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Event Report | 不動産×スタートアップが共創する未来のはなし。 Presented by Airbnb Japan

すまいとくらしの未来を語る「philosophy」。今回はn’estateチームメンバーが参加したトークセッションの一部をレポートします。

世界最大級の旅行コミュニティプラットフォーム「Airbnb」の日本法人「Airbnb Japan」によるイベントが2023年10月13日、有楽町で開催されました。当日は、業界の第一線で活躍するデベロッパーやスタートアップ企業のプレイヤーが集合。その中で行われた「スタートアップと協業したデベロッパーの新規事業、まちづくりの取組について」と題したパネルディスカッションにn’estateチームリーダーの櫻井も登壇し、不動産業界で新規事業に取り組む3社それぞれの立場から、事業実現のためのプロセスやハードル、外部パートナー選びの心得やスタートアップに期待することなどを語り合いました。

登壇者紹介

写真左から:田 学培さん | 三菱地所株式会社 協創推進営業部 主事、櫻井 公平 | 三井不動産レジデンシャル株式会社 事業創造部 主管                                                               
写真左から:原田 果意さん | 福岡地所株式会社 事業創造部 スタートアップ投資担当、大木 健人さん | 株式会社デジタルガレージ Onlab Open Innovation/Fukuoka統括(モデレーターとして登壇)

世の中がシームレスになってきている今。
働き、遊び、住まう「場」のあり方にも変化が求められている。

大木さん(以下、大木):みなさま、こんにちは。今日は三菱地所、福岡地所、三井不動産レジデンシャルと、各社の新規事業の先頭に立ちながら、スタートアップ企業とシェアリングエコノミーやホームシェアリングとしてのシステムを構築されているプレイヤーのお三方にお越しいただきました。まずは、それぞれに自己紹介からお願いします。

田さん(以下、田):三菱地所 協創推進営業部の田と申します。三菱地所はオフィス事業を中心に知られていると思うのですが、住宅、商業施設、ホテル、空港、あとは海外での投資マネジメントなど、不動産にかかわる事業には全体的に関わっています。

最近のトレンドとして、いろいろなところで働き、滞在し、遊んで、食べてと、世の中がシームレスになってきている中で、オフィスだけ、住宅だけとアセットタイプ別で縦割りで魅力をお伝えするのが難しくなってきていると思っています。そこで、それらの垣根を超えて、社外で独自性のあるコンテンツやノウハウを持った企業と協業することで、あたらしい取り組みを生み出そうとしているのが、私の所属する協創推進営業部です。Airbnb Japanさんとは2022年から包括連携協定を締結していて、今年の7月には本格的に協働した取り組みもスタートしました。

櫻井:三井不動産レジデンシャルの櫻井と申します。事業創造部という部署で「n’estate(ネステート)」という、すまいのあり方をもっと自由にするための新規事業を立ち上げて専任で担当しています。

先ほど田さんも世の中がシームレスになっているとお話されていましたが、昨今はすまいや働く場所、泊まる場所という「場」の境界線もどんどん曖昧になってきています。ライフスタイルが変化してくれば、住宅のあり方も当然変わってくると思うのですが、いきなり住んでいる家を解約して地方に移住できるかというと、なかなかできない。そこで、今のすまいはそのままに、二拠点目、三拠点目を自由に使えるようなサービスとして生まれたのがn’estateです。

事業を推進する上では、三井不動産グループのアセットやリソースを活用しながら、社外の魅力的な企業と組んで事業を行っています。例えば、都市型の滞在拠点として「パークアクシス」という賃貸住宅。契約形態は普通借家契約で、契約期間は2年間が原則になるのですが、matsuri technologiesさんやUnitoさんのような不動産テック系のスタートアップ企業と協業させていただくことで、家具家電が一式付いた部屋をオンラインで契約して、最短一泊から使える仕組みが実現しています。

そのほか、拠点を活用しやすくするためのソフトサービスの充実にも力を入れています。そのひとつが、お子さんを保育園に預けながらワーケーションができる「n’estate with kids」プラン。山形県の「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」、長崎県の「カラリト五島列島」といった地域に根ざした魅力的な滞在施設と組んで、地方行政や地元の保育園のお力もお借りしながら実施しています。

