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バイバイ・ブラックバード

昨日から体調を崩している。わかりやすく、心と体は繋がっていて、感情のあらかたが持っていかれたところに、もともと罹患していたであろうウイルスが侵入してきて喉や胃を痛めつけているのだろう。

痛みは生きている証明。眠れずに朝まで痛みを感じながら涙を流して音楽を聴く。飲めるならアルコールを飲みたいが、それに逃げるのも嫌で、傷口を噛むように音楽を聴く。

優しいがなり声を何度も何度も思い出す。宇宙の話が好きなロマンチスト。ピース・マークだけで全て片付ける奴に飽き飽きしていたはずなのに、誰よりも愛を歌うようになっていたロッカー。

何度も自分達を鳥に喩えて歌を歌っていた。鳥たちがどこにいくのか、そんなことはわからないけれど、疲れて羽を休めた鳥がまた飛ぶ景色は、その先をいつも予感させてくれて、ずっとそれは途切れずに続いていくだなんて錯覚していたんだ。

思春期から今までずっと、音楽は当たり前のように私の近くにあって、その最初の方からずっと鳥たちの歌は私の胸の中にいた。しばらく聴かないことがあっても、また思い出したように戻ってくる。渡り鳥みたいだなって思うんだ。

虎は死んで皮を残し、人は名を残すというけど、作家は作品を残して、ミュージシャンは曲を残す。鳥たちの歌は語り継がれて、歌い継がれていくんだって信じているし、何度だって覚えている人たちが歌っていくんだろう。この国の音楽にとって消えない傷跡のように残り続けていく。

何かが起きてしまっていても、何も知らないまま時間は過ぎてしまっていて、知っている人たちだけが悲しみに耐えていたりする。目には見えないところで、世界は動き続けている。

悲しいと思って、泣き喚いても、どうにもならないことばかりだけれど、どうにかしたくて泣いているわけじゃない。どうにもならなくても、涙がこぼれてしまうことはある。

追悼も、お悔やみも、ご冥福を祈るも、まだしたくないし、信じたくない気持ちしかないけれど、たくさんのひとのかなしみや、在りし日のエピソードが流れていて、らしいよなぁとか、みんな辛いのに日々を転がしていて偉いよなとか思った。

しんみりされるの、バカ仕方ねえだろって言って申し訳なさそうにビール飲む人だろうから、しんみりしないようになれるまで、音楽を浴びるほど聴くよ。

見上げても見えない星になったなら、いつかまた落ちてきて音楽鳴らしてほしい。そう願って、とりあえずのバイバイを言うよ。

さよならロッカー。ありがとう。


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