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マリカー事件

こんにちは。

 今や世界中の誰もが知っているマリオですが、ファミコン版スーパーマリオの6-3ワールドのミステリーを解明できる人は少ないのではないかと考えている松下です。

 さて、今日はマリオの格好で営業をすることが問題となった「マリカー事件」(知財高判令和2年1月29日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 株式会社MARIモビリティ開発(裁判開始後に「マリカー株式会社」という名前を変更している)は、東京で「マリカー」という商号で小型カートのレンタルビジネスをしていました。その際に、マリオやルイージらの衣装のレンタルも行っていました。その後、MARIモビリティ開発は、「マリカー」の商標登録までしていたのですが、任天堂はその営業について不定競争防止法と著作権法に基づいて、「マリカー」の標章の使用禁止と、キャラクター衣装の貸し出し禁止、さらに5000万円の損害賠償を求めました。

2 任天堂の主張

 「マリカー」という商号を、チラシやウェブサイト、公道カートの車体に使用しており、我々が長年の営業努力によって獲得した営業上の信用にタダ乗りしており、我々の営業上の利益を侵害している。「マリオカート」という我々が持つ周知かつ著名な商品等表示と「マリカー」はかなり類似しており、マリカーのレンタル事業が我々の事業と関係があるかのような誤解を抱かせるものであるので、不正競争行為である。
 また、MARIモビリティ開発は、マリオのコスプレをしている外国人たちが公道カートで走行している様子などを撮影し、それを店舗のSNSやYoutubeにアップーロードすることで、我々の有する著作権を侵害している。さらに言うと、従業員がマリオたちのコスチュームを着用して、案内すること自体も我々の著作権を侵害している。

3 MARIモビリティー開発の主張

 マリカーのレンタルビジネスの需要者は、訪日外国人や在日米軍関係者または在日大使館員に限定されています。外国人にとって「マリカー」には、周知性や著名性はありません。また、ウェブサイトには、「マリオカート」と無関係である旨の打ち消し表示をしているので、混同のおそれもありません。マリオたちの特徴は顔の部分になるので、洋服の部分のみでは商品等表示にあたりません。さらに、マリオのコスプレをウェブサイトにアップロードする行為が、マリオの著作権を侵害するものではありません。

4 知的財産高等裁判所の判決

 「マリカー」の需要者には訪日外国人が多く含まれていることが認められるが、ここには日本人も含まれており、かつ日本語を解する外国人も一定程度含まれていると認められる。「マリオカート」は、日本における著名な商品等表示にあたり、現在でも継続している。日本国内の需要者の間では「マリカー」は、「マリオカート」と類似しているといえる。
  また、マリオとヨッシーのコスチュームを着用した人物の写真を店舗のSNSに掲載したり、公道カートツアーの様子をYouTubeにアップロードすることは、単なるカートレンタル事業の内容を説明するものではなく、自己の商品等表示として用いているので、不正競争行為にあたると言える。
 よって、マリカーの標章をウェブサイトなどで用いることを禁じ、任天堂に対して5000万円の損害賠償を支払え。

5 著作権侵害は認められていない

 今回のケースでは、世界的に有名な「マリオカート」と「マリカー」が類似し、マリオやルイージのキャラクターコスチュームを貸し出して公道カートレンタル事業を営むことが不正競争行為とされました。マリオカートの世界を体験したい場合には、ユニバーサルスタジオジャパンのアトラクションを利用するのもいいかもしれませんね。

 ただし、コスプレ自体が著作権を侵害するかどうかについては、判断がなされていませんので、今後も類似の裁判に注目していきたいと思います。

では、今日はこの辺で、また。


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