大木:多拠点居住、僕もやってみたいなと思っているんですけれど、やっぱり子育て世代だと子どもの保育園をどうしようという課題があって。保育サービス付きのプランというのは、かなり刺さりますよね。うちの子どもは小学1年生になってしまったので、小学生を対象にしたプランもぜひご検討よろしくお願いします(笑)。

原田さん(以下、原田):福岡地所の原田と申します。福岡に根付いたデベロッパーとして、複合施設「キャナルシティ博多」のような商業施設の開発、都市開発などを行う企業です。私が所属する事業創造部では、ひとつは商業施設やオフィスビル、ホテルといった既存のアセットと、テナントを繋いで新規事業に取り組むこと。もうひとつが、スタートアップ企業と連携しながら、例えばデジタル技術を推進することで建設工事の現場でより快適に生産性を高めていくといったソリューションを生み出す事業。あと、福岡市はスタートアップ支援にもすごく積極的な街で「Fukuoka Growth Next」というアクセラレーション施設を運営されているのですが、そこの支援もしています。この三位一体で、私たちは「福岡をもっと面白く!」というコーポレートメッセージを掲げ、その実現のために社内外問わず地域の橋渡し的な存在を担っています。

パートナー企業との信頼関係が、スムーズな事業推進の鍵。

大木:お三方とも、ありがとうございました。ここまでのお話を受け、会社の方針と自分の関心領域とをアラインさせながら事業の矛先を決めていくことが、新規事業推進における大きなポイントなのかなと感じましたが、いかがでしょう?

田:まず今日ご一緒しているおふたりの立ち位置と少し異なるのが、私の部署の役割として、何か新しい事業をつくって推進して自らゴールまで走り抜けるというスタイルではなく、先ほどご紹介させていただいたような既存の事業部と伴走しながら何ができるかなと考えることがメインになります。「めちゃくちゃいいパートナーさんがいらっしゃったけれど、三菱地所グループ内でどうだろう」と提案を持っていく。まさにグループのみなさんが当部のお客さんのような位置付けです。なので、こんな言い方すると怒られちゃうかもしれないですが、本当に端的に言うと、自分が好きな、やりたいものじゃないとなかなかこの熱量って伝わらない(笑)。 それこそ、私は10年来のAirbnbさんのファンだったので、自分の担当する業務領域とどう紐付けるかを考えて「地域創生」と言うキーワードだったらイケるのでは?と取り組んでみた結果、今この場にいる状態です。
 
大木:やはり個人としてのモチベーションがないと、ですよね。櫻井さん、先ほど「地域の魅力的な企業と組む」というキーワードもいただきましたが、パートナー選びの基準のようなものは何かあるのでしょうか。
 
櫻井: 地域の魅力的なプレイヤーとどう組むか、どうやって知り合うかというと、大きくふたつあります。ひとつは、先ほど田さんも言っていましたが、自分が本当にいいと思える相手かどうか。「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRACE」は、地方創生モデルとして非常に注目されている企業で。運営会社の代表である山中大介さんは三井不動産出身で、私の同期ということもあり、本当に信頼しているパートナーです。「カラリト五島列島」の代表の平﨑雄也さんも東京建物というデベロッパー出身の方で、同社に在籍されていた頃から仲が良かったんですよね。ボードメンバーのひとりに三井不動産レジデンシャルのOBもいたりして、こちらもすごくやりとりがスムーズ。立ち上げたばかりの新規事業で、まさに走りながら試行錯誤してサービスの輪郭をデザインする上では、コミュニケーションコストがあまりかからないという点も、パートナー選びの理由としてひとつあるかなと思います。

 もうひとつは、三井不動産が新しく竣工させた「東京ミッドタウン八重洲」という複合ビルの中に「POTLUCK YAESU」というNewsPicksと運営している場所があるのですが、そこが地方創生×イノベーション創発の拠点に育ってきています。定期的にカンファレンスなども開催して、地域経済を牽引するキーパーソンがどんどん集まって来るので、そこで出会った面白い人たちとどういう取り組みができるかなというシナジーを探りはじめているところです。

 大木: ありがとうございます。どのようなパートナーと組むにしても、カウンターパートに立つ方が信頼に足る人柄なのか。逆に、相手も「櫻井さんとだったら…!」みたいな関係性の上で成立しているところは、ものすごくあるんだろうなと思いました。
 
櫻井:そうですね。お相手にもそう思っていただけるようにすることは、とても大事だなと思っています。
 
田:櫻井さん、シンプルに都市型の賃貸住宅のモデルって儲かってます?
 
