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こんにちは。

 海遊館と聞くと、ワモンアザラシの赤ちゃんと飼育員のお兄さんとの動画がとても好きでね。

 youtubeではそんな海遊館の裏側を見せてくれるのですが、裁判所はさらにその裏の裏を見せてくれます。そこで今日は、海遊館事件(最判平成27年2月26日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 株式会社海遊館は、課長代理の2人が、1年半にわたって、部下の女性従業員に対して日常的にセクハラ発言を浴びせ続けて、その後にその職員が辞職していたことから、出勤停止及び1等級降格の処分を下しました。すると、その処分の重さに納得いかなかった課長代理らは、懲戒権と人事権の濫用を理由に、その懲戒処分の無効確認と出勤日数の減少で減らされた給料などの支払いを求めて訴えを提起しました。

2 課長代理らの主張

 女性従業員が明確な拒否の姿勢を示していなかったので、許されているものと思っていました。また、セクハラ防止に関して、会社の具体的な方針を認識する機会が無く、事前に警告や注意を受けておりませんでした。なのに、いきなり懲戒処分を下すなんて、懲戒権と人事権の濫用としかいいようがあらへん。

3 海遊館側の主張

 就業規則で「会社の秩序または職場規律を乱すこと」を懲戒処分事由と定め、事前にセクハラ禁止文書も配布していた。それにもかかわらず、課長代理らは「彼氏おらへんのか?」「結婚もせんでこんなところで何してんねん。親泣くで」「30歳は、22、23歳から見たらオバハンやで、もうお局さんやで、怖がられてんちゃう」「夜の仕事とかせえへんのか?時給いいで」(その他の過激発言を省略)という管理職としてあるまじき発言をしている。社内で多数の苦情も出ていたので、通常より厳し処分となるのは当然です。

4 最高裁判所の判決

 課長代理らは、営業部サービスチームの責任者の立場にありながら、女性従業員に対して極めて露骨で卑猥な発言等を繰り返し、上司から女性従業員に対する言動に気をつけるよう注意されていたにもかかわらず、女性従業員に対して強い不快感や嫌悪感等を与えていた。これは執務環境を著しく害する極めて不適切なものであるだけでなく、課長代理らは、管理職としてセクハラ防止のために職員を指導すべき立場にあったにもかかわらず、職場内で1年余にわたり多数回のセクハラ行為等を繰り返したことは、その職責や立場に照らしても著しく不適切なもので、その行為が企業秩序や職場規律に及ぼした有害な影響は看過し難い。出勤停止処分は懲戒権を濫用したものとはいえず、懲戒処分を受けたことを独立の降格事由として定めている資格等級制度規程に基づき行われた降格についても、社会通念上著しく相当性を欠くものではないので人事権を濫用したものとはいえない。よって、課長代理らの請求をいずれも棄却する。

5 言葉によるハラスメントで懲戒処分

 今回の事件では、会社側が身体的な接触を伴わない言葉によるセクシャルハラスメントについて出勤停止や降格処分を下したとしても、重すぎる処分ではないということが明らかになりました。
 また、普段から会社内でセクハラ防止対策を講じて置くことも求められていますので、相談窓口の開設やセクハラ予防研修を実施しておく必要がありますね。

では、今日はこの辺で、また。


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