上越妙高駅からの景色に惹かれて30代から登山を始めた話~後編~

前回では、上越市に出かけたものの、初日のドタバタ(ほぼ自分のせい)のおかげで疲れ切ったところまで書いた。
今回はその続き、どうしてこの旅が、登山を始めるきっかけになったのかを書こうと思う。

2日目の旅程・高田城見物は無事消化できたものの、何だかよくわからない寂しさが胸の奥に溜まって、一向に気分は晴れないままだった。

これは出かけた先がどうこうではなく、長い間どうにか誤魔化し続けていた寂しさ、不安、苛立ちなどが、一気に表面に出てきてしまったのが、たまたまこの時だったのだろうと思う。

こういう時は温泉にでも入ってゆっくりするのがいいのだけど、前編でも書いたように、出発前に深く考えていなかったせいで、温泉はおろかスーパー銭湯もバスを乗り継がないと無い。

ただ、この時は本当に、心身共に冷え切っていたので、半ばダメもとで、高田駅前の観光案内所で「近くに銭湯はないですか」と聞いてみた。

すると、「上越妙高駅まで行けば駅前にある」と教えてくれたのだ。

これが、その時教えてくれた「釜ぶたの湯」。

建物はそれ程大きくないが、落ち着いていて、建物の色合いが優しい。

中の雰囲気も、適度に明るく、リラックスできる程度には静か。

そして、お湯は丁度いい温度で、芯から温まる。

僕の感想には、ようやく銭湯を見つけられた感動でかなり上向き修正されているところがあるにしても、ここの温泉はお薦めなので、近くによられたら是非入ってみて欲しい。

そこで体が温まったところで、今度は近くに見慣れないものがあった。

見た目はただのコンテナ群なんだけれど、よく見るとその中から明かりが漏れ、人の話し声、笑い声が聞こえる。

実はこれ、来るまで自分も知らなかったのだが、コンテナを改装して作った、新しいコンセプトの飲食店街「フルサット」だった。

今でもそうだが、僕は一人で変わった飲み屋に入ってみるのが好き、しかも風呂上がりで夕飯時とあっては、見逃す手は無い。

そのうちの一つの店で新潟のお酒を飲み、お腹も膨れて、ようやく一心地ついた気分になって、店の外に出た時。

上越妙高の駅前からも見える、遮るものがない中で、堂々と佇んでいる妙高山が目に飛び込んできた。

その時、「ああ、あの山に登って、帰りにこの温泉に入って、その後ここで飲んだら最高だろうなぁ」と思った。

それが、「山に登ろう」と思ったきっかけだったのだ。

ものすごく俗な感じで、ガッカリされたかもしれない。

が、その俗な希望に引っ張られて、僕は貯金を惜し気もなく注ぎ込んで登山道具を集め、登山サークルに入って基礎を学び、ソロで幾つもの山に登り、その山の高さは回を増すごとに、1,500、2,000、2,500と高くなり、とうとう友人と富士山に登るまでになった。

何が人を夢中にさせるのか、人をとことん引っ張っていくのは何なのか。

そういう事は、本当に始めてみないとわからないと思う。

今月末のエクスプレストレイルは、その上越妙高の駅からスタートし、青田難波山から棚田を経由して、また駅に戻ってくる。

徒歩旅行だった為に見られなかった、駅から離れたあの広々とした土地を、自分の足で走って確かめられると思うと、滅茶苦茶ハードになる事は分かり切っているのに、今からワクワクしている自分がいる。

その時は、あの温泉とあのコンテナ街に、時間内完走したという満足感tp一緒に行きたいな、と思っている。



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