櫻井:すごい直球ですね(笑)。現在はトライアル運用中ということもあり、利益の出ている物件もあれば、そこそこかなという物件もあります。何が「儲かっている」の基準かというと、基本的に「パークアクシス」シリーズは賃貸住宅ですので、マーケットで価格が決まるんですよね。その賃貸住宅に家具家電が全部付いて、一泊から使えて、敷金や礼金もない。とても使い勝手のいい、便利さが売りなんです。その分、賃料が上がるのは当たり前なのですが、そのセットアップした手間賃分をしっかりと回収できるかが、ひとつの基準なんですよね。
 
大木:面白いですね。どの程度のグレードの家具家電を入れるか、トースターや炊飯器は入れるかとか、その辺のことで何がどう変わるのかを考え出したら変数が多すぎて、なかなか社内に説明しづらいところもありそうですね。
 
櫻井:まさにそういった部分は、まだ三井不動産グループの中にノウハウがないので、それこそ一緒に組ませてもらっているmatsuri technologiesさんやUnitoさんとやりとりしながら「じゃあ、この賃料ならこの程度かな」という目安を細かく設定していますね。

田:今、僕が質問した趣旨ともちょっと絡んでいて。じつは私も既存の物件に(日割り料の仕組みを)導入したいんですけれど、弊社グループの管理上の規定を変えるのはハードルが高くて。今日お話を聞きに来ている同業のみなさんの中でも、そういったお悩みをお持ちの方はいらっしゃるはずで、そこを私もまだ突破し切れていない。だから、Air bnbさんとリリースした「(仮称)豊島区池袋4丁目計画」では、賃貸借と日割り利用のハイブリット運用の仕組みを最初から織り込んだプランをやることにしました。なので、今の櫻井さんのコメントをうちのグループの面々にも聞いてもらって「やっぱり既存もやるべきだよね?」と主張したい!

櫻井:なるほど。ピアプレッシャーをかけていたんですね(笑)。

田:ちょっとずつ、ちょっとずつ(笑)。それこそ5、6年前、私がAirbnbさんのサービスを利用してキューバの市街地から外れたところによく分からずに泊まったことがあるんですけれど、そこでの体験がとても面白かったんです。そういうことを日本に来てくださる方々にも体験してもらう機会を、三菱地所のアセットを使って実現できたら嬉しいなあと思っていて。となると、やはり新築だけではなく、既存の物件も活用することで、いろんなところに行ってみてもらう機会が増えると考えています。

大木:田さんが取り入れたい、日本で「こういう体験セットだったら借りたい」と思うものって、何かありますか?

田:個人的にあまり行ったところのない街では、宿の半径500mくらいを中心に(周辺情報)を見る。日本って、半径500mの範囲でも世界の方々に楽しんでもらえる要素をたくさん持っていると思うんです。食事も美味しいし、人も優しい。私たちには当たり前のコンビニや、回転寿司だって海外の人から見たらエンターテイメントのはずなんです。それをもっと知ってもらう機会を増やすためにも、住まいをもっとシームレスに提供したいなと思っています。

大木:ありがとうございます。原田さんに伺いたいのですが、今お話しにあったように宿泊施設周辺でローカルならではの観光資源に出会えるといった点では、福岡はいろいろなものにアクセスしやすい街ですよね。その辺り、福岡地所さんではどのような事業展開、展望を描かれているのでしょう?

原田:現状、弊社の(ホテル事業やレジデンス事業における)自社物件は、まだほとんどなくて。まさにみなさんがお話しされていたように、社内のレギュレーション、法規制、行政とのセッションの問題、地域住民の方々への影響や気持ちはどう扱っていくべきかなど、今後着手していくためにいろいろと勉強中です。ただ、ご認識の通り福岡はコンパクトシティで、インバウンド旅行者がここ(東京、有楽町)にいらっしゃる数倍は来られているとい思います。

