地域で本をつくる②「きっかけは、Uターン時の違和感」
地域の人たちと本づくりチームを結成し、地元の本を一緒につくる――。
なぜこんな本づくりを思い描くようになったのか。
それは私が地元の兵庫県加東市にUターンした2014年頃にさかのぼります。用事で市内の施設に訪れた際、ふと見覚えのある雑誌に目が留まったのがすべてのきっかけでした。
そのとき見かけた雑誌とは、誰もが知る国内の旅行雑誌です。ところが、全国誌のはずなのに「加東市版」と銘打たれていることに気づきました。さらに有料の雑誌なのに「FREE」と記載されています。不思議に思って手に取ると、さすが大手のメジャー旅行誌です。モデルさんを起用し、市内の観光スポットや飲食店、土産物などがきれいに紹介されています。
あとで分かったのですが、それは補助金を活用して制作するご当地雑誌でした。メディア企業が自治体から予算をもらい、その地域のご当地版をつくって納品する補助金事業です。メディア企業は予算のついた仕事なので、リスクなく売り上げを立てられます。対する自治体は予算を支払う対価として一流雑誌の地域版が手に入り、地域のブランディングに役立てられます。
ウィンウィンです。
ともにメリットがあるし、制作のプロが地方に入り、クリエイティブの力でその地域の魅力を引き出そうとする努力はあっていいと思います。実際、手に取った冊子は本物とそん色のない出来栄えでした。
ですが、私は違和感を覚えました。地元の人たちが主体となり、伝えたい内容や表現について知恵を絞っていないと感じたのです。見た目はすごくきれいなのですが、さーっと車で通りすぎただけのような、地域の表面をなぞっただけのような誌面づくりにどうしても思えてしまったんです。
厳しくいうと、大手のブランド力にあやかり、制作から編集まで丸投げしてしまっている(ように感じる)地元の主体性のなさ、「考える」という尊い営みの欠如に対して違和感、というよりも残念な気持ちを抱いたのです。
その「違和感」はずっと頭の片隅に残り続け、やがて「ある思い」に変わっていきました。
多少粗っぽくてもいい。地元の人たちと一緒に本づくりをしたらどんな媒体ができ上るんだろう――という思いです。
その思いは当初は妄想に過ぎなかったのですが、やがて「ジモトブックス」という本づくりの企画に変わっていきました。
そして初めて「ジモトブックス」について公につぶやいたのが2年半前のこのポストです。
さらにその半年後の2021年12月15日、地方でのクリエイティブワークの在り方を考える『ローカルクリエーター』という自社本を出しました。
この本の中で、スタブロブックスの出版計画のひとつとして「ジモトブックス構想」について触れています。
この『ローカルクリエーター』の発売から約2年を経た今、ジモトブックス構想を本当に動かすときがやってきたのでした。細かな変更はあるものの、大枠は『ローカルクリエーター』に書いたこの内容と相違ありません。
地域の人たちと本づくりチームを結成し、地元の本を一緒につくる――。
ジモトブックスの制作はまだ始まったばかりです。まずは創刊号となる加東市版の制作を通して地方発、地域発の本づくりの在り方を地元の人たちとともに考えていきたいと思います。
そして加東市版の完成後は、ジモトブックスをシリーズとして全国各地に広めていきたいと思っています。「私の地元でも地域の人たちと組んで本づくりをしてみたい!」そんな熱い思いをもつ方はぜひ気軽にお声がけください。全国各地のプレーヤーの皆さんと組んで、各地の特色ある地元本を一緒につくっていけたらと願っています。
このマガジンでは、ジモトブックスシリーズを立ち上げるまでのプロセスをできる限り可視化し、みなさんと共有していきます。少しでもご興味があればフォローしていただけると嬉しいです。
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