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ジャズの進化と衰退が示した”当たり前”を否定することの大切さ

1969年 マイルス・デイヴィスは『In a Silent Way』『Bitches Brew』を制作して アコースティック路線からエレクトロニック路線へ舵を切り 他ジャンルの音楽とのクロスオーバーした新しい挑戦を始めました

マイルスは 「ロックに魂を売った」「コマーシャリズムに走った」

と 変革の動きを認めない 往年のジャズ・ファンがいる一方 ロック好きである若者が新しいファンとなっていきました

この事例は 新しい挑戦を始めると 必ず抵抗勢力が現れる 日本型経営企業・組織の変革において 参考になる心理と思われます

ジャズは既存概念の反動で進化してきた


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①【ビバップ】は【スウィング】への反動

②【クール・ジャズ】【ビバップ】への反動 

③【ウエストコースト・ジャズ】は【クール・ジャズ】を発展形

④【ハード・バップ】は【ウエストコースト・ジャズ】への反動

⑤【モード・ジャズ】は【ハード・バップ】への反動


1940年代後半から1960年代前半までの流れは

OSを変更するのではなく 新しいアプリを追加してきた変革

という感じだったのでしょう


多くのジャズファンは 新しい試みが出てくるたびに 

「こんなのはジャズじゃない」「これはジャズに対する裏切りだ」

と賛否両論を巻き起こしますが【モダン・ジャズ】は ビートルズが現れるまでは ポピュラー音楽の「主役」であり続けました

これは ジャズの”当たり前”を ジャズメンが常に疑ってきたからです


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主役の座を奪われたジャズ


1960年代になって 短期間で【モダン・ジャズ】が「主役」の座を奪われた理由は 次の3つと考えられます

① ロック旋風~急速はファン離れ
② 閉塞感を打ち破ろうとしたジャズメンの動き
③ 『黒人の権利意識の向上』『公民権運動』等の社会環境変化


 ロック旋風~急速はファン離れ

ラジオやTVといったメディアの影響力も大きくて ロック旋風 瞬く間に世界中を駆け巡り 若いジャズ・ファンも ロックへ移行しました


② 閉塞感を打ち破ろうとしたジャズメンの動き


✅【フリー・ジャズ】は大衆的でないマニアックなもの

【フリー・ジャズ】は【モダン・ジャズ】全体への反動によって起こったのですが 表現方法が 難解で 大衆路線から外れいきます 


✅ マイルスの影響力は絶大なもの

ジャズの帝王であるマイルスの影響力は絶大で ジャズメンの多くが追随します 

アコースティック楽器が”当たり前”となっていた【モダン・ジャズ】に 電子楽器を導入しただけでなく リズムも変更(8ビート・16ビートなど)そして”一発録り”が多かった録音が 断片的なアイデアを録音した編集中心への変更


✅ ジャズ・アルバムは売れない 

マイルス曰く

クリエイティビティも大切だ。しかし オレには金も必要だった。服や車や女に金がかかるのは当たり前じゃないか。そこから次のアイデアも出てくるんだから。そのためにはレコードが売れて、コンサートも一杯になって とにかく売れなきゃ話にならないだろう

「コマーシャリズムに走った」と往年のジャズ・ファンに罵られたとしても ジャズメンにとっても 売れた方が良いに決まっています


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③ 『黒人の権利意識の向上』『公民権運動』等の社会環境変化


マルコム・Xキング牧師が主導した『黒人の権利意識の向上』『公民権運動』は ジャズメンにも大きく影響を及ぼしたのは間違いありません

当時【フリージャズ】に傾倒していった ジョン・コルトレーンは 黒人指導者と同じくらいの影響力を黒人社会にもっていたと言われています

コルトレーンの他界(1967年7月17日)が どれだけのインパクトを与えたのかは分かりかねますが 

当時の『黒人の権利意識の向上』のアイコンは アレサ・フランクリンなどのR&Bシンガーのに変わっていたようです

”メッセージ”を歌詞にのせて 魂の叫びを歌声で伝える

これも ジャズ離れの大きな要因のひとつと考えます



ジャズメンが ジャズの”当たり前”を疑ってきた動きは 以前と変わっていないのですが 

1960年代までの OS は終了 1970年代版の 新しいOS が登場

1960年代までの旧OS対応の アプリ では不具合だらけ 

ジャズという範疇で考えること自体が古臭いOS 

になるほど世の中が急速に変化していったでしょう



なぜ変革には必ず抵抗勢力が現れるのか?


日本型経営産業界における 良い意味でも悪い意味でも【人材の流動性の低さ】になっている『終身雇用』『新卒一括採用』そして『労働関係の法律』

この旧OSが作り出していった

『職場の年齢構成』に関連する状況の改善が簡単ではない 

ということが イノベーションの阻害要因になっています


比較的年齢が高い往年のアコースティック・ジャズ・ファンの心理を考えると分かりやすいのですが

✅ ジャズは”こうあるべき”

ジャズの演奏特有のアドリブ・ソロを聴くことが ジャズの楽しみ

✅ 電子楽器アレルギー

ジャズは アコースティック楽器がベースになるのであって 聴く以前から電子楽器を使用した音楽を そもそもジャズとして認めていない

✅ 「刷り込み」現象

『ジャズ名盤』『ジャズの偉人』と 頭に刷り込まれていて固定化されいるので この考えを容易に変えることができない

✅ 新しい音楽を聴いていないし探索していない

新しい音楽に聴くべきものが無いということにしておけば「私はジャズに詳しい!」『ジャズの玄人』としてのアイデンティ?プライド?が保たれる 

✅「最近の若者はジャズが分かっていない」と卑下する発言

「セロニアス・モンクが分からないようではダメだ」といった根拠もない発言をして 人の意見をシャットアウトする


この心理こそが 企業変革を阻む 俗に言う 抵抗勢力 そのもの です


サラリーマン社長や役員は『終身雇用』『新卒一括採用』での特典を最大限に活用してきた人々なので この”抵抗勢力”の一派である企業は多いと思われます



この抵抗勢力の意識改革は可能か?


文章にすると

『痛みを伴うことも厭わない本気の組織改革のトップダウンによる断行』

と簡単に書き表せるのですが 現実的な具体策は簡単ではありません


それぞれの世代には それぞれの”当たり前” それぞれの”正義”があります

これは どちらが良い 悪いというものではないので 

お互いの意見をぶつけあっても分かりあえません


【従業員の意識改革】なんて そもそも無理な話と思います


「そもそも 本来の目的は何だろう?」
「この状況の中で 最も大切なことは何だろう?」

という【共通した目的】を考える能力を養うしかないと考えます


✅ 自分の知らないことを否定から入るのを止める

✅ 「なぜ あの人はそう考えるのか」を考える

✅ 「なぜ 自分はこれが正しいと考えているのか」を考える


考え方・価値感の違いを双方ともに認めた上で

「未来をよりよくするためにはどうすればいいか?」を考えていく 

といった漠然としたことしか 私は思いつきません



OSが大幅に変更になったら旧OS対応のアプリは使えません


まず 自社・自分の 当たり前 を疑い 逆説から考える

イノベーションのヒントは ”当たり前”をぶっ壊す 

ここが原点でしょう


そして 

そこに立ち向かう 勇気 覚悟 決断

これが一番大切なのではないでしょうか?



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