に乗り込んだ。


いつ通っても変化のない、壁紙のような8号線の風景。8号線は、かんがえことをするのにとても良い。

なにもない田舎で、必死に新しいこと・たのしいことを探し回るひとと、じぶんの周りにあるもので満たそうとするひとと。

私は完全に後者で、そういうのはスクールカースト的なところにも影響しているような気がするのだけれど、なぜだろう、上とか下とかにとらわれるようになってしまったのは、それからだろうか。


長岡駅で車を降り、ひとりになる。まずは駅ビルの中にある、文信堂書店へ向かう。

ごく普通の書店だけれど、郷土の本のコーナーがとても目立って見えるのは、帰省中だからだろうか。地元にいたらほとんど見ることはないだろう棚。


1Fのフードコートで軽く昼食をとる。フレンドのイタリアン。

キャベツともやしだけの焼きそばは、昨晩実家で食べた焼きそばと同じで。新潟は共働き家庭が多くて→忙しいから→夕食はカレー率が高い→カレールウ消費量が1位、なんていうのを聞いたことがあるけれど、焼きそばにカレーやミートソースをかけてしまうという行為、やはりずぼらというか、間に合わせというか、あるものでなんとかおいしく、というのが根源にはあるのかもしれない。うーん、ほめられていない気がする。いやイタリアンはおいしい。


駅ビルを出て駅前の通りを歩いてみる。

駅からのびる大通りから南側に入った通りには、はでな看板ばかりが目立つ、さびれた雰囲気の商店街。スナックの看板が延々ならんでいて、夜にはにぎわうのだろうか。歩いている人はほとんどいない。


北側の通りへ進むと、高くて柱も立派なアーケード。日曜日は営業しない店が多いのだろうか、シャッター通りと化している。やはり歩いている人はいない。1軒、おしゃれなカフェが静かに人を集めていた。

駅前の通りに本屋がつくれたら、などとふわっとかんがえて歩いてみたのだけれど、うーん、どうだろうか。


その後高速バスのりばへ行くために、バスに乗る。ここもいつもなら車を出してもらうところ。もう意地なんだろうか。電車どころかバスだって、1時間に2、3本。


バスとか電車とか移動の待ち時間は昔から幾度となく味わってきたけれど、そういう時間に限らず、こちらではいつも余白のような、はみ出した時間を通過するときがあって、このときも高速バスの予定時刻まで、カマキリの観察をしてすごした。

のりばに着くとまだ誰もおらず、先客はカマキリのみだった。

階段降り口の戸のサッシへ登りたいようだったけれどそこはつるつるだからむずかしいよ、と思ったらやはりあきらめて、コンクリートでできた床の上をゆっくりと這っていった。

カマキリが高い場所に卵を産みつけるとその年は大雪になる、というのを聞いたことがあった。

必死に上へ上へ向かって、今年はどこまで行きたかったのだろうか。

その後も床を徘徊したのち、金属の手すりのポールを器用にのぼっていった。


帰りのバスに乗ったのは15時。本を読んでいると時間はあっという間に過ぎ、17時もまわると外はまっくらで、何も見えなくなっていた。

このまま帰省の旅を終え、暗闇の中を日常へ、東京へ帰るのだ。

そう、今の私が ”帰る” のは、東京なのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?