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思いやり

通学に2時間かかるため、電車で本を読む。

ある日いつものように座って本を読んでいると突然、隣の人が立ち上がった。

「どうぞ座ってください」。

声をかけたのは私の目の前に立っていたおばあさんだ。

「大丈夫ですよ」とおばあさんはきっぱり断るが、

「次の駅で降りるので」と隣の人は去っていった。

私がすぐに気づくべきだったと後悔し、同時に隣の人の気の利いた受け答えに感心した。

あっさり断られてしまえば、私ならうろたえてしまうだろう。


彼氏と神戸の南京町へ行った。

有名な豚まん店には長蛇の列ができている。列に並び、いよいよ順番という時、前にいた一人の中学生が列を抜けようとしている。

豚まんは三つからでないと買えないが、彼はそれを知らず、一つを買おうと並んでしまったようだ。

彼に豚まんを分けてあげると、とても感謝された。


だが、思いやりが仇になることもある。

東日本大震災が起こり、多くの嘘がインターネット上に出回った。

中学生だった私は不特定多数への配布を求める「チェーンメール」を信じてしまった。

回さないと不幸になるという内容ではなく、節電を呼びかけたりと、被災者を支えたいと願う人の心を揺さぶる内容だ。

疑いもせず友達に一斉送信したが、余計な混乱を招いてしまい反省した。


災害時にネットで出回る情報の真否を見抜くのは難しい。

簡単に共有できる仕組みがあると、危ないことはすぐに知らせたいという気持ちから、不確かな情報を拡散してしまう人は大勢いるだろう。


人を思いやるのは難しい。

豚まんを美味しそうにほおばる彼の笑顔を思い出すと、行動せずにいられなかった彼氏の行動は、素敵な思いやりに値する。


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とぅるもちが就活時(大学三年生のとき)に書いたものです。

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