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地球人33周年記念日の豊島美術館

5月にオランダに遊びにいった帰りのKLM。隣の席にいた人は、建築家兼写真家だった。飛行機で出会う人は大抵、その場しのぎの差し障りない会話で終わる。でもそいつは、質問に対する答えをいちいち真剣に返してくれて、しかもそれがすごく哲学的でウィットに富んでて、めちゃくちゃ面白くて会話に夢中になった。ドイツに家はあるんだけど、仕事で世界中飛び回ってる模様。「日本に10日。次はカナダに1週間。その次はルーマニア。それでベルリン。そのプロジェクトが終わればモナコ。それからニューヨークで...」ほーう、めっちゃおもろいやん。

「それだけ地球を旅してきた中で、いちばん好きな場所は?」って聞いたら

「豊島美術館。」って即答。

建築系の知識が全然なくて、「ん?なにそれ?」っていったら「日本人なのに本当に知らないの?!!」ってびっくりされた。有名な日本人建築家がつくったらしい。「まあ、とにかく行ってみてよ」とのこと。

8月25日は地球人33周年記念だった。この誕生日には、この星の美しさを特別に味わってみたいな、って思った。それでふと、あの建築家のことを思い出して、豊島美術館に行くことにした。

建築物に入る前に、スタッフのおねーさんに「静かにご鑑賞ください」っていわれたのに、ドーム型の白っぽい建築物に入った瞬間、あまりにもそこが異空間で、「すごっ」って思わず声が出ちゃう。

コンクリっぽい地面には、ところどころ小さな穴が空いていて、そこからランダムに水が溢れてくる。地面の質感はものすごくマットで、まるで雨露が睡蓮の葉っぱの上をダイヤモンドみたいに転がるように、コロコロと重力に任せて自由な方向に転がって行く。まるで生きてるような水の玉は、絶え間なく動きながら、ひっついたり離れたり、流れ星みたいに尾を描いて流れていったり、風が吹いたら光を含んだままぷるぷるゆれたりしてる。

建築物の中では、小さな音も反響するから、同時に四方八方から同じ音が聞こえてくるような不思議な感覚。音源までの距離間も方向性も掴めない。肉体的制約を超越したらこんな感じなのかな。夏の空が見える円の下には、光の円が浮かび上がってて、その円のギリギリ外で寝っ転がって天を仰いだ。そして、ぼーっとしてた。

子どもの声。
パンフレットが風になびく音。
蝉の声。
水色の空を高く高く飛んで行く飛行機が風を切る音。
誰かのペタペタする足音。
カラスの鳴き声。

木勢がすごい夏の木の葉っぱの濃い緑。
空の青。
雲の白。

心臓の鼓動。
いま自分は息を吸ってるみたい。息を吐いてるみたい。

そこにはなにも無かった。でも、その中に全てがあった。
一瞬の中に、永遠があった。
この宇宙の命って、万物がそんな気がした。
全てのことに意味なんてない。そして全ては、とてつもなく美しいんだ。

こめかみに流れてく涙が温かい。
神様がつくった光の輪郭をなぞった、そんな気がした。
2時間もそこに寝てたけど、一瞬だったような気もした。

西沢立衛さんっていう建築家と一緒にこの建物を作ったアーティストの内藤礼さんの、こんな言葉を売店で見つけた。

Is it a blessing in its own sake to exist on earth?

'Yeah, I came to realise how beautiful that blessing is' って感じ。

相変わらず世界中を飛んでる建築家 (ちなみにいまはアメリカでBurningmanらしい) に、美術館の感想と感謝を伝えた。そいつはあの建物を 「ホワイトホール」だと思ったらしい。なるほど、物体を吐き出し続ける異次元な天体ってことか。そしてお誕生日をお祝いしてくれた。最高のプレゼントをどうもありがとう。

豊島美術館で地球人33周年記念日を過ごす、最高の1日。


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