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「クリエイティブ入門」原野守弘は、とても示唆と視点に満ちた素晴らしい一冊でした。

元電通で、現「MORI 」の代表をつとめる原野さんが書いた「クリエイティブ入門〜ビジネスパーソンのために」は、「クリエイティブ」をテーマに書かれた多くの書籍の中で、群を抜いてよく書けた本だった。「ビジネスパーソンのために」という副題がついているので、これは、クリエイティブ産業向けというより、クリエイティブやクリエイティブ思考を苦手と考えている一般ビジネスマン向けという本なのだが、30年以上クリエイティブ産業に関わりクリエイティブ思考の意味と価値をを自問自答し続けてきた福田にとっても、雲が晴れるような気持ちいい読後感を与えてくれる内容だった。

小学校の同窓会で昔の友達に会った際、デザインを考える仕事をしていると伝えると「お前はなんか遊びみたいなことしてていいな」って言われたことがある。あるいは。企画を考える仕事をやっていると話したら「それは、一生やるにふさわしい仕事なのか」と言われたことがある。世間の「クリエイティブ」ということに関するイメージは、なんかあいまいな夢を語るような仕事、霞を食って生きるような仕事、そんな風に思われているふしがある。広告会社のようなクリエイティブ企業ですら、クリエイティブの仕事を「論理性に欠ける頭の悪い仕事」って蔑むマーケッターがいたりする。デザイン思考、アート思考。その重要性が問われながらそれが日本の企業に根づきにくい背景には、「デザイン」や「クリエイティブ」に関する日本独特の偏見や無理解、誤解があるのだと思う。

この本の立ち位置は決して、一般的論理思考に喧嘩を売るものではないし、それを否定するものでもない。著者も論理的思考と流れに基づいた企画書でプレゼンに臨んでいると書いている。「ビジネスパーソンとクリエイターの違いは、人間観だ」という論にたち、ビジネスパーソンは人間を「論理的な生き物である」と仮定するがゆえの罠に陥っていると指摘。その上で、感情という因子の重要性を、著名なコンサルタントや脳科学者の研究を引用しながら丁寧に説いている。クールに冷静に。決して他者をディスることなく。

「人間は感情でしか動かない」「大脳新皮質の自分」「自分の大脳辺縁系」「感じる脳」「すべては、個人的な『好き』から始まる」「クリエイターというのは、オリジナルで独立した存在ではなく、人類が脈々と共有する『巨人』の肩を借りる倭人に過ぎない」「偉大なブランドは、自分のことではなく、自分の愛するものについて語る」「人間の集団や組織を成立させるのが『愛』と『尊敬』というふたつの感情のプログラムだ」。ブロックごとに印象的なキーワードを散りばめながら、「クリエイティブ」がもつ本質的な意味と役割を淡々と解き明かしていく。次の日本をリードしていく優れたリーダーになりたいと思うなら、世界を動かす仕事がしたいと思うなら、みんなこの本は読んだ方がいい。

電通という会社には、時に、とてつもなくクールで賢い人が存在する。多分自分は、自分を育ててくれた博報堂の人間が書いた書籍よりも、電通の社員・卒業生が書いた書籍をたくさん読んでいる。そして重要な知恵をもらっている。今後、自分の周囲の後輩や生徒にも、この本をすすめようと思う。あ、そうだ。この本が面白いよって教えてくれたのは、カヤックの代表の柳澤くんだった。次にヤナくんに会う時には、教えてくれたことの感謝を伝えなくては!!!ありがとね。

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