大木:福岡の街中を歩いていると、インバウンドの人がめちゃくちゃいますよね。

原田:そうなんです。我々の物件で、博多区の中洲というエリアの真ん中に「キャナルシティ博多」という商業施設があるのですが、平日から韓国語、中国語、タイ語が飛び交っています。コロナが明けてインバウンド層が戻ってきたことも考えると、単純にマンションの一室を貸すよりも、もっと海外の方々にとって体験価値のあるもの、博多や中洲に来たからこその体験をしてもらえる何かを提供したいと考えています。

大木:福岡のリッチな観光コンテンツや体験をセットにした宿泊、僕もぜひ使ってみたいですし、ぜひ協業できるパートナーを見つけていただきたいです。

デベロッパーとスタートアップ。同じ視点に立って共にハードルを超えていくスタンスと熱量が未来をつくる。

大木:トーク時間が限られていて、なんと早くも最後の質問になってしまうのですが、今回スタートアップ企業の方々も多数来場されていることもあり、Airbnbさんをはじめとする外部のサービスやリソースを活用して新規事業をつくる際にパートナーに期待するもの、選定の基準を各社それぞれに改めてお聞かせいただけますか?

田:先ほどのお話しにもあったように、代表やスタッフの方々の「人柄」というものは、パートナー選びにおけるファーストステップかなと思いつつも、個人的に大事にしているのは「なんかいいな、かっこいいな」と素直に思えるかですね。見た瞬間に「これって、同業他社と何が違うんですか?」みたいに聞いていたら、その時点ですでに熱量はかなり低い。まず自分自身が「いいっすね!」って惚れ込んで、そこから社内にベクトルを向けていくことが多いかなと思うので、あまり実績ばかり気にしても仕方ない。「いや、これから実績を出すからスタートアップやっているんだよ」という話なので(笑)。

櫻井:大企業が陥りがちな話ですね(笑)。

田:そこはもう全力で応援のスタンス。同じ視点から社内を説得しにいくスタンスは大事かなということは意識してやっていますね。

大木:櫻井さんはいかがですか?

櫻井:この業界に十数年居て思うのは、不動産事業って川上から川下までかなり完成されているビジネスモデルなんです。土地を買う、建物を建てる、貸す、売る、その運営管理をしていくという型がある。その部分って、ある意味で既にカッチリと固められているから、あたらしいことを成し遂げよう、といったメンタリティってあまり生まれなかったりするんです。でも、それこそn’estateも最初は自社グループだけでやってみればできるんじゃないのといった意見もあったのですが、人的リソースも足りなかったし、運営のノウハウもなかったこともあり、やっぱりあたらしいことを前向きにやってみようとmatsuri technologiesさんやUnitoさんと取り組ませていただいています。

そのときに、どんな人たちと組みたいかという観点でいうと、不動産業界の慣習や実態にある程度明るいというのは、正直あるかなと思います。「テック系だから、不動産のことはよく分からないんだけれど、こういうことがしたい」と言われても、実際なかなか難しい。そこである程度の知見を持った上で提案していただけると、私たちも「いいじゃないですか! やってみましょう!」と前向きに考えることができますね。

大木:なるほど。原田さんはいかがでしょう?

原田:私のキャリアが銀行マンからのベンチャーキャピタルで(投資業務を)ずっとやっていたこともあり、スタートアップ企業が外部に発信している情報をもとに「うちの会社だったら、これできるんじゃないか」といった仮説を立てて逆にこちらから突撃していくケースの方が個人的には多いですね。起業家やスタートアップのメンバーって少数精鋭でやられているので「時間をいただいている」という認識を持って、1時間でも30分でも、ミーティングの中で徹底的に仮説を議論しまくることにフォーカスしています。我々は福岡に根付いた地域のデベロッパーなので、福岡のスタートアップ、事業シナジーの高いものであれば、あたらしいものをつくる、会社として変わっていくべきということは経営層のトップまできちんと理解してくれていて、それをオープンに話せるような風通しのよさはある環境だと思っています。

田さんや櫻井さんのようにビジョンがあって、これいい!というファーストインプレッションが大事よねという話も個人的には好きなので、今日そういったお話も聞くことができて非常によかったです。

大木さん:ありがとうございます。ぜひ、これを機会にお三方はもちろん、スタートアップの方々ともネットワーキングの時間を活用して、ご親睦を深めていただければなと思います。それでは、このセッションについてはこれにて以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。

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