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ファービー事件

こんにちは。

 以前に、ファービーというしゃべる人形が流行っていたのですが、あくまで事前にプログラムされた応答パターンに基づいたもので、25年たった今、AIの進化に驚きを隠せませんね。

 さて今日は、フ
ァービーの著作権を侵害したとして刑事事件になった「ファービー事件」(仙台高判平成14年7月9日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 アメリカの玩具メーカーのタイガー・エレクトロニクス・リミテッド社が販売していた育成型電子玩具のファービーは、世界的にヒット商品になっていました。あるとき、山形県にある会社がファービー人形の模倣品「ポーピィ」を販売していたことから、その会社の役員などが著作権法違反で逮捕され、検察が起訴しました。

2 検察側の主張

 ファービー人形のデザイン形態は、鑑賞の対象となる美的特性を備えており、美術の著作物にあたることは明らかである。著作権法上の美術の著作物の意義について明文の規定がなく、その意義はもっぱら解釈にゆだねられており、解釈として応用美術についての著作物だと認めたとしても、類推解釈にあたらない。

3 会社役員の主張

 ファービー人形のデザイン形態には著作物性はありません。だから、無罪になるはずです。なぜなら、アメリカで著作権が認められるものが、日本でも当然に著作権が認められるというのではなく、著作権法上の著作物に該当して初めて保護されるからです。著作権法は一品制作の美術工芸品に限って著作物に該当するとしているので、実用品のひな形は美術工芸品に入らないはずです。しかも、ファービーのデザインは、映画「グレムリン」に登場する「ギズモ」の電子玩具に酷似しており、独創性も認められません。

4 仙台高等裁判所の判決

 主文:被告人は無罪。
 
 『ファービー』の最大の特徴は、あたかもペットを飼育しているかのような感情を抱かせることを目的に、各種の刺激に反応して各種の動作をするとともに言葉を発することにあり、その特徴を有効に発揮させるため美感上、重要な顔面部分に玩具としての実用性及び機能性保持のための形状、外観が見られ、また、この形態には、電子玩具としての実用性及び機能性保持のための要請が濃く表れているのであって、これは美感をそぐものであり、『ファービー』の形態は、全体として美術鑑賞の対象となるだけの審美性が備わっているとは認められず、純粋美術と同視できるものではない。そうした点を抜きにして、その容貌姿態のみで美術鑑賞の対象となるというには困難があるといわねばならない。
 よって、『ファービー』のデザイン形態は、著作権法2条1項1号に定める著作物に該当しないと認められる。

5 著作権侵害と刑事罰

 今回のケースで裁判所は、電子ペット玩具「ファービー」人形の類似品を販売していた業者に対して、ファービー人形のデザイン形態の著作物性を否定した上で、著作権侵害罪が成立しないとしました。
 著作権法119条1項には、著作権を侵害した場合に10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処するとありますので、十分に注意する必要があるでしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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