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企業変革の出発点 ~「強み」の見つけ方~


 BACソリューションズの眞田(さなだ)です。
 今回はXでも何度か触れてきた、会社の「強み」の探し方と活かし方に
ついて考察を深めていきます。
 法人を念頭にしていますが、基本的な考え方は個人でも共通です。
やや長いですが、最後まで目を通していただけると嬉しいです。


1.目立ってなんぼの時代

 ご存じの通り、日本は人口が減り、放っておくと市場はどんどん縮小する時代に入っています。
 材料費・人件費も上昇傾向にあり、利益も出にくくなっています。
 こうした局面で事業を継続していくためには、他社と差別化して、より
付加価値をつけた商品・サービスを提供しなければなりません。
 他社と差別化し、付加価値を付けるために必要なのが「強み」です。

 新規事業の検討。企業再生。中期経営計画の作成等、経営上様々な場面で自社の「強み」を検討する場面は多く存在します。
 ですが、自社の「強み」を正確に把握できていないケースも多い事が実態です。多いのは「強み」ではなく「(自分たちの考える)特徴」で終わっているケースです。「強み」と「特徴」の違いから見ていきましょう。

2.「強み」と「特徴」の違い

 教科書的に言えば「特徴」は他社との違いになります。
 それに対して「強み」は他社と比べて優れていて、かつ利益の源泉になるものを指します。
 図で書くとこんなイメージです。


特徴と強み

 強みは「利益の源泉」になっている必要があります。
 これが難しいところです。なぜなら多くの会社は、自分達は何でどのように利益を生み出しているかが分かっていないケースが多いからです。
 これはいたしかたがない事で、「強み」は多くの場合、自社にとって他社よりも楽に、しかも当たり前のようにできているものだからです。

 中島敦さんの小説「名人伝」に弓の達人の話があります。ある弓の達人は、弓の技術が向上するにつれて「弓」の事を忘れていったという話です。
 企業にとっての「強み」はこの話と同じで、無意識レベルで「息を吸うようにしている事」になのです。
 他の会社が意識的に「がんばろう」と思ってやっている事を無意識で
簡単にできてしまう。だから、他の会社より生産性が高く良いものを生み出す事につながっています。

 なのでインタビューやワークショップで経営陣や従業員に「強みはなんだと思いますか」と聞いてもでてこないのは当たり前です。
 本人達にとっては当たり前過ぎて、特別な事だと感じていないのです。

3.「強み」の見つけ方

 なかなか気づけない「強み」をどう見つけたらよいか。
 今回は4つの切り口をご紹介します。

人に聞く

 一番手っ取り早いのは社外の人に聞く事です。税理士・銀行員・コンサルタントのような人達は、他の会社の事も知っています。第三者的視点で自分達がどう見えるのか聞いて見ると良いでしょう。
 おすすめしているのは、取引先に聞いて見る事です。なぜ他の会社ではなく自分の会社と取引しているのか。その理由が「強み」そのものだからです。直接聞くのが難しい場合は、上に挙げたような第三者に聞いてもらうのも手です。

継続している事・楽しめている事

 経営者自身や、従業員の方が継続して続けられている事は難でしょうか。
勉強やダイエットと一緒で、何かをする事は強い意志とエネルギーが必要です。長い間継続できている事があれば、それは強みである可能性が高いです。その事をやっている事が「ワクワクする」「楽しい」という感情を得られているような内容だと最高です。
 この辺りは以前「ワクワクマトリックス」の記事でも触れさせていただきました。

数字で見る

 会社の場合は、商品別や工程別の採算を見ていただくと、定量的に強みを
把握する事ができます。シンプルに儲かっている仕事=強みだからです。
 特に中小企業の場合は採算の把握ができていないため、儲かっている
商品・儲かっているサービスができていないケースが多く存在しています。
 自社の業務を数字で把握いただく事をお勧めしています。

業務を細分化してみる

 それでも見つからないという場合は、業務を一度細分化していただく
やり方もあります。
 ●●という製品を製造する工程全体ではなく、工程を分解しどこが違いなのか、利益を生み出しているかを考えていただく事で、「強み」がより分かりやすくなります。

4.強みのメリット

 強みを活かした経営のメリットは大きく3つあります。

①利益が出やすい

 他の会社より優れていて、利益につながるの内容が「強み」です。当然強みを活かしていくと、他社との差別化が図られ売上高も伸びます。また、他社よりも労力をかけずに製品・サービスも提供できるから効率もあがり、また、付加価値をつけて提供する事も可能になります。

②業種・業界を超える事ができる

 強みが明確になると、その強みは実は他の業種・業態でも活かせる可能性が見えてきます。思いもよらなかったコラボレーションが実現したり、新製品・サービス開発の糸口が見つかります。
 日本国内の既存市場・業界は放っておくとどんどん縮小していきます。企業活動を継続するためには、業種・業界の壁を壊す事が必要です。

③従業員満足度があがる

 会社の利益が増えると、従業員の給与にも反映されていきます。また、顧客から「ありがとう」と言われることも増えていきます。
 従業員が無理せずできる事、楽しい事を業務としてできると、本人たちモチベーションも上がっていきます。

5.強みを活かした事例

 自分たちの強みに気づき、強みを中心とする事で成功している会社は
実際に多く存在しています。
 例えば建設業では、

 【以前】高価格帯の建物をオーダーメイドで作る会社
 【現在】地元の素材を使って地元らしく居心地の良い空間を提案する会社

 製造業では
  
 【以前】丈夫な鋏を作れる会社
 【現在】日本刀の技術を生かし、耐久性の高い金属に鋭い刃をつける会社

 とそれぞれ自社の強みを再定義した事で、事業の戦い方が変わり同業他社が苦しむ中、新規開拓・利益率改善・給与上昇に成功をしています。

6.終わりに

 ご覧いただいた通り、既存市場が縮小する中で、売上高を増やし、利益率を高めていくためには、自社の「真の強み」に着目していただく事が重要です。
 また、IT技術の発展で世界中がつながり、今後AIの活用が進んでくる事になると、「一流の仕事」でなければ対価をいただけない時代になると考えています。
 「一流の仕事」をするためには、トライアンドアラーと研鑽を長時間続けていく事が必要です。その過程を楽しめなかったら到達できないものだと
考えています。
 野球選手の大谷翔平選手や、孔子の「これを楽しむものに如かず」という言葉はこの事を指しているのだと思います。
 「真の強み」は何かを問いかけていただく事が成功の第一歩です。

 最後までご覧いただいた皆様の成功をお祈りしています。


 本記事のような中小企業の成長・利益改善のポイントを
Xでも「経営ドクターT」の名前で日々ポストしています。
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