ユキトビウオの大群

雑草の髪の少年と
その相棒アイウェオは
飛空船にあった
脱出用ボートを用いて
麓の街を目指していた
動力源は
少年の胸から出た火花渦
そんな少年の髪は
こころなしか
深い緑から黄色がかって
枯れているようにも見えた
外気温の影響もあるのかもしれない
その最中
雪壁の立ち並ぶ森へと滑り込むと
至るところから
翼を携えた魚のような生き物が
数え切れないほど
空へ舞い上がっては
地面に消えた
アイウェオに
あれはなんの大群か尋ねると
ユキトビウオ
とだけ言って
周りの景色に
目をぎょろぎょろさせた
まだ登っている
ふたつの陽の光を受けて
さながら空に架かる
虹のように
ユキトビウオのウロコと羽は
煌めきを放っていた

◆ 戦利品 ─【見えない景色】

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